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K-1のせいで実現されなかった天心武尊、K-1のおかげ実現したTHE MATCHの大成功、やっぱK-1すごいなという話

那須川天心が対戦要求した2015年、二人が急接近した2018年、更に実現に近づいた2020年、対戦が実現しなかった理由は明確にK-1側にある

これは誤解だと武尊がいくら言ったところでそれは真実ではない

あらゆるインタビューで、RISEは常にオープンないつでもその試合を実現するという姿勢を貫いており、K-1は常にその試合を実現させないという姿勢を貫いていた

これは紛れもない事実である

「早くK-1が折れて、天心VS武尊を実現しろよ」
そんなことを私も思っていたし、多くのファンも思っただろう

その中の過激派が「K-1が逃げている」「武尊が逃げている」と騒いだおかげで武尊やK-1選手が傷ついた負の影響もあった

そんな中でもK-1はそのポリシーを貫いていたのである


しかし、実現した今になって思う

『K-1の思想が正しかったのではないか』
『THE MATCHの盛り上がりはK-1のおかげではないか?』

※ 思想なので正しい誤っているというのはナンセンスであるが、私の求めていたものに近いという意味で正しいという表現を使っている

そんな話を書いていく

K-1の鎖国体制

そもそもK-1が天心武尊を実現させなかったことには理由があり、ポリシーがある
決して武尊が負けるのが怖かったとかそういう軽い話ではない

K-1は2014年に新生K-1に生まれ変わったときに100年続く競技を目指すというポリシーを掲げている

旧K-1は初期にはキックボクシングの団体を超えた最強決定戦というコンセプトであったが、後期には ボブサップ VS 曙 に代表されるモンスター路線に走っていった

旧体制では、モンスター路線に向かったことで、視聴者層が広がったという光の面と、次々に刺激を求められ、純粋な試合に対する注目は落ちていった暗黒面があった
他の要素もあっただろうが、結果、旧K-1は崩壊の道を歩んだ

新生K-1ではこの旧体制を否定し、K-1という競技のあり方を重視している

新体制では、関連ジムの名前を「K-1ジム」という呼称に統一し、色々なジムのキック選手が出場しているのではなく、K-1ジムに所属したK-1選手が出場している大会というメッセージを明確に出している


つまり、K-1にはK-1選手以外はいらない。立ち技の最強を決める舞台ではなく、K-1の最強を決める舞台なのである。

このコンセプトからすると、「天心武尊を実現させない」「やるなら天心選手がK-1に来てね」というのは競技の方向性に沿った当然の主張なのである

「武尊選手が負けたら商品価値が落ちるからビビってる」とかそういうミクロな話では間違いなくない

『他団体も含めて最強を求めたほうが良いに決まってるじゃないか』
『K-1内で最強を決めるなんてダサい』

こういう意見もあるだろう
実際に私も同じようなことを思っていた
なんなら、今も思っている部分はある

スポーツをする上で、とりわけ1対1で心技体をぶつけ合い、はっきりと白黒が付く格闘技において、『一番は誰か?』 は重要な問題だ

観戦者の興味も選手自身の目指す先も最強という幼稚かつ究極の課題である
そこからして、「K-1内だけで競技をやります」というのはナンセンスにも思われる

だが、THE MATCHを通して見ると、その発想は正しかったのでは?と思わされた

THE MATCHにおける天心 VS 武尊

そんなポリシーをもっているK-1だが、THE MATCHでは天心 VS 武尊は認め、実現させた

逆に言えば、それだけ特別な覚悟をもって実現に至ったと言える

ここまで特別な状況にまで来たから天心 VS 武尊はこれまでにない特別な盛り上がりを生んだのだ

2015年の大晦日に実現していたら、ココまでにはならなかっただろう
新進気鋭の天才新人とK-1の顔が叩きあって結果が出ただけだ

2018年に実現しても、相当に盛り上がったが、今回ほどにはならなかっただろう
両選手の知名度は十分であったが、まだ溜めが足りなかった

今回盛り上がりを見せたのは、
2018年に実現しそうに見えたのにスカされ、
天心はボクシング転向を発表し、
武尊は天心戦への執念を表に出し、
天心はボクシングへに偏重しKOが減り、
武尊はレオナ戦で神がかったKOを見せ、
2021年の大晦日にやるかもというのをスカされ、
2022年6月を迎えたから
である

これだけ揃ったから神がかった興行になったのである

ここまで溜めを作れたのはどうしてか?


K-1が特別な状況まで試合を実現させなかったから』


これはすぐに実現をしたがったRIZINにもRISEにも不可能なことである

もちろんこれは結果論である
仮に2015年に両者の対決が実現したら、両者が力と知名度をつけた2018年に再戦、勝敗によっては2022年に3度目の対決といった世界線もあったかも知れない

ただ、K-1のポリシーは「ここまで熱が出るタイミングにならば特別なことをやるんだ」というのを狙って運営していることは認めざるを得ない

RIZINやRISEは良くも悪くも狙わない。その時の最高のカードを出せば、ドラマは付いてくるという思想である


THE MATCHの会見でのコメントでもそれが伺える

RISEの伊藤代表がまた対抗戦を定期的にやっていきたいという発言をするのに対して、

「1年に一度とか2年に一度とか。3年に一度でもいいが、その1~2年の集大成という形でどんどん盛り上げていけたら日本の格闘技の再燃のスタートになるのではないかと思う」

RISE 伊藤代表

K-1中村Pはカードありきでやるかやらないかを決めるべきと発言している

期間とか期限を考えてやるイベントではないのではないのかなと思っている。今回は武尊選手と那須川選手のカードがあったから

K-1中村P

ビッグイベントありきでカードを組んで、最初にやった大会より2回目3回目がしぼんでいくのは過去に格闘技ブームが去っていった反省点だと思っているので、熱が生まれる選手やカードができた時にやるのが一番いいと思っている。なのでもしかしたら2か月後かもしれないし、1年後かもしれないし、10年後かもしれない。それは分からない。

K-1中村P


この発言は個人的には中村Pの言う通りだと感じた

仮にTHE MATCH2023をやると決めた場合には、どういうカードをメインに置いても霞むだろう
霞むならば飛び道具に頼るしかない
例えば朝倉兄弟にキックボクシングをやらせるとか、K-1のトップ選手にMMAをやらせるといったように

これは正に旧K-1の失敗を地で行くことになりかねない

K-1の鎖国にもどかしく思っていた私だが、THE MATCHの盛り上がりはK-1のおかげと思い直したのは以上が理由だ

天心 VS 武尊 以外のTHE MATCH

アンダーカードからわかるK-1の育成の仕組みの優秀さ

THE MATCHのアンダーカードに関しても思うところはあった
K-1は選手・スターをちゃんと育成している

K-1とRISEの対抗戦はRISEの勝ち越しであった
個人的な予想や海外のカジノサイトのオッズはK-1有利だったにも関わらず、だ
(微妙な判定もあり、簡単にRISEの方が強かったと言えるわけではないが、話が発散するのでここではそれぞれの試合については語らない)

単純な解釈をすると、K-1選手よりRISE選手のほうが強い(同等と読み替えても良い)にも関わらず、K-1選手の方が「強い」というイメージはアピールできているということである

これは興行にとって、選手にとっては非常に重要な問題である

K-1に出て、強かったらちゃんと注目されるし、認知してもらえる
これが保証されていることは、選手が集まることに繋がる

また、強いと認知されている選手が多く所属しているということは、興行のメインを張れる選手が沢山いる
つまり、興行が安定して面白いことに繋がり、選手は収入が安定することにつながる

チャンピオンシップを重視するK-1

では、そのように強いイメージはどうやって作っているのだろうか

これはチャンピオンシップの重視にある

新生K-1の中心はワンデートーナメントである
1つの興行の中でワンデートーナメントを開催し、劇的に優勝した選手をチャンピオンとして称える
中には実力差のある選手でトーナメントに含めて、KOを演出している部分もあるだろう

優勝者は1回の興行で3試合分の煽り・入場・試合を行い、メインイベントでの優勝マイクを行うことで十分に認知を高める

トーナメント以外の興行もメインはタイトル防衛戦を中心に行っている
良くも悪くも噛ませ犬を戦わせてチャンピオンの強さを強調するような試合も組む

チャンピオンシップやこの選手がチャンピオンであることを非常に重視しているのだ

K-1に好まれないアウトボクサーの椿原ですら、チャンピオンの時代にはチャンピオンとしてしっかり扱われていた


対比するならばRISEで言えば、以下のように特にチャンピオンは重視されていない

直樹はチャンピオンだが、原口より格下であるし実際に直接対決でも負けている
興行の扱いとしても、直接対決で倒したはずの白鳥よりも知名度で劣っていることから扱いが悪い部分もある

ベイノアはウェルター級チャンピオンになった後、何戦もしているが、防衛戦はしたのか?いつの間にか返上してミドル級にランクインしていた

鈴木はトーナメントで志郎にダウンを取られて負けているが、防衛戦ではないのでベルトを失っていない
ただ、チャンピオンと言われても既に最強のイメージはない
一方で、志郎もタイトルマッチをやりたいというアピールは特にしていない
興行も選手ですらタイトルを重視していないように見える

風音はトーナメントに優勝したが、同階級のチャンピオンである大崎とタイトルマッチを望まないのか

トーナメント優勝のベルトとタイトルマッチのベルトがあるのが価値の不明瞭さを生む一つの要因である

良くも悪くもRISEは実力主義であり、強いなら強いと示すのは選手の仕事なのである

視聴者側の言い方をすると、新規で見る人には、チャンピオンだけどその人が一番強いとは言えない複雑さもあるとも言える

K-1のわかりやすさ、「チャンピオンは強い・すごい」をイベントとしてアピールしてくれることはファンへのわかりやすさに繋がり、今回のアンダーカードを見たときにも「強い選手である」印象をもっていることにつながっている

※ どちらかと言うとRISE好きの私でさえ、THE MATCHのカードはK-1が勝ち越すだろうなと予想していた

K-1最高!!か?

やはりK-1最高!!…といいたいわけではない

K-1とRISEやRIZINとは質が違うだけで、どれが良いという話はない
すべての興行がうまく行っているのであれば、需要があるという証左であり、すべてのやり方が正しいのである

RIZINやRISEの空気を読まない厳しいマッチメイクは大好きな反面、スターの自然発生に頼るのでスター不在で困る時期ができたりチャンピオンの価値が薄くなるのは気になっている

K-1の再現可能なスター選手構築は素晴らしいと思う反面、マッチメイクに予定調和感を感じて興味が薄れる瞬間もある

各団体が各団体の方針で進めれば、視聴者側としてはいろいろな楽しみ方が出来るので歓迎である
もし、相互に刺激しあって、良いなと思う部分があれば取り込んでお互いがより良くなっていければ何よりである

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