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CARNATION「サンセットモンスターズ」@日比谷野外音楽堂を振り返る

梅雨明け後、即真夏。

というべき気候のなか、多彩なゲスト陣を招き入れながら繰り広げられた180分超の祝祭空間ーーカーネーションの結成35周年を記念した日比谷野外音楽堂でのスペシャルライブイベント「サンセットモンスターズ」は、とても素晴らしいものだった。脱退した初期~中期メンバーの参加などによるノスタルジックなムードも多少は感じられたものの、それすらも飲み込んでいくカーネーションのサウンドは現在進行系で、強靭で、優しくて、鋭い。35年もの間、バンドを継続する中で鍛え上げられた音楽体力というのはやはり並外れているのを実感した。

カーネーションを認識したのは、真夏の雨のように蒸発していく18~19歳の頃。KANが関西でやっていた深夜の音楽番組「free beat」のゲストで直枝政広が出演していて、そのときに弾き語りで「カルアミルク」を歌っていたんではないかな(うろ覚え)。それと前後して岡村ちゃんトリビュートの企画が動き出していて、「だいすき」を表題曲としたトリビュートシングル盤には直枝&朝日美穂&上田禎による「カルアミルク」も収録されていた(このバージョン、アルバムに収録されていないのが残念なほど良いカバー)。その後、私は20周年記念シングル「ANGEL」にガツーンとやられてしまうのだけれど、パンフレットに寄せられたミュージシャン、文化人、作家、漫画家など様々な人たちのコメントを見ても、「日本のロックを追いかけていくと、どこかのタイミングでカーネーションの曲が(わりと強めに)ささってしまう説」はけっこう有力なのではと。ちなみにパンフでは、漫画家・イラストレーターの江口寿史氏のエッセイが素晴らしい内容でじんわりきました。そして大橋(裕之)さんの漫画はザ・思い出話なのに相変わらず最高。

ライブは「アダムスキー」、「Edo river」、「ジェイソン」、「トロッコ」、「It's a beautiful day」、「REAL MAN」などなどオールタイムベストなセットリスト。圧巻は、森高千里→岡村靖幸→山本精一という、本編終盤のゲスト3連発。有無を言わせぬ永遠のアイドル性ですべてのファンをノックアウトした森高に続き、岡村ちゃんはトリビュートでカバーしたファンクチューン「学校で何教わってんの」のみならず、オベーションと共に「あの娘ぼくがロングシュート決めたらどんな顔するだろう」まで! 尖ったギターサウンドがビシビシくるナイスな演奏。直枝さんはもちろんのこと、ブラウンノーズと岡村ちゃんの競演は、トリビュートを聴き込んだ者としても勝手に感慨深くなる。そして本編ラストには山本精一を迎え、ミドルテンポで轟音ノイズギターをかき鳴らしていく「ヘブン」、最新曲「サンセットモンスターズ」という締め。ああ、なんと美しいことか。岡村ちゃん→山本精一という、個人的にはこれ以上ない異色のスター数珠つなぎに大変興奮しました。

アンコール、本編に登場しなかったスカートまでいたのに登場しない岡村ちゃん、そしてギタリストなのにウチワ片手に出てくる山本精一と、ここでも世界を崩さないあたりに心躍りました。大人数の中で見せる独特のムーヴ、これはスターたるゆえんかと。

しかしあれだけゲストを迎えながらも肝のすわったパフォーマンスをし続けた直枝&大田譲コンビは凄まじい。一切本質がぶれない、堂々たるステージング。慌てず騒がず、平熱のオウラ。そんなふたりが生み出すサウンドだから、じわじわと身体に染み込んで、その魅力に吸い寄せられてしまうのだろう。そして「夜の煙突」、「Edo river」はいつどの時代にやっても響く良い名曲だということを改めて認識させられた。

私も生まれて35年目、今年の夏は、カーネーションからはじまりました。

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