2013年1月14日「魔法使い」


 僕は妹が欲しかったので魔法使いに会いにいった。

魔法使いは丘の上で店を営んでいた。


 魔法で何かしてもらいたければ何か買っていきな、

と魔法使いはいった。しかし店の棚に並べられていたのは

ピクルスとかバターとか少年の僕にはあまり

欲しいとは思えないものばかりだった。僕は

金だけ払うといったけれどそれは許されないと

魔法使いはいった。僕は仕方なく

棚の隅にあったけん玉を買った。

すると魔法使いはまずはそれで30分遊べと

言ってきた。僕は素直にそれに従う。

けん玉に夢中になってきたころに

30分がたち、奥の部屋へと案内された。

僕は妹が欲しいとの願いを打ち明けた。

あっさりと魔法使いは承諾し、魔法の杖を

一振りした。そして「終わり。またよろしく」と

だけ言って僕を出口へ案内した。用の済んだ客は

もう客でもなんでもないとでもいうかのように。

 家に帰ると父と母が喧嘩をしていた。

僕は部屋にすぐに入り、布団にこもって

喧嘩の声が聞こえないようにした。

それでも聞こえてくる「別に好きな人が…」

「もう愛していない…」の声。


 僕の願いは本当に叶うのかもしれない。

僕は気をまぎらわすためにけん玉

を振った。一発で赤い玉の穴に

けん先が突き刺さった。

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