H.イワシタ

H.イワシタ とんかつを食べたり、マンガの研究をしたり、ラップを聴いたり、大学で教えた…

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H.イワシタ とんかつを食べたり、マンガの研究をしたり、ラップを聴いたり、大学で教えたりしています。

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  • マンガのなかの少女マンガ/家

    「少女マンガ」あるいは「少女マンガ家」をタイトルに含むマンガについてレビューしていきます。

最近の記事

マンガの中の少女マンガ/家:木内千鶴子「どこかで春が…」1969年

 木内千鶴子は1957年にデビューし、以降は若木書房などで少女向けの貸本マンガで活躍する。その後、1960年代中頃(昭和40年代)からは集英社の専属として同社の雑誌のために作品を多く執筆している。  『週刊マーガレット』1969年16号に掲載された「どこかで春が…」は作者お得意の友情ものだ。そして、扉の煽り文句に「まんが家志願の少女とおかあさんとの、深い愛情と、苦しいかっとうとを、あざやかにえがきだした感動まんがです!!」(図1)とあるように親子の衝突と和解の物語でもある。

    • マンガの中の少女マンガ/家: 柚木こむぎ「ココロの描き方」『マーガレット』2024年6号

       メモ的に。 『マーガレット』2024年6号に読切として掲載された柚木こむぎ「ココロの描き方」。  主人公は高校生の現役マンガ家。両親を失った過去のトラウマを昇華する形でホラーマンガを描いていた主人公が連載を完結させ、次回作として少女マンガの執筆を編集者にすすめられる。しかし、これまではホラーマンガを描いてきた主人公は恋愛経験もなく「恋もしたことないし/キラキラした明るい話なんて描けるわけない」と及び腰である。主人公は両親を事故で無くした経験から、喪失の悲しみを回避するために

      • 私の2023年度

         あと数日で今年度も終わり、ということでこの1年を振り返ってみると、割といろいろ頑張ったような気がしますし、一方でぜんぜんだなという気もしていますし、どうなんでしょう?  まとまった文章としては、『ユリイカ』2023年5月号(青土社)のフィメールラップ特集で「Tha 女子会 Is Hot——フィメールをレップするラップについて」、『日本歴史』2024年1月号(吉川弘文館)の「遊びの日本史」特集に「少女マンガ様式と遊びとしての描くこと―「スタイル画」と読者投稿―」を書いたりし

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        • 【お仕事告知】共同通信ブックマイスター(マンガ時評):「僕が死ぬだけの百物語」「仙人の桃」「コワい話は≠くだけで。」

           共同通信のマンガ時評。もう配信が始まっている最新のものでは、メインで的野アンジ『僕が死ぬだけの百物語』(小学館)、サブで南伸坊『仙人の桃』(中央公論社)を取り上げています。前者を紹介する中で景山五月・梨『コワい話は≠くだけで。』(KADOKAWA)にも触れています。  怪談もの、ホラーものが好きな人は多いと思うけど、そういう人の視界に『仙人の桃』も入ってくれるといいよな…と思ってチョイスしたのでした。

        マンガの中の少女マンガ/家:木内千鶴子「どこかで春が…」1969年

        • マンガの中の少女マンガ/家: 柚木こむぎ「ココロの描き方」『マーガレット』2024年6号

        • 私の2023年度

        • 【お仕事告知】共同通信ブックマイスター(マンガ時評):「僕が死ぬだけの百物語」「仙人の桃」「コワい話は≠くだけで。」

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        • マンガのなかの少女マンガ/家
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          【お仕事告知】共同通信ブックマイスター(マンガ時評):「Gペンマジック のぞみとかなえ」「環と周」

           もう配信がはじまっているので、ぼちぼち各紙に掲載されているのではないかと思いますが、共同通信のマンガ時評では崇山祟『Gペンマジック おぞみとかなえ』、よしながふみ『環と周』を紹介しています。ふたりの名前タイトルつながり、ということなのか? 「のぞみとかなえ」についてはnoteでも書いています。

          【お仕事告知】共同通信ブックマイスター(マンガ時評):「Gペンマジック のぞみとかなえ」「環と周」

          マンガの中の少女マンガ/家(18):祟山崇『Gペンマジックのぞみとかなえ』(秋田書店、2023)

           『Gペンマジック のぞみとかなえ』は、今年、2023年5月に急逝した祟山崇が秋田書店の『ミステリーボニータ』で2020年から2022年にかけて連載していた作品である。主人公の明日奈かなえは文芸部に所属する中学2年生、そんな彼女はもう一人の主人公であるとにかくマンガに夢中なマイペース同級生・高井のぞみの影響、そして新任教師の五十嵐ふぶきとの出会いをきっかけに漫画研究部に移籍、漫画家を目指すことになる。  設定だけ説明するとシンプルなのだが、なにしろ奇才・祟山崇のことなのでそう

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          【お仕事告知・メディア出演】小峠英二のなんて美だ!(11/14,21)

           本日(11月14日)の24時より放送の東京MX『小峠英二のなんて美だ!』の少女漫画特集回に出演いたします。  本日が前編、次週が後編です。  よくチェックしてくれよな。 https://nantebi-da.jp/

          【お仕事告知・メディア出演】小峠英二のなんて美だ!(11/14,21)

          【お仕事告知】共同通信ブックマイスター(マンガ時評):「龍子RYUKO」「天国 ゴトウユキコ短編集」

           まあまあ長いこと新刊時評を共同通信でやっているんだけど、まともに告知したことがなかったのでした。備忘録もかねて、紹介したマンガを挙げておきます。  10月20日配信開始で、おいおい各紙に掲載されると思うのですが今回は  ・エルド吉水『龍子 RYUKO』  ・ゴトウユキコ『天国 ゴトウユキコ短編集』  の二作を紹介しています。

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          マンガの中の少女マンガ/家(17):近作の読み切り少女マンガ家ものメモ

           本格的に書こうとするとなかなか更新できないのでクリップする感覚で最近見かけた「少女マンガ家」キャラが出てきた読み切りをあげておく。 *森本くるり「めざせ!まんが家わんたろちゃん」(『りぼん』2023年8月号)  主人公わんたろはマンガ家志望の…犬!!という8ページのショートギャグ。  わんたろの投稿先は『りぼん』、そしてその憧れのマンガ家・胡桃坂(その正体はわんたろの飼い主の通う学校のパッと見ガラ悪そうな先輩男子)も『りぼん』作家。「少女マンガ家」ということばは出てこない

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          マンガの中の少女マンガ/家(16):篠原健太『SKET DANCE』の早乙女浪漫登場回まとめ

           きちんと書こうと溜めていてもいつまで経っても更新できないので、今後のためのメモ的に。  近年の「マンガの中の少女マンガ家」キャラとして忘れてはならないのが、篠原健太『SKET DANCE』の早乙女浪漫だろう。  マンガ表現のお約束をネタにするメタなギャグを物語に持ち込む掟破りなキャラクターとして活躍する浪漫だが、「少女マンガ家」表象として見た場合、実に少年マンガらしいといえばそうなのだが、その描き方はかなり表面的で少年マンガ読者の「よくしんないけど少女マンガってこういう感

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          【お仕事告知】"『少女マンガはどこからきたの? 「少女マンガを語る会」全記録』刊行記念 米沢嘉博記念図書館・ヤマダトモコ氏インタビュー"公開

           日本マンガ学会大会@相模女子大学、おつかれさまでした〜〜!!!  いやー実り多いものになったのではないでしょうか。  と、裏方&シンポ司会として自画自賛しておきます。  さて、今回のシンポジウム「再検討・少女マンガ」史」は、ついこの間リリースされた『少女マンガはどこからきたの?:「少女マンガを語る会」全記録』(青土社)の刊行記念というか、1950-60年代の少女マンガをめぐる当事者の語りをまとめた本書をきっかけに、少女マンガとその歴史の研究を盛り上げていこうじゃないの!!

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          【告知】日本マンガ学会第22回大会@相模女子大学

           今週末(7月1日、2日)に私の本務校である相模女子大学で日本マンガ学会の第22回大会が開催されます。  実は、相模女子大学での大会開催は2020年にも計画されていたのですが、その時は感染拡大の最中にあったCOVIDの影響で中止になってしまったのでした。  初日は研究発表(口頭発表16本、オンライン発表4本、ポスター発表1本)が行われ、2日目はシンポジウムとなります。  2日目のシンポジウムのテーマは「再検討「少女マンガ」史」です。  先頃刊行された黎明期の少女マンガ関係

          【告知】日本マンガ学会第22回大会@相模女子大学

          マンガの中の少女マンガ/家(15):大島弓子「その日まで生きたい!」(1969-70)

           今回取り上げるのは『週刊マーガレット』の1969年50号から1970年2・3合併号に連載された大島弓子「その日まで生きたい!」だ。  49号に掲載された予告には次のように描かれている。(図1)  実際、そのような話である。そして、結末を明かしてしまうと、みのるは新人まんが賞に1位で入賞するのですが、すでにその身体は病魔に深く冒されており、知らせを受けたその夜の眠りにつくとそのまま帰らぬ人となってしまうのでした。  なんとかなしいことでしょう……。  と、かつての少女雑誌

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          【お仕事告知】『ユリイカ』2023年5月号「特集・〈フィメールラップ〉の現在」

           『ユリイカ』2023年5月号「特集・〈フィメールラップ〉の現在」に「Tha 女子会 Is Hot フィメールをレップするラップについて」という文章を寄稿しています。  そもそも「フィメールラップ」とカテゴライズしちゃうこと自体どうなのよ?という話をしつつ、「ホット」で「女子会」的なビデオの話や、「ソフト百合」なラップバトルマンガの話など、けっこう趣味あるいは”ヘキ”に走って、わりと好き勝手な感じで書いています。  原稿ではその方がスマートかなと思っていちいち説明していません

          【お仕事告知】『ユリイカ』2023年5月号「特集・〈フィメールラップ〉の現在」

          マンガの中の少女マンガ/家(14) :巴里夫『いま何時?』(1971)

           巴里夫は一九五四年に貸本マンガの版元である日の丸文庫から『母を呼ぶ歌』で本格的なマンガ家としてのデビューを果たし、以降10年ほど貸本マンガ業界で活動したあと、1960年代中頃に雑誌デビューからは『りぼん』を中心とした少女マンガ雑誌などで数多くの作品を発表した。代表的な作品としては「5年ひばり組」がある。「赤いリュックサック」などの戦災を描いたずっしりと思い作品でも知られるが、子どもたちの健やかな姿を描く明朗な作風こそが持ち味だろう。  1971年に『りぼん』で連載された「

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          マンガの中の少女マンガ/家(13):柚木二雨「#男子高校生にアラサー少女漫画家が筋トレ教わってる話」

           本作は各種配信サイトで配信されている他、小学館から「Sho-comiフラワーコミックス」として各巻30ページほどのマイクロ版の電子単行本が全5巻刊行されている。  内容はタイトルそのまんまで、仕事柄か運動不足のアラサー少女マンガ家が、偶然出会った自分の作品の熱心な読者であるイケメンな男子高校生から筋トレを教わるという筋立てである。男子高校生が主人公の作品と出会ったのが「試し読み」だというのが今っぽい。  女性キャラクターをメインに据え、筋トレやダイエットに関する実践的な

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          マンガの中の少女マンガ/家(13):柚木二雨「#男子高校…