「ビルの谷間が好きなの」
「ビルの谷間が好きなの」
そう言いながら彼女は屋上のフェンスを器用に登り、にっこり微笑んだかと思うと、落ちていった。
駆け寄って、おそるおそる見おろしてみたけど、誰もいない。どこにいってしまったのか。
彼女は自分の好きなもののことを人に話すのが好きだった。
サランラップ
地下足袋
チキンラーメンのコマーシャル
金網
オホーツク海
収入印紙
スティーブ・マックイーン
三脚
イルカはざんぶらこ
シーチキン
消防隊員
セメダイン
それぞれに関して、口述筆記を行なえば100冊ほどの本ができるくらい、彼女は話した。叙事詩のようだった。
自分がこれらのものをいかに愛しているかを語るために、一日を費やしていた。
しかし、ビルの谷間については初耳だ。どうして彼女がそれを愛するようになったのか、分からずじまいなのである。
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