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小屋の外では風が吹き荒れ、木々を揺さぶっていた。円儀に抱きかかえられた麗和は、ただ暗闇の様子を、瞬きをすることも忘れて眺めている。円儀も黙りこくって、過ぎゆく時に身を任せるばかりだ。

山野の生物が息をひそめるこの夜にあって、円儀と麗和だけが、風の行く末を見守るかのように暗闇を見上げていた。

「わたしはみこ法師さまのことが好きだわ」

「うむ、かくいう俺も、はじめは頭のおかしな男と思っていたのだが、ばかばかしい嘘を真に受けて、涙を流す様子に、なんとなく同情を覚えたのだ。これから金を巻き上げようとしている相手に対してだ。その顔を眺めていると、この男のために何かをしてやりたいという気持ちが、だんだんと頭をもたげてきた」 

戸惑いを禁じえず、たどたどしく話す円儀の頬に、麗和はゆっくりと指を添わせる。

「これまで誰にも相手にされず、孤独の淵にいたみこ法師さまに、あなたは夢を与えて差し上げたの。まがいものでウソっぱちだけど、とても美しい夢を。きっとあなたは良いことをしたのです」

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