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長野県上伊那郡野自利左部神卦村の民話

【2015年に実施した、長野県上伊那郡野自利左部神卦村の民話の調査より】

これもなが、いい日照りったさ。ががのつくような日じゃった。村っ子さが、皆して笹隠しして遊びよったさ。坂隠しと笹隠しってさ、村っ子さはどっちがで遊びよったさ、あんころは。その日よりは村っ子さは坂隠しでのうて、笹隠しのほうをやりよって遊び寄ったさ。笹っこをようけ千切って、皆あたまん上にのっけてさ。「笹っこ、笹っこ、よけ食いもんばもろてこい、笹っこ、笹っこ、よけ腹ふくれるもんもろてこい」いうて、村っ子はまわりよるのさ。ががのつくような日じゃったが、村っ子は元気によって遊びよっておったげさ。やがて、いつか、村っ子のなかの、ご汰郎いう子さ。六つくらいになるがまだよう言葉を言わんかった子さ。よう言葉を言わんから、「笹っ子、笹っ子、よけ食いもんばもろてっこい」ともようゆわんから、だっち他の村っ子の跡つきって遊びよってたさ。そのご汰郎がおらんようになった。村の若けえ集どもどどで、ががじゃったが、まるまるおっく一日中だって探っとったが、よけ出てこん。もうご汰郎の跡背みたもんはおらんようさった。親っちえら泣いとりよったけど、南無どっちさんどなった。えらあいし。えらあいしってから、うんと時がたちよったらさ。村っ子も嫁をもうらう時分になっとって、またががのつくような日となってじゃった。だれかがご汰郎を見たっちさっと言って、村のぐるりん回って言いよった。あれどさ、たしかにいのうなったご汰郎じゃけっと。年もとらんと子どもっちのようないででおったと。村の集もどどで、ご汰郎のためざけに、握り飯ははにぎって、笹っこに包みよって村の端においたどっど。けっとご汰郎は腹をすかっしざってよるから、握り飯を食べよっと。そでからめてつつべっと。でがめそがよっと。村っざっと三里ほどいったとこに神卦池っつう池辺のさであらなし。そった神卦池に、子っさ様のご汰郎が入りて沈みおったなべごらし。村はそれのあとより子がようけ産まれてごっさむとらいぶどらし。ががのような子がようけ出てさ、腹すかすこともようなくなったらさ、ご汰郎のかげやいうて、毎年ががの日には神卦池に握り飯ははにぎって、笹っこに包みよって池辺においたどっど。それ以来、神卦池はぬめり取りなって、いついつもどどで、鏡のようにさ美しささっさど水となったど。

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