フリクリ オルタナ 第5話-2

【空港】

飛び立っていく旅客機。
滑走路に直接入ってきた車に乗る、神田と木滝首相、真鍋。

首相:神田さんは後から来るのね…?

神田:はい、少し用事を済ませてから

首相:分かりました…

神田:…例の「世界図」の話ですが…

首相:…分かってます

神田:あそこに入れるのは、我らが日本国首相の、木滝真希、あなただけなんです…

首相:…やります…

車は「Pink Peach Pie Air Line」と書かれた小型旅客機の脇に止まる。
木滝首相が車から降り、タラップを上がっていく。
×  ×  ×
それを空港のレストランから眺めていた一般客がボソボソと

一般1:あれ、木滝首相じゃない?

一般2:マジか。あれめっちゃ格安航空じゃね?…

一般1:好感度高えな…

×  ×  ×
車から降りて木滝を見送る神田。
真鍋が神田に話しかける。

真鍋:では、後ほど…

神田:後ほど…

真鍋:何かございましたら、ご連絡ください

神田:…(黙って車に乗り込む)

×  ×  ×
機内に入る首相。
乗客席には、木滝に良く似たおじいさんとおばあさん、その兄妹らしき老人の3人が座っている。

木滝:いざ、安住の地へ。

【学校  昼】

学校の前にリムジンが止まった。(辺田家のもの)
休み時間の教室が騒々しい。
未だに水着姿の相田が、男子達に抱きついている。

相田:こんな時だからフリーハグ!

男子達:ぎゃー!やめろー!

嫌がる男子達。笑う男子達。
眺めている本島とカナ。

本島:佐々木がいないからって動揺し過ぎでしょ…

カナ:…うん…

相田:もし地球がなくなるとしても!悔いのない様に生きましょう!(ハグ)生きましょう!(ハグ)生きていかなければ!(感涙)

相田、矢島にロックオン。

相田:ぐぬう…

矢島:…なによ…

相田:これは別に男性とか女性とかそういった垣根を越えてこそ意味があることですから自然にいたって自然に胸と胸を合わせれば

相田が近づくと、ぶん殴る矢島。

相田:ぎゃおん!

それを見て思わず目を背けるカナ。

カナ:いひー…。 …!?

カナが目を背けた方、カナのカバンを物色している、ほっかむりをした辺田の姿。

カナ:ペッツ…?

辺田:…

ペッツに気づき、妙な空気になる教室。「辺田…?」「逃げたんじゃなかったの…?」「だってあいつの親…」と、ボソボソと生徒たちの声。

辺田:あ、、えっと、、あははは! ちょっと、カナ、(教室の外)…いい?

カナ:…うん…

教室を出て行く、辺田とカナ。

矢島・本島:…

廊下へ出たカナと辺田。

カナ:どうしたの…?

辺田は、今にも泣き出しそうな表情で黙っている。

カナ:…ペッツ?

辺田:…ごめん…

カナ:…?

辺田は唐突にカナを抱きしめた後、ダッシュで教室を出て行く。

カナ:…待って!ペッツ!

追いかけるカナ。
ペッツは渡り廊下、階段とダッシュで逃げる。

カナ:待って!ぺっつ!

辺田:…ごめん!

二人、猛ダッシュ。
廊下で話している須田と中年女性(佐々木の母)の脇を通り過ぎる。

須田:こらー!廊下を走るなー!!

カナ:すみません! …ペッツ!!待って!

ペッツ:…

ペッツは逃げながら泣き出し、下駄箱にたどり着く。
下駄箱の向こう、校門前に止まったリムジンから降りてくる、ペッツの父親らしき男と、SPらしき男二人。

ペッツ:…!!

ペッツは、再び廊下を走り出す。
逃げながら泣くペッツ。
カナは下駄箱にたどり着き、リムジンと男二人を確認し、ペッツを追う。

カナ:ねえ!待ってペッツ!

ペッツ:カナ…ごめん!

カナ:…

ペッツ:ごめん! わたし…ずるいやつだ!

カナ:…

ペッツ:だって、一人で逃げようとしてるんだよ!?

カナ:…

ペッツ:そうでしょ!? ずるいよわたし、絶対!

カナ:…

なやり取りをしながら階段を下り、学校の裏出口を出る二人。

ペッツ:ずるいじゃん!

カナ:…ずるくないよ!

ペッツ:絶対ずるい!超ずるい!最悪だわたし!

カナ:でも、嬉しかったよ!

立ち止まる、ペッツ。

ペッツ:…なに…?

カナ:…

ペッツ:なに? 「嬉しかった」って…

カナ:…嬉しかったよ…ちょっとだけでも、、戻って来てくれて!

ペッツ:…(号泣)ビエエエ!

そこに待ち伏せていたSPが現れ、ペッツを抱き上げる。

ペッツ:…!

カナ:ペッツ!

車に乗せられるペッツ。

ペッツ:放して!放して!

カナ:…

走り出す車。

カナ:ペッツ! ペッツは悪くないからねーーー!!!

見送るカナの頭に花が咲きかけている。近くの地面が盛り上がる。(アトムスク匠的なやつ。地中に。)
走っていくリムジン。

カナ:…

ポツポツと雨が降り始める中、校門付近にへたりこむ、カナ。

【カレン・ユーデン】

アイロン型になった「カレン・ユーデン」がプシュー。蒸気を絞り出した。

【学校】

雨が降りしきる中、まだ校門にへたりこんでいるカナ。
須藤と、見知らぬ女性(50才前後、ヤンママ)が学校から出てくる。

須藤:こちらのほうでも、心当たりがあるか、生徒たちに聞いてみますので…

母親:たぶんそこらウロウロしてるだけだとは思うンスけど、よろしくおねがいっス…

須藤:いえいえ、何かわかりましたらすぐにご連絡いたします

母親:あ、あと、

須藤:…はい?

母親:あいつ、バスケ部入ってるってホントっすよね?

須藤:え、あ、はい、、あの、マネージャーですけど、、

母親:…はあ、マジかあ…んじゃ、失礼します…

ド派手な傘をさし、校門を出て行こうとする、佐々木の母、希美。

カナ:…

カナは思わず、佐々木の母に話しかける。

カナ:あの…

:…?

カナ:佐々木君…の、お母さんですか…?

:…ん、そうだけど?

カナ:佐々木君、、帰ってないんですか?

:…(タバコに火をつけ)あんた、カナ…ちゃん?

カナ:…はい…

【市内】

どしゃぶり。街のあちこちに水たまり。

【カレン・ユーデン】

アイロン型の「カレン・ユーデン」が、その雨を降らせている。
最上階のレーダーがうごめいている。


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