フリクリ オルタナ 第6話-4

【津金井駅前】

途切れている歩道橋付近。
帰って来たカナ、矢島、本島、辺田、佐々木。

矢島:じゃあね~

本島:またね~

辺田:「またね」って!

本島:あそっか、地球なくなるかもしんないもんね~

矢島:なくなんないっつの!

本島:じゃあ、なくなんなかったら、また明日!

辺田:…

×  ×  ×
佐々木の自転車もどきに乗せられたカナ。

カナ:ありがと~

佐々木:いえいえ…おかげで自転車が凄いことになりましたし

カナ:あはは

佐々木:あのさあ、

カナ:…うん

佐々木:…どうなるんだろうね…

カナ:…うーん…どうなるんだろうね~…

佐々木:あそうだ、母が、あ、こないだ母と会ったでしょ?

カナ:ああうん、会ったよ!

佐々木:そうそうそれで…カナのこと…あ、まあいいや…

カナ:え?なになに?

佐々木:いや、カナのこと、か、かっか可愛いねって、言ってた

カナ:えー。あはは…ありがとうございます…

佐々木:…

カナ:佐々木君は?

佐々木:は?

カナ:なんて答えたの…?

佐々木:えっ…

カナ:なんて答えたのー?

佐々木:「(ブツクサ言って聞こえない)」

カナ:なに!?聞こえない!

佐々木:「可愛いだけじゃない」って言った!

沈黙。

カナ:…うおーーー!!!

カナ、自転車もどきの後ろで暴れる。

佐々木:うあーーー!!!

カナ:どうしたどうした!?

佐々木:うおああああーーー!!

カナ:なんなんだーー!

カナ、後ろから佐々木にしがみつく。

佐々木:…!!!

走っていく自転車。

【火星】

アトムスクが収納された檻が揺れている。
その脇でビーチパラソルの下に寝そべっているメオンの姿。
アトムスクのうなり声が聞こえている。

メオン:…ようこそ…

火星に地球の地面ごと森が現れる。(降ってくる?)

メオン:…ん?

森から野鳥が飛び放つ。

メオン:んん?

【人工島】

タワー内でN.Oによるジャンプのタイミングを待つ、酸素ボンベを装着したクラベロ。

クラベロ:おーい、そろそろじゃないのか…?

【カナの家】

カナ:ただいまー!ねえ!みんなでおそば屋さん行かない?わたしがバイトやってたとこ!

カナが声をかけるが、静かな家の中。

カナ:…

カナはリビングから寝室へと入っていく。
ベッドの上で、母と弟が作り途中のパズルの脇で眠っている。

カナ:…

カナ、微笑んで、部屋を出て行く。

【津金井駅前】

のシャッター街に立つ、呆然とした表情の神田。
その奥をカナが通りかかる。

カナ:…神田さん…?

神田:…

カナ:…?

カナ、神田に近づき、同じく呆然。
「喜八ブラウンそば」が全くなくなっている。

カナ:これ…ええ??

神田:まさか…「飛んだ」のか…?

【火星】

メオンが立ってる前に、森、山のかけら。道路の切れっ端、歩道橋が落ちて来る。
アトムスクのうなり声が響いている。

メオン:なんだ…?

続いて、「喜八ブラウンそば」が。

メオン:…これが地球人の救いたかったものなのか…

戸が開き、「ムー大陸」が顔をのぞかせる。
顔を見合わせるメオンとムー大陸。

二人:…

【津金井駅前】

空中を浮かぶ視点が、津金井駅前のシャッター街にカナと神田の姿を捉え、近づく。
ピタリと接近が止まる。
その視点の主はハル子。

ハル子:ん??んんん?

【津金井市内】

MMアイロンの終末時計が、完全な●になった。サイレンが鳴り響き、MMアイロンが浮かび上がる。

【津金井駅前】

それを見たハル子は必死にカナと神田に近づこうとするが、何かに吸い寄せられるように浮かび上がる。

ハル子:むぎぎぎぎ…!おごごごご…!

ハル子の体が点滅し始める。
ハル子の視点がカナと神田から遠ざかり、振り回されるように…
ハル子の心音が聞こえてくる。
×  ×  ×
視点はどこかの洋服屋で服を合わせている矢島の姿を通り過ぎる。
×  ×  ×
視点は本島の家の中に入り込む。
ラジオ録音の準備をする本島を通りすぎる。
半透明のハル子が何か叫んでいる
×  ×  ×
視点は辺田の自宅前へ
辺田が家の前に立っていたが、歩いて遠ざかっていく。
ハル子、呆然としながら遠ざかる。
×  ×  ×

【人工島】

MMアイロンが降りて来るのを見上げているクラベロとチェルノフ。

二人:…?

【本島の家】

本島:あれ…?

電源の落ちたパソコン、録音機器の裏から取り出したケーブルは、綺麗に切れている。

【喜八ブラウンそば跡】

段ボールとビールケースを置いて座っている、カナと神田。
サイレンを聞いている。
カナ、頭を抱える。

カナ:ああ…ほんとにこんな…こんな感じでなくなるんだ…

神田:…

カナ:みんななにしてるんだろ…

神田:…

カナ:神田さん、行かなくていいんですか?

神田:ああ、ちょっともう、間に合わないかな…

カナ:…

神田:…

カナ、立ち上がり、

カナ:月見でいいですか…?

神田:…?

カナ:「月見そば」でいいですか?

なにもない場所で注文を取り始める、カナ。

神田:あ、、あぁ…

カナ、何もない厨房へ行き

カナ:お月見でおねがいします~

神田:…

カナ:(ブラウン風)へい!月見いっちょ!

カナ、そばを持ってきたらしい動き

カナ:はい、お待たせしました~

神田:ああ、、はい、、

カナ、厨房があった場所へ行き、神田を見る。

神田:…

カナ:おそば、見てください

神田:…え?

カナ:月見そば。いっつも神田さん、ほとんど食べないで俯いて、月見そば見てたでしょ?

神田:あ、ああ、そうなのか…

カナ:そうですよ?知らなかったんですか?

神田:…

カナ:いつも通り、おそば、見てください。

神田:…

カナ:そばを、見てください。いつも通り。

神田:…

神田はカナを見ている。
カナ、うるうるしちゃう。

カナ:おねがいじまず…いつも通りにしてください…

神田:…

神田、そばを見る。

カナ:そう~、ぞれ~…(そう、それ)

という景色に通りかかる半透明のハル子、何かを叫んでいるが、一気に地上から遠ざかる。
必死に手を伸ばしたハル子の目の前にMMアイロン。
ハル子は二つに引き裂かれながら、飛んで来た黄色いベスパによって決定的に引きちぎられ、飛ばされる。
カナと神田がそれに気付いたように空を見上げた瞬間、ブラックアウト。
いつからか聞こえていたハル子の心音が消える。

【火星】

用賀:さっきからうるせーな!

「喜八ブラウンそば」から出てきたデニス・用賀。
地球から飛ばされてきた地球の破片が、積み重なっている。森、山、岩、氷山、建築物、道路…を見ている、ムー大陸の姿。

用賀:なんだこれ?

そこに落ちてくる隕石らしきもの。
その噴煙の中から立ち上がったのは、ハル子。
ハル子が見上げた先に、地球。
鏡面化されていく地球。

ハル子:…ふふふ、、ふはははは!わーーーーーっはっはっはーーー!!あーーーぶなかったーーー!!!たーーーすかったーーーー!!!

そこに悲しさは微塵もなく。

用賀:…知らんわ…

と、店に戻っていく。

【宇宙】

地球が消滅した跡の塵(ビルや家の破片、がれき、乗り物の部品等々)が、ゆっくりと脈打ち、浮遊しながら集まっていく。
遠くから聞こえてくる、もう一つの心音。
終わり


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