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フリクリ プログレ 第1話-2

イラスト/吉成鋼 

【街の風景】

丘の上にある、巨大なアイロン。
そこから少し離れた場所ににある、同じく丘の上にある遊園地、旧遊園地。

【大豆観音商店街 朝の商店街】

多人種で年齢層も広い街の商店街は、不思議なカラフルさ。(大須観音がモデル)
昭和を思わせる古き良きおもちゃ屋、スターバックスカフェ、いわゆるコンビニ、南米系オープンカフェ、八百屋のおばちゃんがお客さんと元気に話している。
閑散とした朝の商店街を歩くヒドミ。

【教室】

授業前の時間。
生徒たちが騒いで賑やかに見える教室も無音。インターナショナルスクール的な、二人セットの席。
はしゃぐ生徒たちの脇をすり抜けて自分の席につくヒドミ。一番後ろの、廊下から数えて2番目の席。
ヒドミがヘッドフォンを外すと、教室の喧噪が聞こえて来る。
そこから時間は段々と早送りされる。
生徒たちが席につき、ノートを取り出す。  
先生が現れ、授業をする早回し。
別の授業が始まり、グループワークの様に席が組み替えられる。
時折授業の合間の短い休み時間。
せわしなく動き回る生徒たち。
ヒドミは机に座ったまま、微動だにしない。
フラッシュバックのように、ヒドミの夢のグロテスクなシーンが現れ、また授業が始まる。全て早回し。
体育の授業前か、男子達が出て行き、女子達が体育着に着替えて出て行く。
誰もいない教室に、動く雲の影が落ち、日差しが差し込み、点滅する。
全て早回し。戻って来る生徒たち。
再び授業が始まる。
段々と陽が傾いていく。微動だにしないヒドミ。
授業が終わり、生徒たち、グループを作って集まり、弁当やパンを食べている。
ヒドミは一人、黙々とパンを食べている。授業が始まり、終わる。全て早回し。
全ての授業が終わり、生徒たちがお喋りしたり帰ったり、帰る準備をしている間に、ヒドミがヘッドフォンをして、世界は再び無音になる。
教室を出て行くヒドミ。

【大豆商店街】

帰り道、賑やかな商店街を曲がりかかるヒドミ。
商店街の奥の方の店先で、店主の外人らと親しそうに話す2〜3人の生徒たち。
それを見て、商店街を進むことをやめ、迂回するヒドミ。

【ヒドミの家の前】

家に入っていく、ヒドミ。
家の前に車が止まる(ジンユのセドリック。宙に浮いてる?)

【家の中 玄関】

玄関で靴を脱ぐヒドミ。
玄関脇のリビングに続くドア。磨りガラスの向こうに人影(ヒドミの母)。モヤモヤと動いている。

母影:(何か言っているが良くわからない)

ヒドミ:うん、ただいま…

母影:(何か言っているが良くわからない)

ヒドミ:分かってるって…

【ヒドミの部屋】

ヒドミの部屋には、デスメタル系バンドのポスター、ホラー映画のポスターが貼られている。
ノートパソコンで動画を見ているヒドミ。パソコンもホラー方面にデコレーションされている。
パソコンからは、悲鳴や銃声が聞こえて来る。冷徹な目でそれを見ているヒドミだが、時折パソコンから聞こえて来る強烈な叫び声に縮み上がって顔を両手で覆い、再びゆっくりと見る。

ヒドミ:っっ…(息が荒い)

震え上がり、パソコンを閉じ、うなだれ、頭を抱える。息も荒いまま、恐る恐るパソコンを開き、スペースキーを叩くと、「やめろー!ノー!ノー!」な叫び声。

ヒドミ:ふあああ…

動画につられて、自分の首を気持ち悪そうに掴み、引っ掻く。動画から絶叫が聞こえる。のたうち回るヒドミ。
MEGADEATH時計が「22_7」から、「22_1」へと、カウントダウンしている。

ヒドミ:いいいいいい!

勢いよくパソコンを閉じ、抑えた声ながらも叫ぶヒドミ。手を噛んだり、膝を叩いたりしてもんどりうっている。自分で引っ掻いた首の傷跡を撫でる。恐怖と恍惚。

ヒドミ:はあはあ…(うっとり)

【家の前 夜】

車に乗ったジンユが、モニターでヒドミの様子を見ている。

ジンユ:…

【夜の雪山】

人気のない雪山に落ちて来るベスパ。
続いて落ちて来たハル子がベスパにすっぽりまたがり、走り出す。

ハル子:寒! んでもって遠い!

【ヒドミの部屋 夜】

眠っているヒドミ。

【ヒドミの夢 宇宙からの目線】

地球のあちこちで爆発が起きている。

ヒドミの声:ボスーン。ボオオーン。ボコボコーン。

×  ×  ×
地球上で海が荒れ狂い、街が粉々に砕け散る。空を見ていたヒドミが光に包まれる。

ヒドミの声:ドバーンドガーン…ドドーン…ドボドボドボドボド〜ン!

×  ×  ×
うごめく曇天の空。
ゾンビヒドミが立ち上がり、辺りを見回す。

ヒドミの声:シ〜ン。

街の残骸。あちこちから煙が立つ。

ヒドミの声:(凛々しい声)シ〜〜ン!

焼けこげた人々の死体らしき塊

ヒドミの声:(非常に凛々しく)シ〜〜〜ン!

かろうじて残った黒こげのビルの残骸、鉄骨の先から垂れる、ドロドロの液体。

ヒドミの声:泣いてるの?泣いてるのかしら!?そんなところにギャピーン!

ビルの影から異形と化した人型の何かが暴れ出てくる。

ヒドミの声:こんちわ!やってますよ!今日も絶滅した星で、元気でやってますよーい!わたくしにもまだお肌がつるつるな時代がございました。わたくしも昔はそうですね、今はドロンドロ〜ンの沼となっているあの辺りにあった学校に通っていた頃もございました。

というナレーションとともに、横たわったハル子型の丘。

【ヒドミの家の前 夜】

家の前に停まるセドリックの運転席に座るジンユ。ソナーの様なものに反応する点。(ヒドミの興奮に呼応。)

ジンユ:…

【街 夜明け】

ベスパに乗ったハル子が走る。
遊園地とMM施設を確認。

【ヒドミの部屋 朝】

窓から差し込む光。
息も荒く、目を覚ますヒドミ。
ここから、早送りでヒドミの一日が進む。
水を飲む。
通学路、商店街を歩く。
教室に入って来る生徒たち。ヒドミの姿。
授業。
下校時刻、教室を出て行くヒドミ。
通学路を歩くヒドミ。
自室に入って来るヒドミ。
ノートパソコンを開き、もんどりうつヒドミ。
家の外観。日が暮れて星が巡り、朝が来る。
家を出て来るヒドミ。ヘッドフォンをする。

【教室 朝】

賑やかな教室の片隅で机を囲んで喋っている男子生徒三人。
井手、森吾郎(志茂田景樹を思わせるファッションのぽっちゃり男)、マルコ野方(南米と日本のハーフ。美形。スタイルも良い)。

マルコ:え、どういうこと?

井手:どういうこと?じゃねーよ。俺たち(井手と森)みたいなこーゆー、なんとも形容出来ないタイプの下々はな、美容院に行ったってまともな注文は出来ないんだよ。

マルコ:そんなことないよ、、

井手:おいマルコ、俺の髪型、なんていうか分かるか?

マルコ:えっと、、無造作ヘアー?

井出:惜しいな。正解は「リアル」無造作ヘアーだ。

マルコ:リアル、無造作…

井出:そう。いわゆるノーマルな「無造作ヘアー」ってのは、電車の中で窓に向かってチマチマチマチマ前髪いじったりしてるやつらの髪型のことだ。つまり全く「無造作」じゃない。

マルコ:なるほど…

井出:だからあいつらの髪型はめちゃめちゃ意識して作られたものなんだよ。あんなものは無造作じゃない。しっかり名前をつけるなら「ものすごい自意識過剰ヘアー」でもいいくらいだ。「モテたくてモテたくて仕方なくて電車の中で人目もはばからず髪の毛の先の先までモテたくてずっといじり続けてやっと出来上がったヘアー」、でもいい!

:いいからさっさと髪切りにいけよ

井出:それを考えると、俺の髪型って、本当に無造作だろ?

マルコ:確かに…

井出:だからさ、

井出が教室入り口の方を見る。
ヒドミが入ってきた。

:どうした?

井出:あ、ううん、だからな、無造作ヘアーを語ってるくせに実は全然無造作なんかじゃないやつらより、よっぽど純粋に無造作だろ?

井出は話しながら、チラチラとヒドミを見る。席に付き、ヘッドフォンをはずすヒドミ。

マルコ:うん

井出:じゃあなぜモテないんだ

マルコ:えっ…

解説映像付きの井出の主張。

井出:俺ほどに純粋な無造作ヘアーな男が目の前を歩いているにも関わらず、女子達は俺のことなんか見向きもせず、モロに窓ガラスの前に立ち止まって窓ガラスに映った自分の姿を見ながらずっと髪型いじってる男(イケメン)にワーキャーしやがって女子ども!

マルコ:落ち着いて、、井出君、、

井出:落ち着いていられるか!お前だってどれだけ意識して髪の毛いじっても「無意識でお洒落」っていわれるお得な生まれと育ちだろう!

マルコ:そんなことないよ…

井出:そんなことなくない!

:井出。違うな、違うんだよ

志茂田景樹ファッションの森が話し出す。

:まず、女子達は俺たち男子を見ながら、「無造作」を突き詰めて考えてる訳じゃないんだ。無造作を必要以上に突き詰めて考えてるのは、井出、お前だけだ。

井出:そうなのか…?

:いいか?髪型でも服装でも、ファッションに対するこだわりってあるよな?お前はそのこだわりの根っこが「モテたい気持ち」だと思ってる。そこが違うんだよ。楽しみたいだけなんだ、俺や、マルコは。ファッションをさ

井出:…お前が言うか…

:そうだろ?マルコ。服装って、別にモテるモテないで決めてなんかいないだろ?

マルコ:まあ、そうだね、、

:奇遇だな!俺もそうなんだよ!

井出:森、お前、モテたくないのか?

:う〜ん、まあ俺は何かを我慢してまでモテたいとは、思ってないから、、言ってみれば、モテたくないかなあ、マルコはどうだい?

マルコ:僕は、モテたいかな…

:奇遇だな!俺もそうなんだよ!

井出:お前そこでマルコに合わせたってモテるわけじゃないからな…

:だから井出もさ、髪型だって、モテるモテないで考えないでさ、自分の気持ちに正直になっちゃえよ。自分が心地いいかどうか、それが大事だと思うな。ね?マルコ

マルコ:うん、そうだね

ヒドミは全くその話を聞いてない様子で、地蔵の様に固まって座ったまま。

:それで、自分の好きな様に生きてて、それを見て女子がさ、「あの人、自由に生きてて素敵」ってなったら、まあ、それがいいじゃない

マルコ:そうだね

:(激怒)じゃあなんでモテないんだ俺は!?

マルコ:ええ?

:自由そうな感じのさあ!「あの人ハミ出してるなー!」って感じのさあ、こういう格好してるのにさあ!なんで俺はモテないんだよ!

×  ×  ×
ベスパでバインバイン跳ねながら階段を駆け上がる。ハル子。

ハル子:ごめんなさいよごめんなさいよ!

×  ×  ×

マルコ:結局モテたいって話なの?

:あたりめーだろ!

井出:俺より森の方が切ないわ…

:なんでだよ!お前みたいに裏をかいて結局モテてないより全然マシだろ!?

井出:なんでだよ!思いっきり意識してそんな謎な格好して傷だらけになるより絶対俺の方がマシだっつーの!

つかみ合う二人

:なんだこの頭!

井出:(服を掴み)なんだこのイラつく柄!

マルコ:ちょっと!二人共…

森・井出:むぎー!

井出は森を突き飛ばし、

井出:ただ、俺には秘策があるのさ…

絵はがきを取り出す。「宮島達男展 『MEGA DEATH』」夜景の様な写真がうつっている。この時点では「MEGA DEATH」の詳細は分からない。

:なんだそれ?

井出:ふぉふぉふぉ、これはな

ハル子の声:どいたどいたー!

生徒たちの声:ぎゃー

教室のドアをやぶって、ハル子が登場。ベスパ。   

ハル子:今日からこのクラスの担任になってあーだこーだ、前の先生はどーたらこーたら。だからよろしくね!

井手:雑!

ハル子:つーことでとりあえず個人面談するからあーだこーだ。

井手:不思議と言いたいことは分かる…

マルコ:うん、、

ヒドミ:…

ヒドミは特に変化なく、座っている。


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