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【マッチプレビュー】2022明治安田生命J3リーグ第23節 いわきFC対AC長野パルセイロ

2022明治安田生命J3リーグ第23節。いわきFCは9月3日(土)、JヴィレッジスタジアムにAC長野パルセイロを迎える。

AC長野パルセイロは、長野県長野市、須坂市、中野市、飯山市、千曲市など16市町村をホームタウンとするサッカークラブ。この試合の見どころについて、詳しく紹介しよう。

■目指すは「地域密着協働型スポーツクラブ」。

オリジンは、1990年に長野県北信地域の複数の高校サッカー部OBを中心に創設された「長野エルザサッカークラブ」。1996年に長野県リーグから北信越フットボールリーグ初昇格。1999年に県リーグに降格するも2000年に北信越リーグに二度目の昇格を果たし、2002年に初優勝。全国地域サッカーリーグ決勝大会(地決)に初出場を果たす。

2004年には全国社会人サッカー選手権大会(全社)と天皇杯に初出場するなど確実に地力を蓄えていく。そして2006年、イラン代表元監督のヴァルデイル・バドゥ・ヴィエイラ氏の監督就任に伴い、プロ契約選手の獲得や天然芝グラウンドの整備、クラブハウスの設置などの環境整備を行った。

2007年に新たなクラブ名を公募し、名称を「AC長野パルセイロ」へ改称。「AC」とはAthletic Clubの略。「パルセイロ」とはポルトガル語で「パートナー」の意味。「長野市を中心とした北信地域の住民、企業のよきパートナーでありたい。また、サッカーをはじめとするスポーツの普及・振興に貢献し、スポーツ文化の創造に寄与したい」という思いのもと「地域密着協働型スポーツクラブを目指す」という決意をクラブ名に込めている。

2008年に北信越リーグと全社で優勝。しかし地決はグループリーグ敗退。翌2009年は北信越リーグ2位に終わり、地域リーグの壁に阻まれる結果に。しかし2010年に薩川了洋氏が監督に就任すると、北信越リーグを無敗制覇。さらに全社、地決をともに準優勝し、JFL昇格を決めた。

JFLでも好調を維持し、2011~12年に2位、2013年は1位。J2昇格圏内の成績を残すも、ライセンスが取得できず昇格はならず。そして翌2014年、初年度のJ3に参戦を果たす。

チームはJ3参入ともに旋風を巻き起こし、1年目からリーグ2位に食い込んだが、入れ替え戦で讃岐に敗れてJ2昇格ならず。その後もたびたび好成績を残し、2015、2016、2020年に3位に。中でも2020年は最終節を2位で迎え、J2昇格が目前に見えたところでSC相模原に逆転昇格を許すという悔やまれるシーズンだった。

2021年は昇格候補筆頭の呼び声のもと、天皇杯で川崎フロンターレを追い詰めて調子を上げるも、その後失速。持ち前の堅守は光ったが得点力不足が響き、8勝12分け8敗の勝ち点36で9位に終わった。

■若き戦術家が志向する攻撃サッカー。

悲願のJ2昇格に向け2022年、新監督に昨年、Y.S.C.C.横浜をクラブ史上最高の8位に引き上げたシュタルフ悠紀リヒャルト氏が就任。チームは攻撃サッカーを志向する若き戦術家に未来を託した。

随所に経験値の高いメンバーを置く現行スカッド。昨シーズンまでの戦力を維持しつつ、シュタルフ氏の古巣Y.S.C.C.横浜から3選手を獲得し、シュタルフ氏の戦術を下支えする。

GKは昨年、現いわきFCの田中謙吾とポジションを争った2年目の矢田貝壮貴が成長中。加えて横浜FCより、大内一生が期限付き移籍で加入している。

DFは主力が抜けたが、Y.S.C.C.横浜からSB船橋勇真、 CB池ヶ谷颯斗を獲得してリカバー。加えてこの8月末、栃木SCから乾大知を補強した。

MFは目立った放出はなく、昨年チームを支えた三田尚希、坪川潤之、ポリバレント性の高い水谷琢磨が残留。さらに柏レイソルからビルドアップ能力とサイズを備える杉井颯、Y.S.C.C.横浜から佐藤祐太を獲得して層が厚くなった。

FWも移籍や引退によるダメージは少なく、藤枝MYFCから宮本拓弥、ファジアーノ岡山から山本大貴、同じく岡山から期限付き移籍でデューク・カルロスと、即戦力を加えている。

■アクシデントを跳ね返した勝利。

今シーズンは昨年に比べ調子の波が少なく、第22節終了時点で11勝6分け5敗の勝ち点39で6位につける。

いわきFCとは第5節に長野Uスタジアムで初対戦。開幕から2勝2分けと好調を維持する長野に対し、いわきは監督と2選手が新型コロナウィルスに感染。さらにはGK鹿野修平が試合前のウォームアップで負傷するアクシデントに見舞われてしまう。

そんな中でもいわきはプレースタイルを貫き、長野を圧倒。FW古川大悟、FW有田稜、FW有馬幸太郎がゴールを挙げると、69分にはDF江川慶城のヘディングシュートがオウンゴールとなり4点目。鹿野に代わって今季初先発のGK田中謙吾も古巣の攻撃をシャットアウトし、いわきが4対0で完勝した。

長野はこの完敗の後、チーム徐々に立て直していく。第7節では鹿児島ユナイテッドFCに勝利し、松本山雅FCとの信州ダービー、FC岐阜との対戦をドローで乗り切る。

その後テゲバジャーロ宮崎、カターレ富山とのアウェー対決に敗れたが、7月から8月にかけてガイナーレ鳥取、宮崎、カマタマーレ讃岐、カターレ富山に4連勝。前半戦終盤にアウェーで敗れた2チームにしっかりとリベンジを果たし、上昇気流に乗った。

第21節にアウェーでヴァンラーレ八戸に敗れたものの、至近の第22節ではいわきFCがホームで引き分けたギラヴァンツ北九州に1対0で勝利。モメンタムを取り戻している。

第22節のスターティングメンバーはGK大内一生、DF池ヶ谷颯斗、秋山拓也、杉井颯、アンカーに宮坂政樹、中盤に藤森亮志、三田尚希、デューク・カルロス。サイドに水谷拓磨、佐藤祐太そして1トップに山本大貴。ここまで4バックと3バックを併用しており、戦術家のシュタルフ監督が首位いわきFCとの二度目の対戦でどのような手を打ってくるのかが注目される。

■難敵・藤枝MYFCに完勝。

首位を走るいわきFCは8月20日にホームでの福島ダービーを迎えた。同県のライバルとのラバーマッチは4対1の完勝。今年の通算成績を2勝1敗とした。

そして翌週の第22節は、6連勝中の藤枝MYFCとの上位対決。

藤枝は5月の第9節にホームで対戦。いわきはFW古川大悟、有馬幸太郎のゴールで前半を2対0で折り返すも66分にオウンゴールで失点。72分にはカウンターから同点とされ、2対2で引き分けていた。

大きな山場となる一戦のスターティングメンバーはGKに坂田大樹、CBに家泉怜依と遠藤凌、SBは日高大と嵯峨理久。両SHは岩渕弘人と鈴木翔大。2トップは有馬幸太郎に加え、好調の有田稜が名を連ねた。

試合はいわきが開始早々から藤枝を押し込み、4分に右CKから日高大が先制点をマーク。20分には鈴木翔大が左サイドからのドライブシュートでゴールを挙げ、前半で2点をリードする。

いわきは後半もリズムを作らせず、藤枝の攻撃をことごとくシャットアウト。79分にDF遠藤凌が今季初ゴールを挙げて3対0と突き放し、タイムアップ。前後半を通じて藤枝に何もさせず、シュート数19本対1本の完勝で3連勝。14勝6分け2敗の勝ち点48で首位をキープした。

そして迎える今節。果たして、スターティングメンバーを勝ち取るのは誰か。

藤枝の攻撃力を封じ込めたGK坂田大樹、DF家泉怜依、遠藤凌の守備陣、そして日高大、嵯峨理久の両SB、中盤を支えるチームの心臓・山下優人、宮本英治は盤石か。多くの選手が9月に入っても良好なコンディションを維持する中、前半戦を支えたDF星キョーワァンの復帰、CBとSBをこなす江川慶城の出場はあるのか。

一方、アタッカー陣のポジション争いは依然、激しい。

SHは、今年になってゴールセンスを一気に開花させた岩渕弘人、復帰早々から卓越したテクニックを見せ、SB日高との優れたコンビネーションを示す山口大輝など。加えて、8月に清水エスパルスより期限付き移籍で獲得した川谷凪の起用にも注目したい。

2トップでは、信頼感抜群の有馬幸太郎のパートナーに有田稜が台頭。ここ4試合連続で先発出場して3ゴールを挙げている有田の魅力は、走力の高さとハードワーク。夏場に入り、年初からのフィジカル強化の成果が出つつある。そしてSHで山口、FWで有田に刺激を受け、鈴木翔大がここ3試合で優れたパフォーマンスを見せている。さらには前への推進力に優れる谷村海那、吉澤柊も好調を維持。虎視眈々とスターティングメンバーの座を狙う。

そんな状況で迎える今節。いわきFCはAC長野パルセイロをいかに攻略するのか。村主博正監督の談話を紹介しよう。 

■「先のことは考えていない。今の相手だけに集中している」村主博正監督

 「藤枝MYFCさんとの試合では、選手達が素晴らしいパフォーマンスを見せてくれました。藤枝さんの攻撃力を出させないよう、自分達がしっかり前を向いて攻撃する。それを90分間続けられたことが大きかった。ボールホルダーに強気で行き、奪ったら攻撃的に押し込む。それにより、藤枝さんのストロングである両ウイングバックに有利なポジションを取らせずに試合を終えることができました。

 気温30度で湿度もそれなりにある中での試合でしたが、どのチームにとっても夏場は難しいもの。そんな中でどれだけインテンシティの高いサッカーができるか。

 おそらく、他のチームであれば前線から激しく行くプレースタイルを1試合続けることは難しいと考えると思います。我々はこの時期を乗り切りため、シーズンイン当初から苦しいトレーニングを続けてきました。『今日走らずにいつ走るんだ』という気持ちで臨み、みんな本当によく走ってくれていますし、その結果がここまで積み上げてきた勝ち点ということです。

 ただし、ここから先は気温が落ち着き、他のチームも動けるようになってくる。こちらももう一つパワーを上げていかなくてはいけません。

 AC長野パルセイロさんはここ6試合を5勝1敗で来ています。J1経験のあるベテラン選手が随所にいて彼らがチームの中心になり、若手もバランスよく入っている。シュタルフ監督のもとアグレッシブに戦っており、とても厄介な相手。分析力の高い監督さんで、相手に合わせてミスマッチを作り、やりたいことをやらせないようにしてきます。相手に合わせて3バックと4バックを使い分けつつ、何をしてくるかわからないチームなので、注意が必要です。

 まず警戒しているのは、ここ6試合で4点を取っているFW山本大貴選手。もともと力のある選手ですがここに来て復調し、チームにフィットしてきた。そして、中盤のベテラン宮坂政樹選手。運動量こそ少なくなっていますが、経験値が高く、セットプレーのキッカーとして一発を持っています。

 2位に4ポイント差をつけて首位に立ってはいますが、先のことはまだ何も考えていません。どの道、1節の結果でいろいろなものがひっくり返るのが今。だから本当に何も考えていないんです。目の前の戦いに、しっかりと勝つ。それができなければ先などありませんからね。次の長野戦で勝つための準備を、しっかりとしていくだけです」

■無用な取りこぼしをしたチームから脱落する。

後半戦に突入したJ3は依然として混戦が続く中、少しずつ上位グループと下位グループの勝ち点差が開きつつある。

2位の鹿児島ユナイテッドは8月に入り松本山雅に4対2、第21節でSC相模原にアウェーで1対0で勝利。しかし第22節でFC今治にホームで3対4で打ち負けた。この結果、勝ち点44。いわきとの勝ち点差は4と開いた。

3位は松本山雅FC。直近で2連勝しており、2位鹿児島と並ぶ勝ち点44。そして勝ち点41で4位に入ったのが、第22節で鹿児島を破って4連勝中のFC今治。

5位は勝ち点39でカターレ富山。7位は藤枝MYFC。藤枝は直接対決でいわきに敗れて勝ち点38も、消化試合数が他チームより2試合少ないため7位はあくまで暫定。昇格圏内入りはまだまだ十分狙える状況にある。そして8位が勝ち点38で愛媛FC。

昇格枠2を手にするチームはこのあたりまでと推測されるが、果たしてどうなるか。いわきFCにとって長野戦以降のカギとなるのは、9月18日のFC今治戦(アウェー)、10月23日の愛媛FC戦(Jヴィレッジスタジアム)、そして11月6日の鹿児島ユナイテッドFC戦(Jヴィレッジスタジアム)と思われる。

今年のJ3は例年になく各チームの力量が拮抗しており、今後も混戦が続くのは間違いない。

今は、上位チームの勝ち点差はほとんど開いていないダンゴ状態。無用な取りこぼしをしたチームから脱落してくことになる。例え首位に立っていようと、少しでも歯車が狂えば、すぐさま奈落の底に突き落とされるだろう。そんな混迷のJ3。予断を許さぬ激烈なデッドヒートはまだまだこれからだ。

明治安田生命J3リーグ第23節・AC長野パルセイロ戦は9月3日(土)16時30分より、Jヴィレッジスタジアムにてキックオフ。試合の模様はDAZNにてライブ配信される。

熱き戦いに、ぜひご注目を! 

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