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【マッチプレビュー】2023明治安田生命J2リーグ第41節 いわきFC対モンテディオ山形

2023明治安田生命J2リーグ第41節。いわきFCは11月4日(土)、ハワイアンズスタジアムいわきにモンテディオ山形を迎える。この試合の見どころについて解説していこう。


■ポイント&レビュー

いわきFCは現在、11勝11分け18敗の勝ち点44で19位。今節の相手は7位モンテディオ山形だ。

山形はここまで19勝4分け17敗の勝ち点61。6位ヴァンフォーレ甲府と同勝ち点で並び、J1参入プレーオフ圏内入りを争っている。同じ東北のクラブであり、前期の対戦では0対3で敗れた相手でもある。J2残留のためにも、絶対に負けるわけにはいかない。

この試合のポイントは
①スターティングメンバーの編成
②山形の両ウイングへの対処
③先制点を取れるか

などだろう。

山形の分析を行う前に、いわきFCの至近の戦いを振り返りたい。第39節はホームで、前期に1対9の大敗を喫した2位・清水エスパルスとの一戦となった。

「引いて自陣にこもり、セットプレーから1点を狙う。その先には何もない」

田村雄三監督がそう明言した通り、いわきは清水を相手にしても臆することなくボールを動かし、ゴールに迫る。だが11分、DFの連携ミスから先制を許し、30分から立て続けに2失点を期してしまう。

スコアは0対3。しかし、いわきはここから反撃。FW有田稜がカウンターから右サイドを駆け上がり、折り返しをFW谷村海那が決めた。1点を返して1対3で前半終了。

だが後半は、J1並みの戦力を誇る清水との実力差を思い知らされる結果に。4失点を許し、試合は1対7の敗戦となった。ただし、前節の対戦から進化を見せたのも確か。前回対戦で4本にとどまったシュート数はこの日9本。前半に返した1得点だけでなく、清水を幾度となく押し込み、成長を見せた。

▼前々節のハイライトはこちら

▼BEHIND THE SCENES

そして第40節は、アウェーで5位・ジェフユナイテッド千葉と対戦。この日、アウェーのフクダ電子アリーナに駆けつけたいわきFCのファンは約1000人。熱い声援のもと、選手達は気迫のこもった戦いを見せる。

スターティングメンバーはGK1田中謙吾、DF24山下優人/3遠藤凌/4家泉怜依/6宮本英治、MF33下田栄祐、MF17谷村海那/14山口大輝/19岩渕弘人/11有田稜、FW10有馬幸太郎。清水戦翌日の鹿島アントラーズとのトレーニングマッチで好調ぶりを見せたGK田中謙吾、前節に負傷復帰したFW有馬幸太郎が先発入り。山下優人と宮本英治がSB、下田栄祐がアンカーに入る4-1-4-1でマッチアップした。

アンカー下田の両脇を狙い、いわきを押し込む千葉。いわきはカウンターからMF岩渕が再三決定機を迎えるも、決められない。ここで得点できなかったことが尾を引いた。44分、DF遠藤凌が2枚目のイエローカードをもらい退場処分。いわきはFW有田稜を下げてDF速水修平を投入。10人となり、4-4-1の布陣で構える。

後半は数的優位に立つ千葉が主導権を握る展開。千葉の再三のシュートに対し、GK田中謙吾がファインセーブ。今季リーグ戦2試合目の先発となったベテランが意地を見せ、試合は0対0のまま終盤へ。

自陣に押し込まれ続けるも、必死で粘るいわき。しかし86分、ロングスローの流れから千葉FW小森飛絢に決勝点をねじ込まれてしまう。0対1で無念のタイムアップ。死力を尽くした戦いに敗れ、いわきは2連敗。11勝11分け18敗の勝ち点44で、19位に順位を下げた。

▼前節のハイライトはこちら

混戦続くJ2リーグは18~20位に栃木SC・いわきFC・レノファ山口FCの3チームが勝ち点44で並ぶ状況。この日敗れた降格圏の21位・大宮アルディージャとの勝ち点差は5。次節はホーム最終戦。いわきは勝利すれば、自力でのJ2残留が決まる。引き分けもしくは敗戦でも、大宮の結果次第で残留は確定する。

しかし、大きな懸念材料がある。

次節はDFの要・遠藤凌、そして後半の躍進の立役者・アンカーの下田が出場停止。そして相手のモンテディオ山形は、プレーオフ圏内入りを目指し3連勝中と好調をキープする。

シーズン大詰めの今、今季最大の試練を迎えたいわきFC。東北決戦を制し、地域のファンの皆さんとともに、残留の喜びを分かち合いたい。

■戦力分析~モンテディオ山形

今季の対戦相手・モンテディオ山形は、山形市、天童市、鶴岡市を中心とする山形県全県をホームタウンとするクラブ。「モンテディオ」という名称は、イタリア語の「MONTE(山)」と「DIO(神)」を組み合わせた「山の神」を意味する造語である。

オリジンは、1984年に山形日本電気鶴岡工場内で創部された「NEC山形サッカー同好会」。NEC山形サッカー部として1990年より東北リーグで戦い4連覇。93年に全国地域リーグ決勝大会の決勝ラウンドで2位に入るも、JFLクラブとの入れ替え戦で敗戦。しかし敗者復活戦を制して最後の1枠を勝ち取り、東北地方に本拠地を置くクラブとして初めてのJFL昇格を果たした。

94年よりJFLで戦い、96年に将来のJリーグ参戦を見すえ、名称をモンテディオ山形に変更。NEC山形、山形県サッカー協会の協力のもと、山形県勢初のJリーグ参入を目指して準備を開始。98年にJFLで3位に入り、翌年に新設されるJ2への参加が承認された。

J2初年度の1999年から2008年までJ2で戦い、2009年に初めてJ1入りし、3シーズンを戦った。ちなみに、現いわきFCの渡邉匠コーチは2006年から2009年まで山形に在籍している。山形は2012年から3シーズンは再びJ2で戦い、2015年にJ1昇格。しかし1年でJ2に戻り、2016年からはJ2で戦い続ける。2022年はリーグ6位に入り、3年ぶりのプレーオフ出場。1回戦でファジアーノ岡山に勝利したが、2回戦では熊本と引き分け、入れ替え戦進出ならず。

2023年は開幕2連勝と好スタートを切るも、第3節から5連敗してクラモフスキー監督との契約を解除。渡邉晋監督体制となるも連敗は止まらず、クラブワーストの8連敗。21位にまで順位を落とすも、第16節で大分トリニータに大勝。チームはここで息を吹き返す。

いわきFCとの前期の対戦は、2023年6月11日の第20節。いわきは開始から山形に圧をかけ、ロングボールでDFの背後を徹底的に狙っていく。22分にはDF嵯峨理久がドリブルで持ち込み決定機を迎えるも、シュートは惜しくもポストに。振り返ればここが勝敗の分かれ目となった。

前半はほぼいわきのゲーム。だが48分、山形がCKの流れからMFチアゴ・アウベスのゴールで先制。そして79分にはチアゴ・アウベスのクロスから加藤大樹(現・ツエーゲン金沢)が抜け出して追加点。アディショナルタイムにも加藤が決めて3得点を奪い、山形が決定力の差と試合巧者ぶりを示した。

▼前回対戦のハイライトはこちら

山形はここからプレーオフ圏内を狙える位置まで順位を回復し、今に至る。前節はプレーオフ圏内入りを争うザスパクサツ群馬と対戦し、2対1で勝利。スターティングメンバーはGK1後藤雅明、DF26川井歩/4西村慧祐/5野田裕喜/41小野雅史、MF29髙江麗央/49後藤優介/18南秀仁、FW42イサカ・ゼイン/11藤本佳希/19宮城天。

攻撃を牽引するのは左右のウイングに入るイサカ・ゼインと宮城天、そしてチアゴ・アウベス、横山塁ら。彼らを生かすのが山形のスタイル。両サイドで1対1の状況を作り出し、個人技で打開する戦い方は、前回対戦から変わっていない。

そしてCFに入る藤本佳希も能力が高く、たびたび中盤まで下りてゼロトップ気味に組み立てに加わる。マークするのか、受け渡すのか。DF遠藤に代わるCBの対応は一つのカギ。田村監督が選ぶ立ち位置は、果たして3バックか4バックか。そしてDF家泉怜依と組むのは誰か。遠藤の代わりに入る選手は、残留を懸けた大一番で成長を示せるか。

山形の戦績はこれまで19勝4分け17敗と勝ち負けがはっきりしており、引き分けが少ない。開始から攻撃がはまって先制した場合の勝率は高い反面、先制されたゲームで前がかりになり、カウンターから失点するパターンが見られる。そのため、先制点はこの試合も大切なポイントとなるだろう。また山形は後半に運動量が落ちるケースがあり、走力を武器とするいわきは前半に先制できればベスト。得点できなくても無失点で折り返せれば、後半に勝機は生まれるはずだ。

ここ2年間チームを牽引し続けてきたDF遠藤、後半戦の躍進の立役者MF下田の欠場は痛い。経験の少ない選手が入る分、今季の行方を左右する大一番は、メンバー間の意思統一がこれまでになく大切となるだろう。難しい状況の中、田村雄三監督はどのような戦略をチョイスし、選手達にいかなるタスクを授けるのか。注目したい。

■「選手達には迷いなくプレーしてほしい」田村雄三監督

「前節の千葉戦は残念な結果でした。1人退場してしまいましたが、みんなよくやってくれたと思います。前半の決めるべきところで決めなくてはいけませんでしたね。決定力についてはトレーニングすることと、ボックス内に入る回数と人数をできる限り増やすしかない。それはずっと追いかけていること。継続してやっていきます。

リーグ戦で2度目の先発となったGK田中謙吾はよく頑張ってくれました。清水戦翌日のトレーニングマッチで調子がよかったし、いい空気を持っていた。トレーニングに取り組む姿勢も含めて、彼で行こうと思いました。

清水、千葉、山形と上位チームとの対戦が続きます。どのチームもショートカウンターが得意で、後半から外国人を入れてさらに攻撃的に戦ってくる。その点で似ているので、ここ数週間の取り組みを継続できるのはメリット。ここ2戦は攻撃に移った時のボールの動かし方、奪われ方が悪かった。ドリブルで持ち出すのか、シンプルにパス&ゴーで攻めるのか。個人の判断レベルを高めていく必要があります。

次節はDF遠藤凌とMF下田栄祐が出場停止。スターティングメンバーは未定ですが、キャリアの浅い選手が何人か入ることになります。この状況から、未来に向けて何を積み上げられるか。もちろん一つは勝利ですが、もう一つは今回急遽出場する選手達の経験値です。彼らにいい形で経験を積んでもらうには、どのような方法がベストなのか。11人がしっかりつながるよう、いかにして彼らのよさを引き出すか。選手達に迷いなくプレーしてもらいたいので、求めることはなるべく減らしていくつもりです」

■J2は終盤の大混戦。

10月28~29日に行われた、2023明治安田生命J2リーグ第40節の結果は以下の通り(左がホーム)。

10月28日(土)
清水 1-3 熊本
仙台 1-1 山口
長崎 1-2 徳島

10月29日(日)
磐田 1-1 東京V
藤枝 1-0 水戸
大分 2-1 秋田
山形 2-1 群馬
大宮 0-2 甲府
千葉 1-0 いわき
町田 1-0 金沢
岡山 1-1 栃木

上記を踏まえた順位表は以下。

第39節で首位・FC町田ゼルビアの2位以上とJ1昇格が確定。。残りひとつの自動昇格枠を2位清水エスパルス、3位ジュビロ磐田、4位東京ヴェルディが勝ち点差2で争う展開となった第40節。2位・清水はホームでロアッソ熊本と対戦。清水は26分に先制点を奪うも前半アディショナルタイムに失点。後半は熊本にペースを握られて2点を追加され、シーズン初の逆転負け。そして清水の敗戦により、町田のJ2優勝が決定した。

一方、ヤマハスタジアムでは3位磐田と4位東京ヴェルディが直接対決。清水の敗戦を受け、勝利したチームが2位浮上という状況となったが、こちらは1対1のドロー。ともに勝ち点1を積み上げ、2位は勝ち点70で清水。3位は勝ち点69の磐田。4位は同じく勝ち点69で東京ヴェルディ。自動昇格枠の残り一つ・2位の座を争う3チームが勝ち点差1内にひしめく状況となった。

そしてJ1昇格プレーオフ争い。2位清水~4位東京ヴェルディの出場が確定し、枠は残り2つ。これをジェフユナイテッド千葉、ヴァンフォーレ甲府、モンテディオ山形、V・ファーレン長崎、大分トリニータ、ファジアーノ岡山、ザスパクサツ群馬が争う。

いわきに勝利を挙げた千葉は勝ち点64で5位をキープ。甲府はACLを並行して戦いながらも大宮アルディージャに勝ち、勝ち点61で6位に浮上。プレーオフ圏内入りを争うザスパクサツ群馬に勝った山形は同勝ち点で甲府を追走する7位。V・ファーレン長崎は徳島ヴォルティスに敗れ、勝ち点59で8位に後退。

9位に浮上したのは大分トリニータ。ブラウブリッツ秋田に劇的な勝利を挙げ、勝ち点58でプレーオフ争いに踏みとどまった。そして10位ファジアーノ岡山、11位ザスパクサツ群馬(ともに勝ち点57)にもまだ可能性は残され、争いは最終節にもつれ込む。

一方の残留争いは、12位藤枝MYFC~17位水戸ホーリーホックの6チームが残留を確定。勝ち点44で並ぶ18位栃木SC、19位いわきFC、20位レノファ山口FCの残留はまだ決まっていない。

降格圏では22位ツエーゲン金沢の21位以下が確定した。金沢のJ3降格はまだ決まっていないが、残り2試合に連勝した上で21位大宮アルディージャが2連敗し、21位に入り、J2ライセンスを持たないFC大阪がJ3を2位以内でフィニッシュした場合のみ残留、という非常に厳しい状況。

もうひと枠の降格圏に沈む21位大宮アルディージャは、第39節まで怒涛の4連勝。しかし第40節で甲府に敗れ、勝ち点39で足踏み。18位栃木SC、19位いわきFC、20位レノファ山口FCとの勝ち点差は依然として5。残留は残り2試合2勝が最低条件。今節に引き分けた場合でも21位以下が確定する。残り2戦の相手は2位清水と4位ヴェルディと、難しい状況にある。

いわきは次節に勝利すれば、自力でのJ2残留が確定。引き分けもしくは敗戦でも、大宮の結果次第で残留となる。だが、ホーム最終戦で何としても勝ち点3をつかみたいところ。今節の山形との戦いは、まさしく運命を懸けた一戦となる。

明治安田生命J2リーグ第41節 モンテディオ山形戦は11月4日(土)14時より、ハワイアンズスタジアムいわきにてキックオフ。試合の模様はDAZNでライブ配信される

ホーム最終戦の東北決戦。磨き上げてきた「魂の息吹くフットボール」の真価が問われる大一番。スタジアムで、DAZNで。絶対に負けられない決戦に挑むいわきFCの選手達に、熱きご声援を!


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