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空間のすゝめ ~だけど中身は大真面目な観光コラム~

1.はじめに


わたしは、愛知県岩倉市で観光まちづくり事業を企画・運営する「NPO法人いわくら観光振興会」で働いています。岩倉市は、愛知県の北西部、西尾張地区にあり、市のほぼ中心を流れる五条川は「日本のさくら名所100選」に選ばれたお花見処で、毎年春に行われる“岩倉桜まつり”が有名です。そんな五条川の桜のように、すでに観光地として認知されているような名所に行くことだけが観光ではないという考えから、日々まちの新しい観光資源を探しています。今回は、ひょんなことから市内32カ所(岩倉市史下巻から)あるお寺を巡ったわたしが感じた、観光に繋がる、または観光に関する情報は、利用者がどこまで調べやすい状態にして残しておくべきか?についてお話します。

2.歳を重ねるほど「なぜ」の理由がわかるとおもしろくなる?!

先日、こちらの投稿で、市内にある32カ所のお寺を巡るコラムを書きました。※1
事前に知識を詰め込みすぎず、まっサラの状態で巡ったのもあって、自分なりの楽しみ方も見つけられました。
さあ!この経験を活かそうと企画案を練ってみると、ターゲットの年齢層がどうしても高くなってしまいます。どうしてそうなるのかを自分に当てはめて考えてみました。
それは
歳を重ねるほど「なぜ」の理由がわかるとおもしろく感じるようになる
から、だと思うのです。
この仕事を始めた20代の当時のわたしは、その辺どう思っていたか思い出してみると、城、神社仏閣などを含む歴史全般に全くと言っていいほど興味がありませんでした。
過去を調べるより、時代に合ったものを新しく創造していくほうがいい、と考えていたのです。
「昔、岩倉街道は本当に賑わっていたんだよ」といわれても、「だから何?」くらいのことは思っていたと思います。本当に失礼な奴です。反省。
歳を重ねるほど、「なぜ」の理由がわかるとおもしろく感じるようになるワケは(結局のところよくわからないのですが)、過去があって今があることを知る事で、今頑張っていることの意味を感じられるというか、ちょっとだけ安心するような、そんなことも関係しているような、していないような…(笑)
ちょっと話が逸れそうなので、この辺にしておいて。

3. ヒントはSDGs。「楽しみ方に空間を残しておくこと」の重要性

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歳を重ねたことに加えて、今回、私がおもしろく感じた重要なポイントとして「楽しみ方に空間を残しておくこと」があげられます。
「空間を残す」とはどういうことか。例えば、今話題のSDGsは私にとってその感覚は近いと思います。
具体的にいうと、過去、SDGsのような地球規模に関する問題提起は、どちらかというと一方的な内容で伝わってきたように思います。
小学生時代、「空き缶はゴミ箱へ。」「ペットボトルはリサイクル。」「水を大切に。」などのキャッチコピーでよく夏休みのポスターを描いたものです。
それに比べてSDGsは目標が提示されていて、そのゴールに向かってどうしていくかをみんなで考える、自由に使える空間のようなものがあるように感じます。
SDGsで問題提起されている内容自体は、実はそんなの前から知ってるよ、ということが多いんです。しかし、その問題を解決する方法は無限にわたしたちが創造することができる。その提示の仕方が時代にあっていたんじゃないかって。

わたしの場合、お寺を巡る際、事前情報なく参拝したことで、山門に彫られた動物の可愛さや、宗派や建造年数による寺の作りのちょっとした違いに目を向ける事ができました。たくさん調べて参拝していたら、事前情報により気持ちが向いて、有形文化財指定の有無であったり、著名人が関わっているかなどに注目していたのかもしれません。
ただ、今回のテーマでは[特に]なのですが、欲しい情報がなかなか探せず、書籍で確認できる情報も古く、範囲も限られていました。“気軽に観光”とは正反対の情報収集の難しさがお寺巡りの前に立ちはだかったのです。それはSDGsに感じた“空間”とはまた違った、断崖絶壁のようなものでした。

4. 情報は記録。継続してより意味を成す。

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この仕事をしていると、観光資源として何かをテーマにするにあたり、その事柄を調べ進めると、過去に誰かがすでに取り上げている案件であることが多くあります。
例えば、岩倉五条川に架かる橋を紹介するホームページは、ブログ規模であれば人の駅いわくら (平成21年12月15日に開設した駅前活性化事業。平成24年3月末日をもって閉鎖) が過去に橋の紹介をしていますし、地域情報誌で橋の特集企画が組まれたこともあります。
神社仏閣に関するイベント事は、市内で過去複数の開催の記録があるようですが、10年くらい遡ると、もうネットには情報は転がっておらず、弊会でもデータを所有していないものがほとんどです。こうなると一般のユーザーは、よほどに情報を探しに行かないと手に入れることが出来ないので、せっかくの企画も過去のものとして埋もれていってしまいます。まさにわたしが“気軽に観光”しようとしたらぶち当たった断崖絶壁そのものなのです。
わがまちの観光に関する企画も、何度も同じような企画が生まれては消え、埋もれては掘り出すのに一苦労して・・・を繰り返している部分が見受けられます。神社仏閣に関する企画だけでなく、昔を懐かしむ企画、飲食店を巡る企画など様々な分野の企画で起こる現状です。
情報は記録です。その記録が伝承していなければ、また同じことをただ繰り返すことになります。わたしたちが企画するものは、以前と同じような内容なのかもしれないけれども、一つも二つもランクアップしている、あるいは、時代にあったものにブラッシュアップしている必要があると考えます。

記録がないとどのようなことが起こるのか?
具体的な例として、わたしが今から楽しもうとしている「岩倉廿一大師」を挙げてみます。「岩倉廿一大師」とは明治時代にできた、市近郊の弘法めぐりのことを指します。
まず、
“「岩倉廿一大師」というものがあります。”
という情報だけを手に入れたユーザーがいるとしましょう。
さて、それは何ですか?となりインターネットで検索してみます。「人の駅いわくら」さんの過去企画したイベントの新聞記事のリンク、お参りの記録共有サイトの参拝者の投稿がヒットします。共有サイトではこの投稿者さんが廿一大師をまわったことが推測されます。簡単に手に入る有益な情報はここまでです。
さあここからです、大変なのは!簡単な検索では21カ所がどこなのかさえパッと分かりませんよ(笑)
はじめに「人の駅いわくら」さんの情報から見ていきます。過去企画したイベントの新聞記事の画像から、21カ所の中に市外が含まれること、当時イベント用に地図を作成したことが読み解けます。そしてその地図は岩倉総合高校の生徒さんがイラスト等を描いたであろうことは分かりますが、肝心のそのデータはインターネットには無し。(有料のイベントなので内容のソースが露出されていないのは仕方がないですね。)
アナログな手法では、分かる範囲の該当する寺で直接聞くか、関連書物を調べるのが解決に近い方法として考えられます。ここでは後者の方が比較的簡単(自己解決できる)ので、岩倉町史を見てみます。21カ所がどこなのかは記載がありますが、町史は昭和30年に発行されたもので、情報としては不十分な所もあります。例えば21カ所の中に「真光寺」というお寺が含まれているのですが、同名の寺が現存していないため、寺に関する前知識が無ければすぐに解決というわけにはいきません。

と、いう具合に、さぁ今すぐ出かけよう!となるまでの情報がすぐ手の届くところにあるかというとそうではないんですよね。
わたしがもしこの一般ユーザーだったら、
まず21カ所は一体どこなのか分かるとより身近に感じられる、そして21という数の由来もセットであるとより嬉しい。(ちなみに答えは弘法大師の命日である21日に因んでいる) この谷が深ければ深いほど入口にも立てません。

では、反対にものすごく詳細に情報があったらどうでしょう?この分野では特にかもしれないのですが、詳しければ詳しいほど、素人は触れにくく何だかギョっとしてしまう情報にぶつかります。つまり、気軽に見るには程遠い内容と文体の、なにか専門的なページを見ることになってしまうのです。そもそも、情報自体が少ないのですが…。

※検索には直接ヒットしませんが、お参りの記録共有サイトの参拝者の投稿を深堀(ふかぼり)していくと、21カ所の住所が記載された投稿が見つかります。

5.まとめ


岩倉市の観光まちづくりが、SDGsでされた問題定義のように、普遍的な事柄であるにも関わらず、まるで今新たに生まれたモノのように注目される存在になるには、入口の情報はいつでも手の届くところにおいてあげて、その楽しみ方は無限にある状態、すなわち「楽しみ方に空間を残しておく」必要があると考えます。
「楽しみ方に空間を残しておく」ことを、具体的に先ほどの「岩倉廿一大師」を例にまとめてみると

「岩倉廿一大師」についてユーザーが検索する
          ↓
【入口】
手に入れやすい最低限な情報
・弘法めぐりのことであるとすぐわかる
・21カ所がすぐに巡れる情報としてある
          ↓
【空間】
楽しむポイントはそれぞれで見つけることが出来る
・弘法さまの表情の違いは?
・弘法大師は真言宗の開祖だけど、それ以外のお寺も含むという気づき
・そもそもお寺ではない箇所も含まれる
・寺そのものの魅力    
など。
          
何かを調べるときに、詳しい記録があると大変便利です。
大幅な時間短縮になり、効率も上がるでしょう。ただ、便利だからといって、私のような立場の者が過去を見すぎてしまうと、夏休みのポスターの二の舞になってしまう気もしています。
ユーザーが欲しい情報を取りに来た時に、欲しい情報はすぐに手が届くところに提示できて、さらに情報をより「楽しむための空間を残すようにする」のが、観光振興を生業とする私のやれることなのかなと、いま辿り着いたところです。
加えて、自身の経験を活かし、歳を重ねた人もそうでない人にも岩倉市を楽しんでもらえるよう、いろんなカテゴリーで入口を構えられるよう努めたいです。
自分の体験した色々なことが、まちの観光においてSDGsのような存在になる可能性がある
なんて考えると、とてもワクワクしてきます。

※1
【観光コラムKITENE~IWAKURA~】ちょっと今から寺巡ってくる👋
信仰心に乏しかったわたしの32テラ(寺)クエスト ~寺と観光~
https://note.com/iwakurakanko/n/ne0c69144ebc9

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【 この記事を書いた人 】
木村 さや香 (Kimura Sayaka)
NPO法人いわくら観光振興会
人事教育長/イベント企画制作

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1986年生まれ。岩倉市在住。1児の母。岩倉市PR大使い~わくんのアテンド"鯉のぼり恋子"としても活動。「観光資源は自分たちでつくることができる」をコンセプトに、市内の農家や商店、消費者をつなぐ企画を提案している。