高野山・奥之院で出会った、あるおじさんの話
この旅で、三度目になる奥之院へ向かう。
ニコニコと一休みしてる清掃スタッフおじさんに「いい天気ですねぇ」と挨拶したら、流れで会話が始まった。
約30分、5箇所ほど蚊に刺されつつもそこを動かなかったのは、話がめちゃめちゃ面白かったから。
鹿児島出身。体が弱く学校に行けず、小3まで読み書きができなかった。猛勉強して警察官になったけれど、罪を犯した人の話を聞いて一緒に泣いてしまったり、学生運動取り締まりのリンチ風景に耐えられず退職。
「でもそうすると、潰しがきかんのよ、笑」
その後、全国を転々と渡り歩く生活が始まったという。
地質調査やドライブインの住み込みなど、10以上の仕事を経て今は奥之院職員15年目。
70の定年を待たず68で引退して鹿児島に帰ろうと思っているのだそう。
彼が見てきた中で一番印象に残ってる仕事は、料理人だと言う。
夜中3時の京都河原町。
とある割烹料理の軒先に寝ていたら、旦那が何も聞かずにお風呂に入れてくれた。
そしてそこでお世話になることになる。
「皿洗い?そんなのはさせて貰えないよ。
だっていちいち蔵から出してくるくらい高価なものなんだから。」
杉の大木から漏れる光と、歴史的名士たちのお墓に囲まれ、キラキラと自分の人生を語る65歳。
そのなんとも"いい"顔と、落語みたいな遠い話にぐぐっと引き込まれる。
「和食っていうのは本当に芸術だと思う。
料理人は彫刻家でもあり、書家でもあり、華道も茶道も知っている。世界遺産になるのが分かるよねぇ。」
私と話しながらも、行き交う人に「(ご参拝)ありがとう」を忘れない彼みたいなスタッフに支えられて、この場がある。
「鹿児島に来ることあったらお接待してあげるわぁ^_^」
「あはは!よろしくお願いします〜」
おじさん、私は社交辞令と言うものを知らないのよ。覚悟しといてね。と心で呟きつつ、お別れした。
いろんな人を、ゴッソリ包み込む、大きさ。
高野山、スゴイところだ。
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