万里なお

ボーイズがラブをしたり、ボーイズとガールズがラブしている詩でも小説でもないような、なん…

万里なお

ボーイズがラブをしたり、ボーイズとガールズがラブしている詩でも小説でもないような、なんでもないお話を思いついたら書いています。

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  • 活動記録

    万里なおの活動記録や、呟きです。

  • 非日常的英雄

    小品集。 ボーイズがラブしていたり、ボーイズとガールズがラブしています。

最近の記事

ファーザー・アロング

「ファーザー・アロング」2019.2 イラスト・厘てく先生 大洋図書様 SHYノベルス このお話を書く前に、考えていた物語があります。 高校時代野球に打ち込み、エースのピッチャーだった主人公。昔の栄光など忘れてしまっていた主人公の前に高校時代、ライバル校のエースだった男が現れる。 しかし男はなぜか派手な金髪に奇抜なドレス、赤い口紅をしていた。 強引な男に連れられるようにして、主人公はかつて二人が対決した、甲子園球場までの長い長いドライブをすることになる。 その道中、男の余

    • ワルツを踊る

      「すこしだけ、動かないでよ、綾瀬」 「わかってる」 「ああ、いや、動いてくれてもいい。訂正する」 「なにかポーズをとってやろうか」 「いいや、結構」 イーゼルに立て掛けられた大きなキャンバスに向かう……ではなく、分厚いフランス文学の教科書を下敷きに、授業で書き損じたしゃくしゃのルーズリーフに向かう足立は楽しそうな表情をしている。ペンをさかさかと動かし、机に座っている俺を描いているらしい。 「タバコを吸っても?」 「OK、でも、灰は落とさないでよ。ここは教室なんだか

      • ピクチャー・パーフェクト

        空から雪が降ってくるその様を真下から眺めていると、気が遠くなるような気分だ。 最初は目の前に降ってくる雪の粒の数を数えたりもしていたんだけれど、見る間にその数は膨大なものとなりすぐに計測不可能となった。雪が顔の凹凸に沿って積もり、皮膚感覚はもうどこにも見当たらない。数時間前に逃亡してしまった。だからといって今更掌でどけようとも思わない。もしかしたらこのまま俺は雪に埋められていくんじゃないか、とさえ思う。これも生き埋めの一種なんだろうか。 数十分に一人の単位で俺の前を通り過ぎて

        • 5分後に涙のラスト

          「蝶は羽ばたいたか」(「5分後に涙のラスト」収録)河出書房新社様 エブリスタ様で開催された、まぐまぐ様とのコラボコンテストにて、佳作を頂いた作品が一編収録されています。短編で、BLではなく、普通の男女のお話です。 お題は「○年後の私からメールが届いた」でした。 個人的にはとても悔いの残る作品だったのですが、光栄にも素晴らしいお話の仲間に入れて頂いてしまいました……。 もっと精進します。

        ファーザー・アロング

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          4本
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          7本

        記事

          泣かないでカレン

          信じてくれなくてもいいけれど、俺は君だけには、 決して嘘はつかない。 鉄の味。鼻に抜ける生々しいニオイ。この感覚はいつぶりだろうか。子どもの頃、仲の良かった友達とひどい喧嘩をしたことがあった。きっとその時以来だ。 「………痛い」 一人、声に出して言ってみたら、ひどく空虚だった。殴られた頬は熱くて、切れた口の中は大惨事。 ああ、どうしてこんなことになったんだっけ。はやく口を濯げばいいのに、冷たいフローリングに寝そべったまま、俺はぼんやりと天井を見つめていた。何秒、何

          泣かないでカレン

          カラフル症候群

          「そこからは、何が見えるんだ?」 俺がそう言うと、郁弥は黒目だけを動かして俺を見た。大抵において主語やら述語やらがすっとんでいる俺の言葉をよく理解してくれるものなんだが今回はそうもいかなかったようだ。 「どこからだい?どこから?」 「そこからだ、お前が、今、立っているその位置から」 「ここから?南が見えてるものと同じさ。パン屋と、コンビニと、横断歩道」 「バッカ!そういうことじゃねえんだよ」 郁弥の世界がどんなか、俺はしらない。 だってお前は、私より10センチ

          カラフル症候群

          手品師は口上で愛を囁く

          「手品師は口上で愛を囁く」2015.10 イラスト・小椋ムク先生 大洋図書様 SHY文庫 エブリスタ様で開催された大洋図書様主催の「BL文庫大賞」にて大賞を頂いた作品の書籍化です。 とても拙く、まとまりのないぼんやりとした長いお話だったのですが、光栄にもデビュー作となりました。 たくさんの方々に支えられて出来上がった一冊です。 また、いつか続きやスピンオフを書きたいなあと思えるほど、大好きなお話です。

          手品師は口上で愛を囁く

          小鳥は愛を食らう

          「アレックス!」 そう呼ぶと、オックスフォードストリートを歩いていた二人が同時に振り返った。おかしい。僕は一人の名前しか呼んでいないというのに、だ。 「お前は振り返らなくていいんだよエリッサ。僕はアレックスを呼んだんだ」 「なによエドガー、アンタの滑舌が悪いんじゃないの?私の名前に聞こえたわ」 「お前、耳が悪いんじゃないのか?」 「あははは」 「おい、アレックス、笑うな」 「あ。アレックス、これ持って、次は私あのお店みたいの」 「はいはい」 今日はアレックス

          小鳥は愛を食らう

          ユーフォリア

          「ユーフォリア」2015.9 電子書籍投稿サイトupppi様にて、2014年8月から開催された第2回upppiホラー小説コンテスト『ぷちほらー』にて、大賞を頂いた作品が掲載されています。 広瀬コウ様のステキな表紙が、私のお話のイラストになっております。 私のはそんなに怖くありません(笑)! 多幸感にあふれた、ひんやりした恋のお話です。 ※ボーイズラブではありません。 Renta!様 https://renta.papy.co.jp/renta/sc/frm/item/

          ユーフォリア

          みえる、みえる。

          その二枚の硝子板はとにもかくにも魅力的。 ないものねだりは人の世の常。 俺は格好わるい。 「先輩それ、見えてるんですか?」 その言葉は今の状況にはひどく似つかわしく、先輩はまるで鳩が豆鉄砲をくらったような顔をした。外した眼鏡を持った手は、宙に浮いたままだ。 「なに、突然」 「眼鏡」 「ん?」 多分、自分なりのグット・タイミングを掴んで、俺をフローリングの床に押し倒したのであろう先輩は、段取りを崩されて少し戸惑った表情だ。まぬけ。折角の端正な顔立ちが台無

          みえる、みえる。

          歯磨きしましょ。

          「さあ、即刻歯を磨いてもらおうか」 これは玄関を開けた瞬間の、君に対する僕の洗礼だ。 「それはなんなの、恒例化しつつあるね」 「前に約束したろう、酔っ払い」 「だめだあ、僕はたいてい、いつも酔っ払いだから」 君の話なんて、いつも話半分にしか聞いちゃないのさ、と、 リンジーは眼鏡を外し、ぐりぐりと目元を拭った。おい、なんだ、今のは聞き捨てならないぞ、と言おうとしたところで、リンジーの身体が大きくよろけた。僕はそれを支え、大きく溜息を吐く。 すると、酒に酔って気が大

          歯磨きしましょ。