世界征服~明日汰と吾郎~第001話

 アニメ“世界征服~謀略のズヴィズダー~”の二次創作小説です。
 投げ銭方式ですので今回の第001話は最後までお読みいただけます。
(第002話は次回のアップとなります。過去作品リストはこちら
 本作はテレビ放映版を参考にしていますが、必ずしも全ての設定が原作通りというわけではございません。
 また二次創作という性質上、原作をご存じの方に向けて書きましたので外見等の描写や説明は省いております。


世界征服~明日汰と吾郎~第001話

 シャワーの飛沫は少女の身体で一つの川となり、なめらかな曲線を伝って床へと流れ落ち、排水溝へ吸い込まれていく。
 国際的秘密結社ズヴィズダーに身をおく少女にとって、自分の自由にできる時間は存在しない。家事手伝い、クルクルへの餌やり、テレビの視聴──世界征服のために少女がやらなければならないことは山積みだ。
 緊張感に包まれた日々の中で少女がくつろげるのは唯一、一人でシャワーを浴びている時だけなのだ。
 それだけに少女が憩いのひとときに懸ける想いは尋常ではない。
 シャワーの温度は四二度。熱めのお湯が、かたい肩をほぐしてくれる。
 ボディソープは三種類を用意している。
“ダヴ・ボディウォッシュ・プレミアム・モイスチャーケア”は詰め替え用なら三八〇グラム四つがセットで一千百円。値頃感から常用している。
 次に“ジョンソンベビー・ベビー全身シャンプー泡タイプ”。赤ちゃん用のボディソープだけに肌触りがよく、穏やかな気持ちになれる。
 ここぞという時に使うのが“ドクターブロナー・マジックソープ・ローズ”だ。二三六ミリリットルだと千円だが、九四四ミリリットルはアマゾン通販で二千円。この価格だとズヴィズダーでは必要経費に認められず、少女はしかたなく自身のサイフから出している。それだけに前回購入したグリーティの香りが好みに合わなかった際には泣く思いであったが、今回のローズの香りには満足している。
 シャンプーとリンスは二セット。
 最近のお気に入りは“アロマキフィ・モイスト&エアリー”のシャンプーとコンディショナーで、海外アロマセラピーメーカーが手がけた製品だけに日本製にはないイランイランの香りが落ちついたひとときを与えてくれる。できれば頻繁に使いたいところだが、これも自費購入なので週に一、二回が限度である。
 普段使う“ラックス・スーパーリッチシャイン”のシャンプーとリンスはアロマキフィの半分の価格で、ズヴィズダーも経費として認めてくれる。香りの評判もいい。
 少女はひとしきり身体を温めると、ラックス・シャンプーのボトルに手を伸ばす。この後に出かける予定があるので当たり障りのない香りの方を選んだのだ。
 頭から洗い始めるタイプで、リンスは身体を洗ったあとに使うのが少女にとってのルールであった。
 ボトルを手にした少女が首を傾げる。
 軽いのだ。まるで空のように。
 ボトルを左右に振ってみる。
 少し残っていた。お湯で水増しすればまだ何回かはごまかして使えそうだ。
 だが少女はそれを許さない。ラックスを使うと決めてボトルを手にした以上、いまさらアロマキフィを使うのも正義ではない。
 少女は、シャワーを止めた。
 まっさらなバスタオルで肌を拭うと洗面台に置いていたメガネをかける。
「もー。使ってもいいですけど、なくなったら、そういっておいてくれないと困ります」
 少女──ロボ子は愚痴をこぼしながら青いメタリックボディに灰色のスウェットをまとうと、秘密基地を出てスーパーマーケットのサミットストア・西ウド川店へと向かうのであった。

世界征服~明日汰と吾郎~第002話(次回) へ続く


 お読みいただきありがとうございました。
 とりあえず第010話くらいまでは続きますが、それ以降も続くか否かはスキやコメント、投げ銭次第となっております。

 投げ銭していただけるととても嬉しいですが全何話になるか未定で、もし途中打ち切りにならず最終回を迎えると100話以上になりかねませんので投げ銭してくださる方は毎回ではなく適度に間をおいてくださるとありがたいです。

(以降、ご入金いただいてもテキストはございません)

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