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散歩日記




人の気配のない建物から聞こえるダクト音が不思議だった。
ダクト音がするのだから誰か住んでいたと思うのだけど、人が出入りしているのを見たことがない古いアパートだったから、なんとなく人が居ないような気がしている。でもたぶん居る。

特殊な土地で隣近所は別荘ばかりだった。
人が居ない方が当たり前で連休などになると明かりが灯る。
少し離れると連休すら来ていないような、扉に苔が生えたりしている家もある。

川の向こう側にはどの道からどうやって入るのかわからない家々があり、石垣の向こうには人の気配がないのに煌々と光る何かの施設のような建物がある。
オープンワールドだけど入れない場所にある風景のようだった。

枯れた木々の向こうに今にも朽ちようとしている家があり、道路沿いに立てられた看板には真っ赤な文字で売地と書かれている。
誰かが買うときにはあの家は潰されるのだろう。

隣の土地は一度更地になり、小綺麗な木が改めて植えられていた。なんか変なの。

人の気配の無い建造物を見るのは楽しい。
突然人類が滅んだみたいで。

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