岩渕 想太

バンド Panorama Panama Town、ボーカル。福岡、北九州の商店街生まれ…

岩渕 想太

バンド Panorama Panama Town、ボーカル。福岡、北九州の商店街生まれ。餅屋の息子。

マガジン

  • 毎日note (2020年10月)

    毎日noteを更新する試み。短いコラムから詩のようなものまで。16日で頓挫しました。

  • Who am I???(三宅正一対談)

    ライターの三宅正一さんと対談しながら、自分の生い立ちについて振り返る企画です。生まれてからバンドを組むまで。

  • 高岩遼対談

    SANABAGUN.やTHE THROTTLEのフロントマンとしても活動する、浪漫溢れるミュージシャン高岩遼さんとの対談です。地元の話、どうやって色んな文化に触れ合ってきたかって話。夢と悔しさの話。

  • 「情熱とユーモア」発売記念メンバー対談企画

    1st full album「情熱とユーモア」発売記念にメンバーと対談しました。各曲に関して、それぞれの思うところ爆発。

最近の記事

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私はなぜ印鑑を失くすのか

よく印鑑を失くす。執拗に失くす。マネージャーに今日は印鑑を持ってきてくださいと言われ、ぎくっとする。前回は何で持ち出したんだっけ、記憶を巡る旅が始まる。あの日着てた服、あの日持っていた鞄、帰ってくるなり鍵を置くトレイ、とりあえず重要なものを入れておく癖のある引き出し。あらゆるところを探すが見当たらない。切羽詰まった時の探し物は、探せば探すほど苛立ちが募る。ここにもない、そこにもない。ありそうだと期待をかければかけるほど、なかった時の落胆は大きい。私は不在を辿る冒険家。大概の物

    • とにかく石を投げる

      FM802のDJ深町さんにお呼びいただき、Tempalayの藤本夏樹さんと3人で座談会的な収録をした。内容は「国際女性デー」に合わせて、自分達が持ってるジェンダー意識や、社会に対する目線、その中で自分らしく生きるということは如何にしてなし得るかという話。決して小難しい内容じゃなく、カジュアルに3人で思うことを話した。その時、気づいたことと、そこから考えたこと。 話は迂回しながら、男同士で喋ってる時の猥談のようなもの、例えば「〜(女性)を抱けるかどうか」みたいな話題が始まった

      • 暗渠愛好記

        暗渠が好きだ。 暗渠とは蓋をした河川のこと。元々、川が流れていたけれど、その上を舗装して通れるようになった道や空間のことを指す。と僕は勝手に定義しているが、人によって、曖昧なところだ。川と湖の定義が人によって曖昧であるように、暗渠も人によってバラバラの捉え方をしているように思う。 街を歩いていて、ここは暗渠かな?と気づく瞬間がある。 つまり、この道は元々川だったんじゃないだろうかという推測のようなもの。その推測の精度が、暗渠を見れば見るほど上がっていく。やけにマンホール

        • いつかの日記

          落ちてる千円を届け出る勇気もあるけど、アスファルトに落ちてる一円を拾う勇気もあると思う。 歯磨き粉を買って帰ろうと毎日考えてるのに、家を出る時には忘れていて、ギターコードを押さえるときより力を入れて歯磨き粉を絞り出す。そんな風にして毎晩気合を入れて、たかが300円のチューブの前で悪戦苦闘する。絞り出てきた歯磨き粉は、驚くほど白くて、生活の中で目にする白色の中で最も白い。 毎日何かしらのメールが届き、毎日何かしらのポイントが失効する。中には、自分で稼いだ覚えのあるポイントも

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        私はなぜ印鑑を失くすのか

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        • 毎日note (2020年10月)
          16本
        • Who am I???(三宅正一対談)
          3本
        • 高岩遼対談
          3本
        • 「情熱とユーモア」発売記念メンバー対談企画
          7本

        記事

          あ、そのマスにも駒置けるんや

          アートの本質ってか、俺が「アート」と表されるものから受け取ったものは全て「あ、そのマスにも駒おけるんや」に還元されると思っている。 例えば、小津安二郎の映画を観て、「あ、その場所にカメラ置いていいんや」と思うことや、The Strokesの音楽を聴いて「あ、こんなにスカスカなのに美しいんだ」って思うこと。そんなことを思うことのために俺は「アート」と呼ばれるものが存在していると思っている。 こないだ読んだ「無言板アート入門」という本がある。「無言板」ってのは即ち、経年変化や

          あ、そのマスにも駒置けるんや

          「なんか、バスの待合室みたいやな」

          「なんか、バスの待合室みたいやな」 大見が言った。 大見はサポートドラムで、場所は名古屋のライブハウス。椅子が等間隔に置かれた出番前の楽屋は、座れる席がないほど混み合っているのに、水を打ったようにシーンとしていて、確かにバスの待合室みたいだった。 バンドマン同士は、出番前多くの話をしない(例外は勿論あるけれど)。皆、ライブを控えて、静かに各々の時間を過ごしている。 バスの待合室。 出番の時間が来ると、バンドごとに下の階にあるステージに降りてゆく。その時になって初めて

          「なんか、バスの待合室みたいやな」

          展示「街ゆく顔たち」

          カメラマンの上原俊と二人で「街ゆく顔たち」という展示をします。 「街ゆく顔たち」 開催期間:2022年2月1日(火)~2月13日(日) 会場:歌舞伎町人間レストラン 入場料:チャージ500円 1オーダー制 岩渕が街を歩く人々に対して想像した物語と、実際に聞いた物語。 上原が捉えた「街ゆく顔たち」の写真たち。 【概要】 今日も「街ゆく顔たち」の準備をしている。昼過ぎにカメラマンの俊と合流する。街中で気になる人を見つけ、その人が何をやってるかひたすらに想像する。鏡に向かっ

          展示「街ゆく顔たち」

          歴史の上に立っとるわ

          バンドとしては2年ぶりに全国各地を回った。北から順に、札幌仙台名古屋神戸広島福岡。色んな街に行った。ライブが終わると、すぐに片付け、マイクのウインドスクリーンを洗い、ギターをしまい、次の街へ向かう。機材車に揺られながら、明日のことを考える。窓の外の星を見上げるなんて歌にあるようなことはしない。ただ、疲れ果てて寝ているか、運転しながら前の車だけを見ている。2年前には当たり前だった、日々の風景。 よく行く街には行き慣れた店がある。仙台の寂れた中華食堂、広島のサインに埋め尽くされ

          歴史の上に立っとるわ

          「無視されてるやん」

          先日、よく行く銭湯の脱衣所で髭もじゃのおじさんが壁の向こうの女湯脱衣所に向かって大声を出していた。 「バスタオルあるかー?なかったら貸すぞー」 壁の向こうからは一向に返答がなく、おじさんは何度も呼びかける。 「バスタオルあるかー?」 「おい、聞こえてるかー?」 「もう俺出ちゃうぞー!」 「いいんだなー?」 段々と声を荒げていくおじさんと、二人きりで同じ脱衣所にいた私はどうしようもなく気まずかった。服を一枚一枚着ながら、どうか壁の向こうの奥さん(だろうか)が早く応答して

          「無視されてるやん」

          パン屋やったらいいな

          家の近くに内装工事中の建物がある。毎日ランニングする時に中を見るのだが、通りから向かって右側半分は厨房のような雰囲気。大きな机がどーんと置かれ、今は恐らく換気扇系統の工事をしている。左側半分には四方に三段ほどの棚があり、奥の方には冷蔵ショーケースのようなものも置いてある。中央には茶色のカウンターがあり、ウッディな雰囲気。通りと、建物の中を隔てるのは一枚の分厚いガラス。工事中の建物の全貌が見渡せるような造りになっている。 前に何があったかは、覚えていない。知らないお店か、オフ

          パン屋やったらいいな

          Rodeoについて、最近について

          新曲「Rodeo」をリリースしてから、2週間が経つ。 「Rodeo」について、語り尽くせなかった部分をいくつか話そうと思う。 曲 最初にデモを作ったのは、2020年の1月頃。 喉の手術前、沢山デモを作った中にあった曲だった。 できた時期としては「On the Road」と同じ、それより先か。 自分なりにかなり手応えがあって、スタジオに持っていって聴いてもらう。 メンバーの反応は正直そんなに良くなったけど、合わせて演奏するにつれ、どんどん面白さが増していく。 手術後、再び

          Rodeoについて、最近について

          16.Wi-Fi

          街中でスマホを使っているとたまに電波が途切れる。 あれ、さっきまで繋がってたはずなのにおかしいぞ、と右上のマークを見るとやっぱり、コンビニなどにある弱いWi-Fiを拾ってしまっている。 野良のWi-Fiをやたらめったら拾うんじゃない。 スマホにもしもしつけができたら、そんなことを考える。 「お前、付き合うWi-Fiのことは考えなきゃいけねえぞ。誰とでも付き合っていい訳じゃない。いいか、世の中には良いWi-Fiと悪いWi-Fiがあって、お前はこれからそれを選べるようにならな

          15.夕焼け

          引っ越してちょっと経つが、 この家の決め手は夕焼けだった。 決まった時間になると、西向きの窓から 爆弾みたいな夕陽が容赦無く降り注ぐ。 その時、俺がコーヒーを飲んでようが、 ノートに言葉を書き込んでようが、 歌ってようが、叫んでようが、 平等に、とにかく平等に、 夕焼けが刺さる。 部屋の中が支配される瞬間、 その時は誰も夕焼けに勝てない、 勝とうともしない、圧倒的な 占領、不条理、非常識 日没までの数時間、平伏しながら俺は、 何くそ、やってやろうと思う。 コールド負けし

          15.夕焼け

          14.visitor

          visitor 今日だけは俺はvisitor 家の隣の路地を観光する 渋谷の交差点の写真を撮る 丁寧に置かれたコーヒーカップも 照れながら笑う君の顔も まるで初めて出会ったかのように撮る visitorは歩く 知られざる街角へ 知られざる夕焼けへ 知られざる洋食屋の 知られざる排水溝 知られざる家の知られざるベッドに 今まさに初めて寝転んだ! visitorとしての夜が更ける 知られざる月が 知られざる沈黙が 知られざる排気ガスが ありふれた朝に回収されないよう願いな

          13.制作

          ここのところはずっと制作をしている。 昨日noteを書けなかった。 キングオブコントも観てないからさ、許してほしい。 音楽を作った褒美に音楽を聴く時、 音楽の素晴らしさを知る。 1日が誇らしくなる。 音楽は思想の奴隷にしちゃいけないし、 思想を音楽の奴隷にしちゃいけない。 たまに、言いたいことや、やりたいこと、 こうありたいって理想や、縋りたい方程式のようなものが、 自分の中で音楽を凌駕する瞬間がある。 たまにってか、俺は結構やってしまう。 自分で決めた枠の中で必死こ

          12.炎上

          炎上炎上って言うけど、実際は火種もないし、 怒ってる人もそんなにいない。 燃えてないし、集まってる、に近い。 集合してるだけのように見える。 怒ってる人。 それを見る人。 それを見る人を見る人。 が何層に集まって、中心にはほとんど何もない。 それが渋谷みたい。 燃える言葉と、燃えない言葉って線引きは危険だと思う。 ゴミを仕分けするように、言葉を仕分けしちゃいけない。