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6.月の裏側【「情熱とユーモア」発売記念メンバー対談(浪越編)】

しばらく(と言っても1週間くらい)空いてしまいました。『情熱とユーモア』発売記念対談。皆さん、アルバムは聴いていただきましたか?アルバムについて、より知ってもらうため、メンバー一人一人とざっくり対談する企画です。

今日は、6曲目「月の裏側」について。作曲した浪越との対談です。アルバムの制作でいうとかなり終盤に完成したのがこの曲。浪越のソングライティング力も「適当」の割に光ってるし、歌詞も言いたいことが詰まり切っており、キレたものが書けたと思います。


・オクターブへのこだわり

岩渕「これも結構最後の方にできた曲ですけども。」

浪越「これはぶっちゃけ言うと前作ってた、『マジカルケミカル』とか『ねえ、東京』で自分がやりたかった…」

岩渕「オクターブ?

浪越「そう!オクターブ好きやねんよ。オクターブを自分のクセとしてより強く出していきたいなと思って。それだけの曲なんよ。オクターブってすげえ面白い。一音なのにかっこいいし。

岩渕「確かにね。浪越昔言ってたもんね。音が飛ぶから、ギターっぽくなく聴こえるっていうね。

浪越「そうそう。でも自分の奏法にもあってて、解釈によってはある意味ロックでもあるんよな。ロックって衝動が大事やけど、一つのフレーズの強弱だけで表現するのってかっこいいなって。『マジケミ』もそうやけど、この曲もそうで。そこをどんどん突き詰めていきたいなって思ってる。今聴いてもらってる僕のデモもそんな感じなんやけど。」

演奏の強弱から、一つのフレーズで曲を作っていく話は前回沢山しました。

岩渕「なるほど、それはすげえわかるわ。」

・打ち込みへの挑戦

浪越「製作の時ほんま追い込まれてたからさ、ギターでやりたかったんやけど、車の中でやってたから、とりあえずの音色でやってたものが、意外といいやんってなって。なら、今回ギターあんま弾かずにやってみようってなったのが今の形で。」

岩渕「そっか、ある意味車だったのが幸いしたかもな。」

浪越「それって現代的な音の作り方よな。でっかいスタジオでギター弾いてじゃなくて、ワンルームで全部終わっちゃうっていう。今回は自分の中であんまイメージできずに作っちゃったけど、こういう打ち込みメインの曲はどんどん作っていきたいなと思ってる。

岩渕「それはいいね。この曲から始まるものはあると思う。」

浪越「モンスターハンターで言うとさ、骨から研いで成長させていってる剣は『Top of the Head』みたいなもんやけど、今回のは、別のモンスターから作った強めの武器みたいな(笑) 武器が増えていってるよな。」

岩渕「それはすげえわかるわ(笑)」

浪越「でも、この曲の作り方はめちゃくちゃやったな(笑) 適当っていうか、その場その場で作ってった感じする。ギターも適当に弾いたもん。」

岩渕「でも、なんとなーくの予想やけど、パノパナめっちゃ好きな人、コアな人はこの曲めっちゃ好きって言いそう。ってのも、適当やからさ。いい意味で雑っていうか、それこそ『Top of the Head』的考え方で、作ってった曲やん。最後生ドラムになるのもその場の思いつきやったし。」

「思いつき」の持つパワーについてはここでタノと話しました。

浪越「確かにな。作り込みすぎることとのバランスって難しいよな。」


・月の裏側ってどこにある?

岩渕「結構この曲、ラップをRHYMESTERっぽくした。自分の一番好きなものに回帰したというか。」

浪越「なるほど。この曲作った時、メロ入れて欲しくもないって思ったから、ラップで面白くしてほしいってのだけ伝えて。あと、大体のキーの感じと、雰囲気伝えたら、『あ、それRHYMESTERやね』って岩渕に言われた記憶がある。RHYMESTERめっちゃ好きなのが最近伝わってきた(笑)」

岩渕「そんなんあったなあ。『待っとけ 新しい時代』って歌詞があるけど、あそこのハモり方がRHYMESTERなんよな。普通に同じ音程のダブルを入れるんじゃなくて、ちゃんと和声でハモるっていう。あれはバリバリ意識してる(笑) あと、歌詞一番最後に書いた曲でもあるんよな。」

大好きRHYMESTER、ダブルの入れ方に注目。

浪越「あーそっか。『月の裏側』ってある意味すごい分かりやすいよな。アルバムの意味とか歌詞の意味考えて聴くと一番ポップやなあって思う。最初に全部言っちゃってるもんな。」

岩渕「確かにね。『月の裏側 何があるかわかんない』ってね。俺もこの曲はかなりよく書けた歌詞だと思う。『自分の中に持ってるコアな部分が大事だから、それを捨てなくていいんだよ』ってメッセージがポップに書けたと思う。

浪越「そうよな、ポップよな。それに関して聴くと『真夜中の虹』って存在するもんなん?」

岩渕「あれって俺の好きなカウリスマキの映画からとってるんやけど、その映画の主人公が散々な目に遭って、国外逃亡を図る映画で。で、最後に真夜中海を渡ろうとする船に乗り込んだ時に、『Over the Rainbow』って曲がかかるっていう。だから、真夜中に虹はないんやけど、絶望の中にある僅かな希望というか。真っ暗な中にある光というか。」

浪越「なるほど。ないんや。」

岩渕「でも、俺が地元の商店街について思う明るさも同じで。この街がもう一回盛り上がることは『ほぼない』けど、それが『真夜中の虹』なんだよなっていう。

浪越「それはいいね。『月の裏側』も『真夜中の虹』も、別のものに意味を与えて、そこで情景が浮かぶから芸術的やなーって思う。

岩渕「なるほど。この曲は、浪越のデモのスネアのリバーブ感がすげえ無重力っぽいなってイメージから、まず月が出てきて。で、元ネタは、高校の頃に遡るんやけど。Pink Floydの『狂気』借りて聴いた時に、洋題が『The Dark Side of the Moon』って書いてあって、なんでこう書いて『狂気』って訳すんやろって不思議に思って。それで、調べたら英語で慣用句として、月の裏側は『狂気』を意味するんだって知った時に、なんてかっこいい言い回しだって感動して。

浪越「表現としてかっこいいよな。」

岩渕「人に出せないものって『狂気』って言われるけど、『狂気』ってすげえ美しくて。それを姿を変えて表現するのが芸術やと思う。

高校生の岩渕が感動した『狂気』のジャケット。完全に後付けなんですが、『月の裏側』で「ショッピングモール」って歌詞の裏側に、「チャリーン」っていうレジ音を口でやってて。で、このアルバムの「Money」って曲でも、レジの音がサウンドコラージュ的に使われてる。ちなみに、『情熱とユーモア』の全録音の最後に録った音が「チャリーン」って言う俺の声で、沢山売れて儲かるってことじゃね?って盛り上がりました。


6回目にもなると、メンバーの話同士が繋がってきたりして面白い。俺としては、この曲、バンドとして新しいことやってんだけど、「昔のパノパナ感」が沢山あって気に入ってる曲です。

次回は、7曲目「真夜中の虹」これまた語ること多そう。

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