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2024/03/14 ヴェンダースの撮る三浦友和の横顔

思い立って朝、白水大池公園のまわりを走った。
公園に行くまでは膝に違和感があったけれど、軽く走り始めると脚はよく回った。

自宅に戻って時計を見るとちょうど12時で、急いで何か食べて映画館に迎えば13:30の「パーフェクトデイズ」に間に合うはずだった。
川っぺりのベンチで途中買ったパンをほおばり、アップルパイは余計だったような気持ちで高宮通りを真っ直ぐ自転車で走る。
13時過ぎに映画館に着いてチケットを買うと今日は15時からと言われた。

すっかり馴染みのなくなった大名あたりをウロウロして、ソファが快適だったカフェに座ると記憶より硬い。
トイレへのドアを開けるとそこは殺風景なロッカールームで、そのまた奥の扉にトイレは出て左←と貼り紙がしてあった。
映画が始まるまでの間、村上春樹の「1973年のピンボール」をゆっくり読み進めて、だんだんこの作家の魅力が分かってきた。

映画は高倉健みたいな演技をしている役所広司が清掃員のニコニコした少し気忙しい毎日のルーティンを見せてくれて満足だった。
私が邦画を好きだった90、2000年代の邦画みたいでヴェンダースの頭の中は何が入っているのだろう。
石川さゆりが広司に色目をつかう嫌な飲み屋のママ役で、客のギター伴奏で朝日の当たる家を歌い始めてびっくりし、それだけで私には映画鑑賞料の倍の価値があった。
ヴェンダースの撮る三浦友和の横顔は見たことのない友和で、それでも話し始めるといつもの友和で、見たことのない領域と馴染み深い領域を行ったり来たりしている。

主人公が本を読む時間の多かった映画からの帰り道思わずブックオフに入ってしまう。
買った本についていちいち一言コメントくれる古本屋店員いいな。

夜は友人たちと送別会を兼ねたささやかな飲み会になり、そこそこ気の滅入る話をされたりしたりしたが、何でも真摯に酒の肴の与太話にしてくれる彼らのやり口にずいぶん救われた。
朝走った後のポカポカと心地よい下半身の熱は夜寝る時まで続いた。

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