オィディプスとアンジェラ Ⅸ
ア ン お待たせしました 大丈夫でしたか? (リースに気づき) あっ
それはどうなされました
ディプ 島の娘が私にくれた 名前も何も言わずにな・・・
ア ン 包帯を取る方が早くに慣れると医官に言われたもので・・・でも
傷が目立つし・・・仮面でもと思っていたのですが・・・これは
いいですね
ディプ 確かに仮面もいるが、日常ではこれでいい
ア ン その娘を必ず見つけ出してお礼を何かさせて頂きましょう
ディプ うん よろしく頼む・・・それで何か良い聞き込みがあったか?
ア ン はい ありました 「KAGURA」一座が数日後の夜 市場の広場
で公演をするそうです
ディプ それはほんとうか! 無からの出発は大変だと感じていた・・・
勿論私たちを「KAGURA」が受け入れてくれるとは限らないが
・・・ 公演の終了後座長のYAKAMOTiに話をしよう
ア ン はい しかし一座はすぐにまた次の島へと旅立つ予定と聞きまし
たむしろ公演前にお話をされた方が良いのでは・・・
ディプ 先か後かはともかく・・・「KAGURA」に認めてもらうには何
かしら二人で出来るものを見せねばなるまい 先だとすると
3日間の間に私達の力量を認めて貰うためのをカタチ考えなけ
ればならない
ア ン そうですね とりあえず私が笛を吹き ディプが踊りながら鐘の
音を叩きだす小さな太鼓のようなものを踊りながらリズミカルに
音を入れていくというのがまずは無難なカタチかと存じますが
・・・・・・
ディプ うん・・・なるほど・・・確かに・・・うん
ア ンしっくりきませんか?
ディプうん・・・それだけでは絵にならないなぁ・・・何か根本的に間
違っているような気がする・・・なんだろう?
そうかわかった・・・物語だ序破急の物語・・・そのカタチや舞
が一つの 物語を開示しなければ・・・即興の演舞はすぐに飽きら
れてしまう
ア ン自身の物語を語るか・・・全くの虚構の物語のどちらかですか?
ディプ 悲劇も喜劇も紙一重・・・いや違う・・・こんな次元で考えてい
ては的を外す・・・だが乾坤一擲・・・その場で考えられること
を懸命にやる他はなし
ア ン まあ 今日は宿でゆっくり休みましょう ご案内します
ディプ わかった 行こう
夢を視た
TUBUYAKIが声を顰めて囁く・・・オイディプスよ半盲目の世界を彷徨い旅芸人として市井の片隅で生きていこうというその道は・・・ほんとうにこゝろの奥から望むカタチなのか?そうではあるまい・・・一時その世界に耽溺して、それから又新たな道を歩むつもりであろう・・・果たしてそれはいいことなのかな?
王様気質が抜けないのデハナイカ?
TUBUYAKIは妃であり母であったイオカステと交わった夜から・・・その都度その拵えを変えて登場する 彼?自身が役者のごとく夢枕に現れる 今夜はとても小柄な白髪・白装束の異邦人として登場してきた 顔の表情は柔らかな微笑みで満たされていた
オイディプスは抗った・・・またあなたか 盲いた私はもう王でもなんでもない 盲目のただの流れ人だ・・・それでも生きて行くためには生活の方図を考え無ければならない・・・僕僮アンジェラと二人で生きていくのだ邪魔立てをしないで下さい
TUBUYAKIう~む 筋は通っておるがのぅ・・・如何にも腑に落ちぬ・・・お前も深い処で違和を感じている筈だが・・・アンジェラと共にという幟を掲げてナニヲスル?
オイディプス 何を?何もしません 只々生きるだけ 生活をするだけ・・・日々の勲しに喜び 感謝する 只それだけ 其れが全て・・・
TUBUYAKI なるほど そこまで言い切るならば今の今は大丈夫じゃろぅ
だがいつかこゝろの奥底で隙間を見いだすであろう その時が無いことを祈ルガノオゥ
オイディプス ならば早々と退くが良い お前が来ると夢見が悪い
TUBUYAKI 良かろう サラバジャ
Ⅹに続く
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