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口腔機能発達不全症とは

先週はいわゆるお口の老化「口腔機能低下症」についてご紹介しましたが、今週は逆に発達が不十分な「口腔機能発達不全症」についてご紹介します。
口腔機能発達不全症は、先天性の疾患などがない健常児に食べる、話す、呼吸するなどの機能が十分に発達していない、もしくは正常な機能を獲得できていない状態を指す疾患です。この場合、歯科や耳鼻科などの専門的な支援が必要になります。
まずは食べる機能不全。食べるという行為は食べ物を認識して、口に運び、噛み、舌で丸めて飲み込むという一連の流れから成り立っています。この流れをスムーズに行うことができない原因が口の中にあるのかもしれません。
次に話す機能不全。話す機能の中でも、正しい音を出す機能は、一般的には5〜6歳頃に完成すると言われていますが、カ・サ・タ・ナ・ラの各行の音が正しく発音できていない場合は、歯科、耳鼻科の両方の視点で原因の究明と支援が必要かもしれません。
最後に呼吸機能不全。鼻呼吸は、身体にとって最善の呼吸方法とされています。吸った息が鼻腔を通ることで、湿り気のある暖かい空気が肺に届けられます。一方で、吸う息が口を通る口呼吸には、歯科的に好ましくない影響が多く生じます(歯列の乱れ、顔面の形態異常、虫歯の誘発、歯周病の憎悪など)。
次のチェックリストでまずお子様に口腔機能発達不全の兆候があるか確認してみてください。

口腔機能発達不全症チェックリスト

1つでも該当する項目があれば、まずは一度お近くの歯科医院で診てもらってください。これらの機能不全にお子様が“異常”として認識することはほとんどなく、最初に気付くのは普段から一緒に生活している保護者であることがほとんどです。この機会にお子様の口元に注目してみてください。
続いて、口腔機能発達不全症の改善法をいくつかご紹介します。
まずは「あいうべ体操」。あいうべ体操は歯科分野ではとても重宝される体操です。お口の乾燥対策のために唾液を出す効果、先週ご紹介したお口の老化「口腔機能低下症」の予防効果、口呼吸を鼻呼吸に改善する効果など様々な恩恵を受けることができます。さらに、お口だけでなく脳に近いところにある顔での血流が良くなり、認知症予防の効果もあると言われています。

あいうべ体操

先週もご紹介しましたがとても大切な運動なので改めてやり方もご紹介します。まず「あー」と口を大きく開く、「いー」と口を大きく横に開く、「うー」と口を強く前に突き出す、「べー」と舌を突き出して下に伸ばす、を順番に10回繰り返してください。これを朝昼晩に10回ずつ、計30回繰り返すことでお口周りの筋肉を鍛えることができます。痛くない範囲でできるだけ大きく口を開けることを意識してやってみてください。またやる時はお子様だけでなく、保護者の方も一緒に楽しく行うようにしてみてください。
2つ目はガムトレーニング。1 回 20 分 550 回噛むことを目標にすると良いと言われています。奥歯を意識して左右均等に噛みます。お奨めのガムは「ポスカF」、砂糖不使用でキシリトールが配合されていてむし歯予防に効果があるガムです。ただし、ガムトレーニングを行う際は、3歳半〜4歳を目安に、お子様がガムを飲み込まないことを約束できるようになってから始めるようにしてください。ガムの飲み込みは窒息の危険や、たくさん飲んでしまって腸閉塞になってしまうリスクがあります。
3つ目は「うがい」。

うがい

うがいと聞くと簡単にできると思われがちですが、最近はうがいができないお子様も増えているそうです。こちらは3歳くらいから始めてみてください。まずは、口の中に水を溜めて、数秒間そのままキープしてから吐き出しましょう。途中で口からこぼれないように注意してください。口の中に水をしっかりと溜められるようになったらブクブクうがいをしてみましょう。ブクブクうがいも上手にできるようになったら水を口に溜めて上を向いてガラガラうがいをしてみましょう。さらにガラガラを途中で止めて鼻で呼吸を3回してみましょう。
最後は「紙風船や吹き戻し、笛ラムネ」。

紙風船・吹き戻し

紙風船・吹き戻し・笛ラムネを膨らませたり、吹いたりして遊んでみてください。最近では口笛が吹けない方も増えていて、それだけ唇を閉じる力が弱まってると考えられています。遊びの延長で鍛えられるので、気軽に挑戦してみてください。
なお、口腔機能発達不全症の治療の目的は、きれいな歯並びや正常な噛み合わせを獲得することではありません。正しい咀嚼・嚥下・呼吸を習得し、「食べる機能」、「話す機能」、「呼吸する機能」を十分に発達させることです。治療をすることで、発育に問題のある部分を正常に戻しながら、バランスの取れた顔貌と正常な歯並びに導き、お口を骨格から改善することに繋がります。指導や訓練によって必ず治るとは限らないですが、口腔機能が向上し、さらにお子さんが成長・発達することも伴って改善していくことを目指します。少しでも良い方向へ持っていけるよう、歯科医師、歯科衛生士と保護者が協力して行うことが大切になります。お子様のお口が普段から開いている、いびきをかいているなど口腔機能発達不全症の兆候があるかないか先にご紹介したチェックシートで確認してみてください。1つでも該当する項目があれば、まずは一度お近くの歯科で診てもらってください。
また、先週「お口の老化=口腔機能低下症」でご紹介したように子どもだけでなく、高齢者も口に関する機能上の問題を抱えている方がいらっしゃいます。健康な口の土台づくりは生まれてから成人するまでがとても重要です。子どもから成人へ、成人から高齢者へと人の口の中の環境は劇的に変化しますが、生涯にわたってお口のサポートをしていくためにも、若い頃からかかりつけの歯科医院を持つことが大切になります。口腔内に少しでも気になることがあればお近くの歯科医院をお訪ねください。いずみ中山歯科でも健診やメインテナンスに重点を置いていますので、お気軽にお問い合わせください。

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