謡ふ酒屋樗堂一茶/烟しての巻
日常平語
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窓のかた鼻の先迄日のさして
だぶりだぶりと汐のみち来る 一茶
名オ十二句、音響によって流体を刻み、荒潮を体感させる名残り表の〆句。
〇
だぶりだぶりと 縦書きなら「だぶりく」と。「だぶり」は「茶翁聨句集」、「樗堂俳諧集」は「ざぶり」。
汐の しお・の 干満差が激しい潮流域
みち来る 満ち・くる 満ちて来る、上げ潮(歌仙〆句の祝言として)
〇
まどのかた はなのさきまで ひのさして
だぶりだぶり と しおのみちくる
光の造形から、音響によって感性を揺さぶろうとする文台の幻影、そこには満ち来る荒潮の高鳴りが。これが、歌仙というものなのでしょうか.
〇
近代の句に
上げ汐の氷にのぼる夜明哉 子規
荒潮に落つる群星なまぐさし 蛇笏
海流ついに見えねど海流と暮らす 兜太
などが。
烟しての巻 名オ七句~十二句
秋 雜汁に下部の膳の秋の風 茶
月 秋 醍醐は今に蚊の多き月 ゝ
秋 羽織着てしばし見送るむら尾花 堂
雑 むつむつ腹は立しまうたり ゝ
雑 窓のかた鼻の先迄日のさして 茶
雑 だぶりだぶりと汐のみち来る ゝ
17.12.2023.Masafumi.
余外ながら、浅草噺。
〇 丸山定夫/井上ひさし
フランス座にいた井上ひさしさん。「一茶」の戯作があり、歌仙もなさっていました。
市に五虎いでや茶番の涼しさよ 夷斎
滝に見立てて突くところてん 玩亭
砂絵師の身の越し方を聞かされて 昌治
賽をまさぐる秋さむの袖 昭如
見わたせばピンの目ばかり田毎月 ひさし
子ども相撲のみなに手拭 夷
「市に五虎」の巻『酔ひどれ歌仙』青土社(1983)(表六句、石川淳、丸谷才一、結城昌治、野坂昭如、井上ひさし)
丸山定夫さんは松山の人。
築地小劇場の役者でしたが、浅草で榎本健一(エノケン)の庇護を受けていたこともありました。戦時下「桜隊」を結成して各地を慰問、その途次の八月六日被爆し亡くなりました。命日である8月16日は「白炎忌」。
映画「さくら隊散る」新藤兼人
「海辺の映画館ーキネマの玉手箱」大林宜彦
舞台「紙屋町さくらホテル」井上ひさし
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