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風早ハ兎文一茶両吟/門前やの巻

     03

 野梅に留ん其轡面
乙鳥の休む時にハふくらミて   兎文

歌仙三句、フル回転でジャンプアップする、らむ、て止めは三句の定式でした。

     〇

乙鳥の いつてふ(いっちょう)、燕の異名。

休む時にハ 木々や軒下にとまっているときには。(飛んでいないときには)

ふくらみて ふくらんでます、まんまるく。

     〇

 のうめに とめん
 その くつわつら

いつてふの やすむときにはふくらみて

宿をかす句を受けて、彼方より訪れて来る燕の姿を大写しにして見せていました。そのスリムな飛翔体からすれば、凡そ別の鳥であるかのように、休んでいるときは「ふくらんでます。まんまるく」と、寛政七年の写生の句があったのです。

     〇

縁からすれば、

傘に塒かそうかぬれ燕        其角
燕にしばし預ける舎かな       園女

あたりでしょうか。

ことに其角の句は、歌舞伎の鞘当の名場面、名古屋の「濡れ燕」の伊達衣装で知られていたのです。

     〇

俳諧に

ほそぼそと塵焚く門の燕哉      丈草
村深し燕つるむ門むしろ       几菫

句に

つばくろも持ち物おなじ旅なれや   次男
野に住めば流人のおもひ初つばめ   龍太

呱々の聲胸のり出して燕見る     斌雄
軒燕古書売りし日は海へ行く     修司

26.9.2023.Masafumi.

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