とっておきのお店を紹介しよう②

 ①が現役の「とっておきのお店」だったので、次は閉店してしまって今はなき「とっておきのお店」を紹介しよう。こうして交互に紹介するのがいいかもしれない。

稲毛海岸にあった自然食バイキングの店「四季こよみ」

 もとは「四季の散歩道」という、やはり自然食バイキングの店だった。
 私はその「四季の散歩道」の頃から通っていたのだが、これは熊本にある「ティア」という自然食バイキングの系列店で、その後、ティアから独立して「四季こよみ」になったと、オーナーシェフから聞いたことがある。

 自然食バイキングのレストランなんて、今では珍しくもないが、近所に最初にできたのはこの店だった。稲毛海岸の小規模のショッピングモールみたいなところの二階の隅にある、だだっ広い店で、陶器や工芸品、各地の保存食品や調味料なんかが売られているスペースもあって、奥には大きなピアノも置いてある。テーブルも席もゆったりしてて、落ち着ける。
 24時間のファミレスで仕事することが多いけれど、現在まで含めて、ここが一番仕事が進んだ店だった。ランチタイムと17時から22時ぐらいまでしかやってないのんだけど、本当によい店だった。

 まず、料理が美味い。
 他の自然食バイキングとちがって、あまり目玉になる高そうなおかず(牛肉とか魚貝類の天ぷらとか、刺身とか、そういうの)はなくて、肉系も唐揚げぐらいなんだが、これが美味い。お総菜も生野菜も美味い。コロッケも美味いし自家製ピザも美味い。納豆もやたら大粒で美味いし、カレーもいい。パスタもよかったなあ。ケーキだけ別料金だったけど、あれも美味かった。
 全部のおかずに、材料の生産者や農場の名前が書いてあるのも良い。無農薬だからとかあまり気にしないほうだけど、それでも実際に美味いのがわかるのが面白かった。飲み物も、色々健康に良さそうなのが取りそろえてあって、コーヒーも一度に淹れてデカンターで保温しているタイプなのに、すげー美味かったのだ(たしかコーヒーも無農薬のだった)。お酒も別料金で飲めたけど、ここで飲んだことは一度もないので味はわからない。ただ、ここで飲むのはきっと楽しかったろうな。
 あと、食べ放題ではないけれど、オーナーの気まぐれでテーブルにひとつずつ、追加の刺身とか、デザートとかが出ることもあって、これがまた美味かったなあ。

 そして、なによりすごいのが、バイキングなのに時間制限がないこと。
 ランチなら11時頃に来て、終了の15時までいられた上にディナーの開始の17時前までは、ドリンクだけになるけどさらに居座れたのだ。
 ディナーなら、17時に入って22時(閉店する頃は、終業が21時だったかも)までいてよかった。かなり無茶なシステムだが、あんまりもりもり食べる人向けの店ではないので、ほぼ問題なかったみたい。
 正直、「長時間いる人」として憶えられてたのは私ぐらいだと思う。
 温泉宿に逗留して原稿を──なんてのが理想だけれど、この店も私にとってはある種の理想郷だった。
 だって、原稿書きながら美味いコーヒーいくらでも飲めて(紅茶も枇杷茶も三年番茶もビワミンも、なんかもう色々飲めるけど)、食べたくなったら、美味い食べ物をちょこちょこつまんで食べられて、4~5時間も仕事できるって。なにそれ。
 しかも、ピアノの生演奏が流れたり、日によってミニコンサートみたいのもやったりしてる素敵空間で、だよ。
 すっごいよかった。筆が進んだんだよねえ。
 お店のオーナーさんに顔を覚えてもらって、それほど大したもの書けてないのに本を持ってたりして。だって、ほとんどここで書いたんだし。

 もうひとつ。
 ポイントを溜めると一回分無料になるなんてサービスもあった。
 常連で通っていたから、結構な回数を無料で食べたものだ。

 ずっと続いて欲しかったけれど、モールがなくなってマンションになるとかでやむなく閉店になったときは、本当にがっかりした……。
 閉店の日には、家族で予約して行ったなあ。
 結局、マンションなんか未だに建ってなくて、跡地が巨大なスーパーになっているのが腹立たしいんだけど。

 オーナーさんは、スタッフ全員連れて、千葉公園のほうで「京あかり」という京料理屋さんを開いた。もともと京料理の人なのだそうで、お総菜が美味しかったのも、その辺が関係しているのかなあと思ったり。
 「京あかり」のほうは夜だとちょっと気楽にはいけないお値段のお店だけど(だいぶ昔に一回だけ食べたけど美味かった)、でも、ランチは良い感じだったと思う。

 でも、ここじゃあ原稿書いたりはできないんだよね……。


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