海賊RPGに役立つ? ちらっと帰ってきた背負い袋にこの一冊! 第十二回

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※2003~2006年に雑誌『RPGemer』に掲載された記事です。

第十二回:「幻影の航海」「少女海賊ユーリ」「ヤマネコ号の冒険」etc……

海賊編 ~架空世界の海賊たち~

(本のデーター)
①『幻影の航海』

 ティム・パワーズ 著 中村融 訳
 早川書房 発行 660円+税(絶版)

(※データは掲載当時のものです)

②『少女海賊ユーリ』1~8巻(平成18年3月現在)
 みおちづる 著
 フォア文庫(童心社) 発行 560円+税
(データは掲載当時のものです)

③『ヤマネコ号の冒険』(アーサー・ランサム全集・3巻)
 アーサー・ランサム 著 岩田欣三 訳
 岩波書房 発行 2400円+税(ハードカバー版)
(※データは掲載当時のものです)


ごぶさたしております~

 こんにちは、謎のメカ侍・伊豆平成です。
 海賊特集と聞いて、ふらりと港に帰ってきました。
 なにしろ私、子供のころからの海賊好きでして。今でもミニチュアゲームの“パイレーツ”にハマッて海賊船を組み立ててはニヤニヤ眺めているくらいですからね。
 中でも特に「女海賊」って言葉に弱いのです。アン・ボニイとかメアリ・リードとかチェン夫人とか鶴姫(これは水軍か)とか聞くと、ゾクゾクします。それともう一つ、「宇宙海賊」って言葉にも弱いですな。なにしろ『キャプテン・ハーロック』は永遠に私の憧れですから。
 ってことはですよ、『クィーン・エメラルダス』とか、『宇宙海賊ミト』とか聞いた日にゃ……嗚呼! もうたまりません!
 てなわけで、今回は古今東西の女宇宙海賊の本ばかりを……あ、いや、嘘です。そんなことはありませんってば。
 ちゃんと、RPGで海賊稼業をするコツを会得するのに役立つ小説を三つほど引っぱりだしてきてます。
 ええっと、『幻影の航海』『少女海賊ユーリ』『ヤマネコ号の冒険』――ほらね。女海賊ものなんか一冊しかないでしょ。


“海賊らしさ”って?

 海賊――と聞いて、まずどんなことを思い浮かべますか?
 西洋の帆船、ドクロの旗、抜き身のカトラス、ラム酒、先込め式のピストル、マスケット銃、アイパッチ、カギのついた義手、銃をしこんだ義足、南洋の孤島、暗号で書かれた宝の地図、火を噴く大砲、「八銀貨!」とわめくオウム、財宝の詰まった木箱、幽霊船、etc……なんて感じでは?
 これらのほとんどは、カリブで活躍した海賊のイメージです。
 もちろん、どんな時代のどの海にも海賊はいたし、「古代ギリシア・ローマの時代からイスラム全盛期までの地中海海賊やら、北欧のバイキング、東洋の倭寇だって有名じゃん!」と異論を唱える方もいるでしょう。
 でもね、やっぱり海賊といったらカリブですよ(マダガスカル辺りまで荒らし回ってたらしいけど)。だって、今試したように、日本人の大半が「海賊」と聞いて浮かべるのは、ドクロの旗を掲げ西洋式帆船に乗った、「あの海賊たち」の姿なのですから。
 16世紀半ばから18世紀初頭まで海賊の根拠地だっただけあって、いまだに、カリブを荒らしたプライヴァティアやバッカニアが一般的な海賊のイメージとしてとらえられているわけです(まあハリウッド映画やディズニーの宣伝効果もあるでしょうが)。
 かくいう私自身も、“海賊”との最初の出会いは『宝島』でした(『ピーターパン』のフック船長か、『ひょっこりひょうたん島』の海賊が先だったかもしれませんが……)。で、次には古いハリウッドの海賊映画に夢中になり、やがてこうした海賊たちは、かつて実在したカリブの海賊をモデルにしていると知りました。
 歴史的な詳細や具体例はここでは省きますが、ドレイク、モーガン、ロロノア、キッド、ロバーツ、黒髭ティーチなど海賊たちの伝説は、戦国時代の大名や新撰組の隊士、三国志の武将のことを知るのと同じに楽しめますし、必ずやRPGの参考になるはずです。
 というわけで今回は、“海賊”=“カリブ海賊”として本を選びました。それも私の大好きな「海賊もの」小説の中で、読者層や時代背景、視点などがそれぞれ異なる作品――をあえてマッチングをしてみたのです。
 『幻影の航海』、『少女海賊ユーリ』、『ヤマネコ号の冒険』――このうち後の二冊は児童書という点で共通していますが、一方は古典とも言うべきランサム作品であり、もう一方はかなり現代的な(まだ未完だし)シリーズです。子供からみれば明らかに「違うジャンルの本」でしょう。
 これら別ジャンルの海賊ものを通して、海賊ロールのコツが見えてはこないか――と思ったわけです。

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