ホラーゲームのある欠陥と、2つの対策と、1つの傑作


正直に言うと、私はホラーに関するコンテンツが苦手である。ホラー映画、お化け屋敷、怪談の類、どれも「苦手」だ。
いや、「苦手」といってもホラーが嫌いなわけでない。むしろ好みで言えば好きな部類であり、定期的に摂取している。にもかかわらず苦手なもんは苦手である。
ジェットコースターとかバンジージャンプとか、100%予期できる恐怖に立ち向かうのは大好きなのだが、あのランダム的な恐怖、不安を増大させる演出が、どうにも苦手なのだ。

そんな自分にとって唯一例外なのが「ホラーゲーム」。ぶっちゃけ、筆者はホラーゲームで怖いと感じたことはあまりない。(少なくとも、他のホラーコンテンツに比べて)

どんなB級ホラー映画でもハラペーニョぐらい辛く感じる自分だが、ホラーゲームはまあせいぜい七味唐辛子ぐらいである。

それはホラーゲーム特有のある致命的欠点「賞味期限」に起因している。

ホラーゲームの賞味期限

ホラーゲームの賞味期限とは何か?
単刀直入に言うと、ホラーゲームの賞味期限とは、およそゲームを購入してから最初にゲームオーバーになるまでの間のことである。
そもそも、ホラーゲームをプレイする我々は何故恐怖を感じるのだろう。
ホラーゲームをプレイする我々は、大抵安全な自室にいるはず。そして、洋館だの精神病院だのに幽閉されてしまった、哀れな画面の中の主人公が味わう恐怖や苦痛は、我々とは無関係なのだ。

それでも我々がホラーゲームを通して「怖い」と感じるのは、ゲームの中の人物に我々が感情移入しているためだ。コスティキャンのゲーム論等にもあるように、多くのゲームはプレイヤーが感情移入する前提で作られる。中には、『Half-Life』のように主人公を全くプレイヤーと同じ目線に合わせるゲームまである。
そのため、ホラーゲームでは主人公は我々でも感情移入しやすい一般人として描かれやすい。『サイレントヒル2』のジェイムスは事務員だし、『OUTLAST』のマイルズはフリージャーナリスト。基本的に無防備で、プレイヤーの境遇にもありえるような設定だ。歴戦の傭兵やスーパーマンではホラーゲームの主人公にはなりえない。極稀に、『バイオハザード』のクリスや『DEAD RISING』のフランクさんなどの例外も存在するが。
いずれにせよ、ゲーム内の主人公が、無残な死体を見たり、真っ暗なトイレを探索したり、人間の叫び声を聞いたりする事で受けた種々の恐怖や不安に対し、プレイヤーが共感することで、初めてプレイヤーは恐怖できる。

無論これはホラー小説やホラー映画でも同様のこと。古いB級ホラー映画に女性がよく出てくるのは、ステレオタイプ的なひ弱さを強調するためでもある。

さてここからが重要なのだが、主人公とプレイヤーの接点を大きく外してしまう、ゲーム特有のシステムがある。
それがゲームオーバーになった時だ。一度でもゲームオーバーになれば、一転して主人公とプレイヤーの境遇に乖離が生まれる。
ホラーゲームの恐怖の根源は、死ぬかもしれないという不安である。殺人鬼にミンチにされるかもしれない、サイコパスに腕をちぎられるかもしれない。そうした最悪のパターンを想像して我々は恐怖する。言うまでもなく、一度でも死ねば我々は永久にゲームオーバーなのだから。

だが、ゲームではそうもいかない。主人公が無残に殺されても、プレイヤーは痛くも痒くもないし、何ならその後に生き返ってしまう。それこそ、ゲームに出てくるゾンビのように、何度でもだ。どんな最悪の結末を迎えても、必ず打開するチャンスがある。
そうなると、無残な死体、暗い部屋、叫び声、全て「死」を連想させる演出だからこそ怖いのに、その「死」が他人事になった時点で、何の共感もできなくなるのは不思議ではない。
無論、突然大きな音を出す等してプレイヤーを驚かせる、所謂ジャンプスケアなトリックに対してはゲームオーバー後も有効だろうが、それはあくまで視覚的・聴覚的な「驚き」であって「恐怖」という極上の感情に程遠いものだ。
これが、ホラー映画になくてホラーゲームにある、人を恐怖させる時の不都合である。ビデオゲームは他の媒体と比べて「遊ぶ」以上制約が多く、その構造に囚われてしまう。

では、ホラーゲームは劣ったホラーコンテンツなのか?もちろんそうではない。
優れたゲームクリエイターたちはこの問題に自分よりとっくに早く気づき、その解決策をそれぞれ用意しているからだ。それにより、ホラーゲームは数あるホラーコンテンツの中でも、特に優れたものだと私は考えている。
では具体的に、ホラーゲームの開発者たちは何を用意してくれたのだろうか。

(以下、この欠点を克服するための2つの対策と、その欠点さえ面白さに変えた1つの傑作を紹介したい。因みにその傑作は『DDLC』ではない。)

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ホラーゲームのある欠陥と、2つの対策と、1つの傑作

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