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古事記及び日本書紀の研究

津田左右吉博士ほど誤解された人はいないと思う。
『古事記及日本書紀の研究』『日本上代史研究』『城代日本の社会及び思想』が
発禁となったのだ。

博士の研究はそもそも出版法に触れるものではない。その研究方法は古典の本文批判である。文献を分析批判し合理的解釈を与えるという立場である。
津田左右吉博士のこと 南原繁

博士は起訴されて、『古事記及日本書紀の研究』のみが皇室の尊厳を冒涜するという名目のもとで有罪とされ禁錮三ヶ月(執行猶予)の判決が下された。

右翼や検察側は博士の研究を不敬と捉え、厳しく追求したのだ。
また天皇家断絶を図る左翼側は自分たちの味方が増えたと勘違いし論文を頼んだ。

しかし、博士は周りの情勢や思い込みなどは全く眼中になく学問的に事実を研究調査しただけなのだ。

もし、我が国の上代に種々の異人種、異民族がいて、それらの地理的分布がどんな状態であったか、またそれらがどういう径路、どういう形勢で移動したかということを確実に証明した上において、記紀の記載をそれらの異人種、異民族の行動の記録として見、それがすべての点において互いに符合し、無理のない否定ができることを認め得た場合、それによって記紀の物語の全部が遺漏なく説明し得られる場合、そしてまたその人種上、民族上の差別や移動が記紀にあらわれ得る如き近い世において存在し、また行われたことの明らかに知られた場合には、記紀の記載はあるいはそういう風に解釈して良いかもしれぬ(事実上それができないことは明らかではあるが)。
古事記及日本書紀の研究 津田左右吉

博士は記述において、記紀の記載にある民族の移動や分布の特定は不可能だと考えていた様子だが、最近の科学の進歩により、DNAの解析技術が飛躍的に向上し、人種や民族の移動分布が明らかになってきた。

変な思い込みや、プロパガンダに毒されることなく真実が手に取るように理解できる時代になった。

津田左右吉博士は純粋な学者で、研究姿勢は素晴らしく尊敬できる人だ。
現代に生きていて最近の科学の成果を見たら喜んで研究資料にしたと思う。


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