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特攻神社

父が特攻隊員だったことを知ったのは私が16歳くらいの時でした。
「父ちゃんはね、特攻隊にいたんだよ。」

夕日を二人で眺めながら口数少なく、言うのです。
私は当時は子供で、初耳だったし、どんな深い意味を伝えたかったのか理解していませんでした。

父はポツンポツンと何日も間を置いて話しかけてくるのですが、よほど話したかったのでしょう。

先に逝ってしまった戦友もいたとのことです。
こんなことを話せる友人もいなかったのでしょう。

特攻隊員は目が大事で、いつも視力を大事にして、訓練をしていたそうです。

厳しい訓練を続けて、出撃の命令を待っている最中に、終戦になって、出撃は取りやめになったわけですが、精神は全てが壊されてしまっていたのです。

まず訓練中に死者として扱われ、精神はズタズタです。

完全に人格が破壊されて、『自分は生きていてはいけない』という考えを徹底的に植え込まれます。

この精神状態を手当することなく、終戦後、父は身体解放されてしまいました。

実家に帰ると戸籍が抹消され、法律上死者として扱われていたのです。

20歳そこそこの若者が、全く存在を無かったことにされ、人格が壊されてしまっていたのです。

父はこの信じられないほど厳しい環境から立ち直ったのですが、相当な精神力があったのだと思います。

結婚して新戸籍ができたので母方の姓を名乗り、自分を戸籍筆頭者にしたのは理解できます。

特攻神社の境内にある立像

父が亡くなって、遺品の整理をしていると、旧姓の印鑑が大事そうに保管されていました。

大人になり、父の心の動きを想像できるようになり、この特攻神社を参拝してみて、父の本当の心に同期できたような気がします。

流れてくる涙を拭きながら、頭の中で戦争の原因を探してみました。

戦争はほぼ100%経済のために起こされています。
相手より優位に立ちたいがために、相手の所有する土地・財産を略奪するために、戦いを始めるのです。

相手より優位に立ちたい
戦争の原因は、たったこれだけの理由でした。

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