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地名で見つけたレトロな風呂〜湯泉津「薬師湯」

 今日11月26日は「いい風呂の日」ということで、この間の九州旅行の帰途に見つけた「いい風呂」をご紹介しましょう。
 九州へ行く時、自動車道に無料区間が多く交通量が少ないことや、風景が美しいことなどから日本海側の山陰道を走ることが恒例になっています。
 先日、九州の城めぐりを終えて下関から鳥取に向かって走っているときカーナビに「温泉津」という地名が表示され、ちょうど浜田で夕食を終えて一風呂浴びたいところだったので、ひょっとして温泉があるかも?という期待を抱いて立ち寄ってみました。

 そこは海沿いのまちで、車一台がようやく通れるような道が迷路のように入り組んでいました。道沿いに民家が立ち並んでいることはわかりましたが、どの家も真っ暗で、ゴーストタウンに迷い込んだと真剣に思ったほどでした。
 しかし、引き返そうと別の通りに入ったところ、眼前に浴衣の人々が桶を手に行き交う、昔ながらの温泉町が現れました。そして煌々と明かりを灯すひときわ大きな洋館がありました。世界遺産の湯「薬師湯」です。

湯泉津

 温泉津(ゆのつ)は世界遺産に登録されている石見銀山に近い港町で、かつて石見銀山で産出した銀をここから船で運び出していました。銀山の繁栄とともにまちは豊かになり、問屋や商家、旅籠が立ち並ぶ独特の街並みが形作られたといいます。そして多くの湯治客でにぎわいました。
 そんな温泉町の中心にある「薬師湯」は大正時代に建てられた洋館で、1階が風呂、2階と屋上は休憩所として開放されています。私が訪れたときは夜なので見えませんでしたが、昼間なら、瓦屋根の続くその街並みを眺めることができたでしょう。
 温泉地としての歴史は古く、発見されてから1300年の歴史を持つということですが、中でも「薬師湯」は明治5年に起こった浜田地震で湯柱が立ったという逸話があり、泉質は日本温泉協会の審査で「オール5」の高い評価を受けている、ということです。

薬師湯

 湧き出た温泉をそのまま引き込んだという薬師湯の風呂は、数人入ればいっぱいになりそうな小さな浴槽が一つあるだけのシンプルなものでした。しかし、やや熱めの46度のお湯でしっかりと温泉効果を得られるよう、脱衣所には湯の浸かり方についての掲示があり、その通りに、2分おきぐらいに湯に入ったり、あがったりしてくつろいでいるうちに、冷えていた体が温まり、汗ばむほどになりました。

薬師湯3

 泉質は風呂には掲示されていませんでしたが、ホームページに詳しい表記があり、ナトリウム・カルシウム一塩化物温泉(低張性中性高温泉)だということでした。
https://www.yunotsu.com/appeal/analysis.html
 

薬師湯2

 湯治を楽しむため、洗い場は最低限で石けん類も置いてありません。温泉の湯ではミネラルを含むためあまり石けんが泡立たないこともあると思いますが、持参したもくせい舎の石けん(サボンクラシコ 、パルマクリスティ)はしっかり泡立ちました。

 思いがけず、地名をたよりに見つけた「いい風呂」。また、島根への旅を企画して、今度は街並みも含めてゆっくり楽しみたいと思います。


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