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動揺するのは楽しい? カミングアウトとエロティックな「動揺」

カミングアウトは、された側をもかき乱す。 私が母へカミングアウトしたとき、彼女は、過去の記憶の、余っていたジグゾーパズルのピースの場所を見つけたかのように、ある遠い親戚の叔父のことを語っていた。 その人は、母の田舎の外れの方でひっそりと生活していたらしい。 一人暮らしをしていたその叔父は、田舎の外れの土地で、一人で暮らし、人付き合いも少なく、しかし稀に男性と会っていたらしかった。 母も実際には、その現場を見たことがあったわけではないのだろうなと、その語りから私は感じたが、その

    • 青森産のにんにくが買える人と買えない私

      僕がよく会うセフレは、タワーマンションにすんでいる。 僕の1年の稼ぎ(相当低い)が、1ヶ月の家賃で飛んでしまうその人の家はとても快適だ。 マッサージチェアがある。広いバスタブもある。大きなテレビもある。コンシェルジュがいて、いつも「おはようございます、いってらっしゃいませ」と声をかけてくれる。 部屋に入るまでに3回も鍵を使わなければならなくて、少し不便だけれども、そのことを僕が愚痴っぽくもらすと、彼はとても楽しそうに笑う。 彼の住む家の近所にあるスーパーは百貨店系列で、お値

      • アルバイトが決まりませんー私たちがマラソンで同じコースを走らせろと議論しているときに、コースの整備をしている人々ー

        「アルバイトが決まらないんです、うちの生徒」 この前の打ち合わせで、僕は絶句してしまった。 「だから、面接の練習をしたり、電話のかけかたを指導したり…」とその担当の先生は教えてくれた。 「自己肯定感とかはどうですか?」 私は念の為、聞いておく。 「定時制高校で、学び直しなんです。自己肯定感は低いですよね、やっぱり」 彼女はそう続ける。 アルバイトが決まらない、ということを、私はどう捉えたらよいかまだわかっていない。 多くの人が時給1000円以下で働いていることをもちろん知っ

        • 私が『取り乱す』えんどう豆の中の虫

          さやえんどうを貰った。 ご近所さんの庭で栽培されているそれは、とても艷やかな色をしていた。 僕は、友達の家で料理をする機会が直後にあり、そのさやえんどうを、きっちり200g持参した。 二合の豆ごはんを作るのに、僕は毎日磨かれている機能的なキッチンの前にたって、自家製のさやえんどうから、豆を取り出そうと剥いた。 私はイメージしていた。 そこには、グリーンピースのような豆が整然と並んでいる姿を。 しかしそこにあったのは、白いもやもやとしたものと黒っぽい何かだった。 僕は恐怖で思わ

        動揺するのは楽しい? カミングアウトとエロティックな「動揺」

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          深セン、クリーンな街は、何を「片付けて」いるのだろう?

          2018年3月18日 ちゃんと今日のことを書いておこうと思う。 今日は、唯一、1日フリーの日だった。香港に行く学生、マカオに行く学生に大体は別れているようだった。僕は、遠出はしなかった。 マカオは、お金がなくカジノや、異性愛男性向けの風俗店などにとりわけ興味のない僕にとっては、エッグタルトと町並み以外には特に今の所興味がない場所であるし、香港は帰国前に嫌でも二日間滞在しなければならない。(もちろんとても楽しみだけれども) かといって、広州や、違うところに行きたいかというと、ま

          深セン、クリーンな街は、何を「片付けて」いるのだろう?

          僕らは皆、「踊っている」のか。ハルビンの青年との哀しみのダンス。

          2019年3月21日 昨日の夜、深センのゲイと会った。中国で主に使用されているゲイアプリ経由で連絡してきた人で、顔もプロフィールも曖昧だった。 18:00に仕事が終わるからご飯でも行きませんか?と言われ、OKをしたものの18:00を過ぎても連絡が来ない。業を煮やして僕は再度連絡すると、「もう少しで終わるから」という返事。結局、僕は、2時間近く待たされて、近くのショッピングモールに来るように言われる。とても振り回されている。普段なら、もう少し早く損切り、というか、次の予定を入れ

          僕らは皆、「踊っている」のか。ハルビンの青年との哀しみのダンス。

          僕らが知らないこと。ライチの木が知っていること。

          2019年3月19日@深セン 昨日の夜は、ライチ公園(荔枝公园)···に行ってきた。ライチ公園は、深センの老街の付近にある割と大きな公園で、ゲイの発展場として有名だという記事をおぼろげに読んだことがあり、訪れてみた。公園は地下鉄の駅を降りてすぐにある。駅から公園に入る道すがら、21:00になろうかという公園の中から、すでにたくさんの人の気配を感じた。僕が公園に入ろうとすると、携帯を持った女性が出てきた。私は公園の中に入っていった。そこは、夜の公園ではあるものの、決して暗くは

          僕らが知らないこと。ライチの木が知っていること。

          知的障害のある子どもたちに、性の多様性の授業をしてきました。

          今日は、障害のある子どもたち(主に知的障害)の、高校後の学びの場で、性の多様性の授業をしてきました。 障害のある子どもたちの進路については、私も、全然知らなかったのですが、障害のある子は、何かを習得することに相対的に時間がかかることが多いのにも関わらず、一般的には、現在、支援学校高等部卒業後には、一般就労か作業所に行くことが多いです。 事業内容としては、自立訓練事業の生活訓練としての枠組みを利用して行われていて、常勤のスタッフさんと、ボランティアさんによって、授業がなされてい

          知的障害のある子どもたちに、性の多様性の授業をしてきました。

          「愛すべき祖国」「愛すべき郷土」ってのは、コンクリートでできた駅前のイオンのこと?

          この状況を説明するのは、非常に難しい。安倍首相が、プーチン大統領と会談をした、というニュースが流れてきていた。その中で、「平和にやりましょうよ」的なことを安倍がいい、(まぁ、北方領土問題なんて二の次のパフォーマンスのつもりに過ぎなかったんだと思うのだけれども)、プーチンに、「前提条件なしで、平和条約締結を」と返り討ちにされたのだった。 そして、そのニュースを踏まえて、Twitter上の言論空間は、(そして、まぁ、私のフォロワーは、大体が左派の人が多いから)「ネトウヨや、極右

          「愛すべき祖国」「愛すべき郷土」ってのは、コンクリートでできた駅前のイオンのこと?

          やっぱりノンケって、みんな、おっぱいが大きい人が好きなんですか?

          「皆さんは、女性的なゲイなんですか?」 とノンケに問いかけられて、僕らは、二人とも「うふふ」と口に手を抑えながら『女性らしいポーズで』笑った。けれど、その皮肉は、彼には全く伝わらなかった。典型的な偏見すぎて、もうどこから丁寧に説明すればよいか、呆れていた。軽く笑い飛ばして、僕らは次の話題へとうつった。 ゲイの友達が数ヶ月前から週末だけバーをしていると聞いていて、立ち寄ったお店のカウンターで僕らは話していた。ノンケの彼とは、たまたま一緒になっただけだった。 「どういう人がタ

          やっぱりノンケって、みんな、おっぱいが大きい人が好きなんですか?

          「善良さ」に傷つくのが怖くなってしまっていることと、それでも、たくさんの応答に感謝しているということ。

          まずは、先日、投稿した文章を読んでくださった全ての方に、感謝したいと思います。 たくさんのフォロー。 たくさんのいいね。 たくさんのメッセージをオープンな形で、ひっそりとした形でいただき、ありがとうございます。 noteで投げ銭的なものをしてくださった方にも(そんな機能があったなんて!というのも結構びっくりしたのですが、自分で設定していたのかね…あれは)、一人ずつありがとうございました、とは言えてはいないのだけれども、とても感謝しているし、あぁ、このお金をうまい棒にでもして食

          「善良さ」に傷つくのが怖くなってしまっていることと、それでも、たくさんの応答に感謝しているということ。

          視覚障害者への色についての質問と、「あなたは、インドカレーの中で、どういった味が好きですか?」という問い

          視覚障害の人と色の話をした。彼は、もともと弱視だったから、おぼろげに赤や黄色、青という概念はわかるということだった。 「好きな色はなんですか?」 僕は、そう聞いて、彼は「うーん、あえていうなら青かなぁ」と言ってくれた。だけれどもイマイチ会話が盛り上がらなかった。僕は、そして、帰りの電車の中で、「あ、これはいまいちなことを聞いてしまったな」と感じていた。 何がダメだったのか、しばらく言語化できなかったのだけれども、おそら<わたしたち>の中での「当たり前に大切な要素」は、人によ

          視覚障害者への色についての質問と、「あなたは、インドカレーの中で、どういった味が好きですか?」という問い

          オリンピックは誰のもの?「LGBTが活躍!」というネタの裏で活躍していないTの話と「女性」とは誰か問題

          LGBTのアスリートという報道がなされることが多いけれど、トランスジェンダーは入っていないことがほとんど。私自身は、トランスジェンダーのオリンピック選手を私は聞いたことがない。2015年にカミングアウトをした、アメリカ陸上男子10種競技で元金メダリストの、ケイトリン・ジェンナー(金メダル時は、男性名のブルース・ジェンナー)は有名(Marcus, 2015)だが、引退後ではなくアスリートとして、誕生している例を私はしらない(知っている方がいれば教えて下さい!)。オリンピック級の

          オリンピックは誰のもの?「LGBTが活躍!」というネタの裏で活躍していないTの話と「女性」とは誰か問題

          左と右とクィアと<わたし>

          2018年4月20日付けのニュースで、「あぁ、これは極めてフランス的な考え方だな」と思ったことがあった。ニュースの一部を抜粋すると、概要は以下のようなものである。 「市民権授与式で主催・関係者との握手を拒んだイスラム教徒のアルジェリア人女性にフランスのパスポート発給を認めなかった政府の決定を支持する下級審判決を維持し、原告側の上訴を棄却した。」("Muslim woman who refused handshake denied French citizenship", 2

          左と右とクィアと<わたし>

          講師謝礼とネオリベラリズム

          「ところで、講師料はいくらぐらいでしょうか?」 とある公立の小学校から講演依頼が来た。ふむふむと読み進めていて、最後の一文に目がとまった。講師料の問い合わせか…とため息を付きながら、メールを書きはじめる。もちろん、講演を依頼してくださるのはとてもありがたいし、私は、私の拙い講演でよければ、たくさんの生徒に聞いて欲しいと思っている。講師料を期待してはいけない、と思いながら返信画面を開き、「ご連絡いただき、ありがとうございます」と定型文を打ち込む。ちょっと迷いながらも、 「講

          講師謝礼とネオリベラリズム

          「『正しくない』LGBT講座」、というタイトルをめぐる攻防

          今度、性の多様性についての講演をしに行く学校から、メールがきた。 「講演のタイトルを決めたいのですが、何か案はありますか?」 講演の依頼は2種類ある。 まず、とりあえず、LGBT研修をしないといけないなぁ、というぼんやりとした気持ちから検索行動をはじめて、良い講師いるよ~(あるいは、安くやってくれる講師いるよ~、ぐらいのものかも知れないが)というコース。この場合、あまり、講演のタイトルは、決まっていないことが多い。これが8割。あとの2割は、テーマが決まっていて、「『教育現場

          「『正しくない』LGBT講座」、というタイトルをめぐる攻防