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ベストアルバム2018

ピンときたアルバムは数知れないけども、2018ベストアルバム20枚選出しました。物は試しにと、今回は1~11位まで順位付けを行っています。再生回数とかいった客観的な数値によるものではなく、「今の気持ちで並べたらこうだな」といった、何ともザックリとしたやつです。まあどうぞ。因みに上半期ベストはこんな調子でした。

○Arctic Monkeys『Tranquility Base Hotel & Casino』


全体の印象としては、ピアノが基調とされているからか、囁くようなボーカルスタイル ( こういうボーカルスタイルといえば小沢健二の『Eclectic』を思い出す) を多くとっているせいか、艶っぽくてメロウでスイートで夜の似合う感じだなと思いつつ。
 曲の中では先述した囁くようなボーカルの表題曲と、コーラス重ねつつサビを繰り返すのが高揚感を誘うリード曲の「 Four Out Of Five 」がカッコよくて好き。若干ビートルズのバラードぽさも感じられる「 The Ultracheese 」による締めもたまんねえ。

○陰陽座『覇道明王』


前作の反動ということで、アグレッシブな曲によって構成されている本作(いわゆるバラードと呼べる曲は収録されていない)。「飯綱落とし」などの速い曲がカッコいいのは勿論、長尺曲もその構成力ゆえか、ダレず引き込まれる。「以津真天」の「歌う故の多さに鼻白む」の歌い回しに土着的なものを感じられて、メタルにこういう感覚を盛り込むのが陰陽座の面白い所だよな~とハッとしつつで。ただ激しいだけでも、ダークで重苦しいわけでもない、明王感溢れんばかり!の重鋼な傑作。

○ゲスの極み乙女。『好きなら問わない』


 「颯爽と走るトネガワ君」のようなユーモアサイドな曲もあるが、本作はフロントマン川谷絵音のセンチメンタルサイドの魅力が爆発(「もう切ないとは言わせない」で極限までそれは達成されている)した一枚と言えるのではないだろうか。これまでの曲でいえば「キラーボール」や「ドレスを脱げ」といったコミカルで派手な曲群より、「だけど僕は」といった曲に惹かれていた俺なので、大好物の一枚だった。また、indigoの方では気になってしまう、既発曲のリミックスやアレンジ違いの楽曲の存在も、アルバムを構成するピースの一つとしてうまくはまっているように感じる。「ホワイトワルツ」でのウッドベースカッケーなー。

○STUTS『Eutopia』


夏の峠を越さんとする時期に合うフィーリングな。高揚というよりも、リラクシンなやつで。パッと聴き、ムードといい、色んなラッパー招聘してる所といい、Calvin Harris『Funk Wav Bounces Vol.1』が浮かんできた。日本にゃ、この1枚があるってね。インスト曲もさることながら、鎮座DOPENESSやC.O.S.A.のラップ好きィ…!

○tofubeats『RUN』


前作『FANTASY CLUB』も内省的で好みではあったけど、このアルバムではもっと彼の音楽にのめり込めた感じがある。「YOU MAKE ME ACID」がベストトラックというか、耳にこびりついて離れないし、この曲含め中盤のダンストラックの流れ好き。リードトラックの「ふめつのこころ」「RIVER」は静動の差異はあれど、いずれも愛に関する曲で「ふめつのこころはLOVE LOVE LOVE」も「二人の愛は流れる川のようだ 途切れることはないけど 掴めない」も等価値に染み入るよ。

○マテリアルクラブ『マテリアルクラブ』


 フレキシブルに、色んな人脈を駆使して発表した研究成果である、歪な1stアルバム。小出ラップ曲はともかく、「閉めた男」や「kawaii」と言った楽曲は、いわゆるロキノン系等バンド音楽を踏まえると何とも怪曲に聞こえるだろうが、本作は「音楽」だけでなく、映像作品、文学等々、色んな文化体験を通して受容すべき作品ではないかと思う(本作に限らず、あらゆる創作物に対する時、そういう姿勢であるべきなのは言わずもがなではあるが)。それゆえ意図的に小出さんはその領域の固有名詞を持ってきているし、それを聞く私たちも結びついていくべきなのだ、あらゆる創作物に。

○KID FRESINO『ài qíng』


 聞けば聞くほど、「クールだ」という感想に集約されていってしまう…ラップの文脈でどうこう考えきらないからというのもあるが。「クール」というのは熱っぽくないという意味でもあるし、カッコいいという意味でも使っているのだけど、バンドのアンサンブルをバックにしている曲(スティールパンの音イイなあ)も、打ち込み曲もいずれも彼のラップが乗ると、非常にクールなものとして感じられる。彼のラップだけでなく、客演しているラッパー、皆カッチョええよね…。

○THE 1975『A Brief Inquiry Into Online Relationships』


 1stアルバムは聴いていたけど、大して入り込むわけもなくで。本作はTLでも話題になってたし「あんま分からないかもだけど聴いてみるか…」と言った感じで聴いてみたら、見事射抜かれまして。アプローチが多彩で面白いよなあ…初っ端からBon Iverだったり、トロピカルハウス的なのだったり、映画音楽みたいな管弦だったり、割れるようなピーキーなギターの音遣いだったり、アンビエントな感じだったり、弾き語りだったり、80sポップ?な感じだったり…俺が思うくらいでもアレコレ言えるんだから、知っていれば知ってるほど面白みは倍々に増すだろうな。

○曽我部恵一『ヘブン』


 サニーデイの諸作品は聴いていたし、「街角のファンク」とか好きだけども、曽我部さん自身がラップするとは…しかし、何とも合っている…!シルキーな歌声だから合うのか危惧していたけど、なんとも杞憂だったようで。先述のKID FRESINOのアルバムの楽曲に比べるとトラックのザラつき具合が非常に強い。こういう不穏な空気の中で言葉を連ねていく感じ好きだわ。

11位・・・TWEEDEES『DELICIOUS.』


 毎アルバム、盤石のクオリティを誇っていると思うのだけど、本作も流石の仕上がりで。「花束と磁力」のようなこれまでのTWEEDEES…沖井印…の「デデッデー、デデッデー!」というキメが印象的な曲があったり、寒い季節に似合いそうな雰囲気であったりとこれまでのアルバムと通ずるものはありつつ、シューゲイザー的な音像が用いられていたり1分の短い曲があったり等々と新たな側面もガンガン出している。アルバムとしての流れもありつつ、どの曲もシングルで出ててもおかしくない「シングル曲を詰め合わせました」感もたたえてる楽曲群に盛り上がるばかりだった。

10位・・・南波志帆『Fille! Fille! fille!』


TWEEDEESとこの南波志帆のアルバムは、ほとんど同順位という位置付けなのだけど、聞いた時の衝撃の大きさでこちらに軍配をあげた次第で。フレンチポップを基調として、これまでとは異なるオトナで新たな装いで、といった趣なんだけど、その新たな装いがまぁキマってる。声質に合ってるからか。囁くような歌唱が艶めかしさを加えていて、「こどなの階段」付近の彼女しか知らなかったので、こんなに色んな歌い方のできるシンガーなんだなあと魅力を発見しつつ。少なくとも、2018年の日本のポップスでこんなにフレンチポップを前面に出している作品もなく(2018年は日仏交流160周年であり、セルジュ・ゲンズブールの生誕90周年という年らしいが)その点の珍しさもあって々聴いてた。

9位・・・浅井健一&THE INTERCHANGE KILLS『Sugar』


 上半期の10枚にも選出していたので、そんなに述べる言葉もないのだけれど、一年通して他のバンドの曲を聴いたりしても、このスリーピースのバンドの楽曲の威力は負けることはなかった印象で。フジロックでのアクトもカッコよかったなあ。ブランキーとかこれまでの彼のディスコグラフィと比較されたとて、見劣りしない一枚に仕上がってる。

8位・・・w-inds.『100』


待望のKeita Tachibanaプロデュースアルバム!「ジャンルレス」と言いつつ、ジャンル的には世界を意識したトレンドな所(トロピカルハウスとかインディーR&B等)を意識しつつ多様にしてるけど、一人で作ってるだけあって全体に統一感がある。端的には今作も力作で大満足!!前作のアルバムのように「We Don't Need To Talk Anymore」的なドが付くリードトラックがあるか?ということはあるけど、サブスク解禁に伴い単曲で聞かれることを考えて、メチャ粒立ってる。DA PUMPも超バズったし、三浦大知も『球体』(スゴいのは分かるけど、まだ浸れない…)がTLを賑わせていたけれど、俺はこの一枚を推したい。

7位・・・Analogfish『Still Life』


ミニマルでコーラス凝っててメロウでセクシー。この魅力にメロッメロになってしまった。ジャケットからうかがえる鬱蒼とした感じというのは、楽曲にも聞き取れるところではあるけど、単に暗いとかではなく、「Dig Me?」のようなカラッとしたロッキンな曲もある。土岐麻子「City Lights」的…Bon Iver的な意匠の1曲目、呂布カルマの社会を切り取ったラップ冴え渡る「Pinfu」が特に好き。9曲で33分というコンパクトさも好きなポイント。「君と僕」という狭い世界に関する歌詞が多い印象だけど、それをとりまく「この街」への目配せも怠らないのが流石だ。

6位・・・cali≠gari『14』


 2018年も終わろうかというタイミングで聴いたので、ここに収めた。25周年記念盤という位置付けでもあるので、楽曲のあちらこちら(曲にも歌詞にも)にこれまでの楽曲の断片が見え隠れするのだけど、懐古的なつくりではなく2018年のcali≠gariにアップデートされていて聴き応えは十分。アルバムに勢いをつけてくれる石井秀仁による前半の楽曲も好きだけど、本作は最後の桜井青さんによる二曲が素晴らし過ぎるなあ。「青春狂騒曲」や「スクールゾーン」や「月光ドライブ」などの流れをくむ疾走感溢れた「いつか花は咲くだろう」、前作からの流れを感じるDEAD END「Princess」黒夢「Kingdom」のようなメタリックで重厚な「死は眠りを散歩する」は必聴。

5位・・・Mr.Children『重力と呼吸』


アルバムについてはこっちで紙幅をとって述べたので、割愛して。アレンジがちょっと古くないか…とか、何か色々思う所はあったけど、あれ、結局めっちゃ聴いてるな?このアルバム?てことは俺このアルバム、大好きじゃんかよ!!という何とも単純な。そういうことでこの位置に。

4位・・・SOLEIL『My Name is SOLEIL』


 上半期選出の一枚。今年はSOLEILは二枚アルバムをリリース(2ndもここに名を連ねてもいいくらい素敵な一枚)していて、そういう所も60sライクだなーと思いつつ、収められた手練れ達によるオールディーズポップスへの愛に溢れた楽曲には心動かされまくった。情報量が多い楽曲もそりゃ魅力的だけど、シンプルで短くてキラキラしてキュートな楽曲もそれに勝らずとも劣らず魅力的だ。

3位・・・lyrical school『WORLD’S END』


 上半期選出の一枚。選出した20枚を見返してみてもラップというものへの関心の高まりがわかるのだけど、この一枚が一番ヒットした。どの曲もやっぱ超キャッチーだし、「世界の終わり」というタイトルに掲げたテーマと、楽曲に現れている「夏」のイメージが上手く溶け込んで全体として、何とも言えない切なさを生み出していて一枚として大好き。これからリリースされる(された)楽曲もゴキゲンな仕上がりだし来年のリリスクにも注目だな。

2位・・・cero『POLY LIFE MULTI SOUL』


 上半期選出の一枚。聞けば聞くほど体に馴染んでいく感覚もありつつ、「Waters」は聞けども聞けども掴みきれず、だからこそ尚聞くという調子で。ライブで体感して、このアルバムのテーマに触れるというのはいい経験だったし、またツアーあったら行きたいなあ。メイクサムノイズの方も、もちろんさせていただきますので。

1位・・・清春『夜、カルメンの詩集』


 上半期選出の一枚。これまでの全ての活動がこの一枚に息づいているのだろうなあ…。清春というミュージシャンは飽きっぽく、衣装を着替えるが如く長いキャリアの中で次々に色んな音楽をバンドで、ソロ活動で試してきた。そして50歳という年齢を前に、着るべき衣装を身にまとった。それがアコースティックかつスパニッシュなサウンドだったのだろう。また、昔のような特徴的なビブラートはこのアルバムでは皆無だ。しかしハスキーな高音と節回しで今の「清春」というものを提示している。今の清春の旨味を百二十分に味わえる素晴らしいアルバム。

2018年リリースの聴いたアルバムはここにまとめました。

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