深センで売っている偽iPhone Xを触って&バラしてみる

概要

中国最大の電気・電脳街である深セン・華強北で販売されている偽iPhone Xをとあるベテランエンジニアの方のご協力により入手できたため,上海滞在中に試用・分解し,メインのボードの詳細については日本で調査しました.

なお,今回の偽iPhone Xは11月中旬に購入したもので,店主の言い値が800元(約13800円),購入価格は750元(約12900円)とのことでした.

筆者・鈴木の過去のアクションカムやスマホ等のガジェットの分解記事はこちらにまとめてあります.あわせてご覧ください.

外箱

箱はきちんとした化粧箱になっていて,特に作りが雑ということもありませんでした.

側面には"iPhone"の文字がありました.

箱のうら側には256GBモデルやAppleの住所の表記などがありました.シールもいかにもApple製品という感じのマットクリアのシールになっていて,箱はかなりよくできているという印象でした.

付属品

さて,次は付属品です.

付属品としてLightningの有線イヤフォン,充電器,ガイドの紙が入っていました.

充電器のプラグは日米と同じAタイプで,刃に丸穴が開いている,日本でよく見るタイプのものでした.中国でAタイプのプラグを持つ充電器を買うと,葉の部分に丸穴がないものも多いのですが,ここは米国モデルに合わせたというところでしょうか.

本体外観

本体外観は本物にかなり頑張って似せたなあという印象です.(照明の都合で汚れが目立ってしまいすみません…)

カメラのあるあたりをよく見ていただくとなんとなく見えるかと思うのですが,iPhone Xの特徴的な画面上部のM字を再現するべく,カメラおよび通話用スピーカーがあるあたりと,その周辺で塗装が異なっています.カメラのあるあたりは透過度の低い黒塗装ですが,M字の切り込み部分にはまるでその下に画面があるかのような,若干透明感のある塗装になっています.一方で,実際に画面のあるエリアと,M字の切り込み部分の色合いもまた異なり,あくまで切り込み部分は飾りだということが分かります.

背面にはやはりiPhoneとの刻印がありました.あくまでiPhoneであると主張するようです.カメラも2個ついているように見えます.(後述しますが見えるだけです)

起動してみる

一通り外観をチェックした後,偽iPhone Xを起動してみました.まずは動画をご覧ください.入手時から日本語設定になっていました.どこかですでに日本語設定に変更されていたのだと思います.

そこまで動作がもたつくこともありませんでしたが,ハイエンドスマホほどの滑らかさも感じられず,といったところでした.

ソフトウェアの見た目もiOSおよびiPhone Xのものに似せようとした努力が感じられました.動画では起動画面等がわかりやすいかと思いますが,上の写真の通り,画面四隅が角丸になっていたり,画面上部のM字の切り込みの再現が行われていたりします.

しかしながら,筐体側にあるM字の切り込み状の装飾の下端がディスプレイの上端になっているため,二重にM字の切り込みがあるような状態となり,かえって上部に大きなベゼルがある変なスマホになってしまっています.

ただ,このM字の切り込みがソフトウェア的にも再現されているということは,偽iPhone X専用のAndroidをビルドしている人が何処かにいるということになるかと思います.単にお遊びなのか,そこそこ儲かるからそういうビルドを作成しているのか,気になるところです.

インストールされているSafariを立ち上げ,ユーザーエージェント情報(サーバーに通知されるブラウザの情報)を確認した所,以下のようになっていました.

Mozilla/5.0 (Linux; Android 7.0; IPHONE 8 Build/NRD90M; wv) AppleWebKit/537.36 (KHTML, like Gecko) Version/4.0 Chrome/51.0.2704.92 Mobile Safari/537.36

ユーザーエージェント情報がどこまで信用できるかは本当に分かりませんが,部分的に信じるのであればAndroid 7.0ベースのようです.

また,微妙に詰めが甘いというか,想定していなかったのか,最初からインストールされているApp Store以外からapkファイルをダウンロードしてきてソフトウェアをインストールしようとすると上記のような画面が出ました.また,この画像の通り,スクリーンショットを撮ると角の部分は黒くなっていました.

最後に,中国国内版のスピードテストアプリをインストールして,WiFi使用時と携帯回線使用時(China Unicom・中国大陸版SIM)で速度を計測しました. ホテルのWiFiでは下り35.18Mbps/上り34.73Mbps,携帯回線では下り8.72Mbps/上り1.87Mbpsだったため,この手のスマートフォンにありがちな2Gのみ対応,というわけではなさそうでした.

本体の分解

さて,次は本体の分解です.本体をぐるっと見回してみると,ネジはLightningの左右の2つだけでした.ネジは本物のiPhoneにも使われる特殊ネジで,これがあるだろうと予期してわざわざ日本からこのネジに対応するドライバーを持っていったのですが,残念ながら回しても回しても空転しているような雰囲気でした.

すべてのパーツがLightningの左右のネジで固定されているということも考えにくいですし,よく観察すると(というか,実は上の写真でもよく見るとそうなっているのですが)背面パネルはちょっと浮き気味になっていて,背面パネルは粘着テープで固定されていそうだということがわかりました.

同じく日本から持ち込んだ分解用ピックを隙間に差し込みこじっていくと簡単に背面パネルは外れました.

しかし,背面パネルを剥がしたところには筐体の内部フレームやシールがあり,基板はほとんど見えない状態でした.前回分解したスマホはここで基板やバッテリーがよく見える状況になったのとは対照的です.

シールを剥がすと,シールドに囲まれた基板らしい部分がよく見えるようになります.前回のスマホでは筐体内部フレームがダイキャスト製で,これがシールドも兼ねているという構成でしたが,こちらは基板に板金が取り付けられているよく見るタイプのシールドとなっていました.

一方,シールを剥がしてもネジの頭が現れず,ネジのもう一方の端部が見えるだけでした.また,この時点ではバッテリーは全く見えませんでした.この状況から,基板類はおもて(画面)側から筐体内部フレームにネジ止めされていると考えました.

しかし外から見えるネジはLightning周辺の2本しか無く,手応えもないので,やはりこちら側も貼り合わせだろうと考え,同様にピックで剥がしていきました.

ピックでぐるっと一周剥がすと,このようにディスプレイ部が分離し,中の基板が現れました.手で持っている部分がディスプレイ部です.

ディスプレイ部から伸びているケーブルを取り外すと,ディスプレイ部と中央部が完全に分離しました.やはり基板はおもて側からネジ止めされていました.また,ここまで分解してからよく確認した所,一応爪のようなものでも固定を行っているようでした.さらに,Lightningコネクタは緑色の小基板に分かれているということがわかりました.この基板には特にICは搭載されていないようでした.

中央部からバッテリーを取り外すとこのようになっていました.前回のスマホと同様の鉛合金のような板(前回のスマホは棒状でしたが)がバッテリーの下に敷いてあり,これがボタンなどへ伸びるフレキシブル基板などを押さえる役割を果たしています.

バッテリーには"SUN3036114P 1600MAH 1709W"と記入がありました.3036114なので,厚さ3.0mm,幅36mm,長さ114mmということになります.前回のスマホは323085の1200mAh品だったので,iPhone Xサイズな分大容量化しているようです.

また,基板についても前回のスマホとは異なり,L字に折れ曲がったメイン基板ではなく,細長いI字状のメイン基板でした.

筐体内部フレームは前回のスマホと同様に金属と樹脂の一体成形になっていますが,樹脂パーツも金属パーツも凝った形状の部分が大幅に減っているように見えました.特に金属パーツが薄くなり,板状に広がっている部分は厚さ0.5mmの薄板でした.

前回のスマホは基板を保持する金属パーツ部はダイキャスト部品に見えましたが,こちらは金属板を打ち抜いて製造しているのではないかと思います.0.5mmの薄板であるため,金属パーツ部にネジを切っているのではなく,樹脂パーツの部分にナットのようなパーツを埋め込むことで固定用のネジ穴を確保しています.

前回のスマホは背面パネル,筐体内部フレーム,ディスプレイ部の3つに分けたときに,筐体側面のエリアは背面部分と側面部分が一体になったアルミ削り出しのパーツ(諸事情で前の記事でも特に触れてはいませんが…)が覆いかぶさるようになっていたのですが,偽iPhone Xでは側面のパーツは筐体内部フレームにくっついていました.おそらく,薄板と側面金属パーツと樹脂,という組み合わせで一体成形しているのではないでしょうか.

また,薄板の部分には"170917"との記入があり,その下のフレキシブル基板にも"2017/7/10"とあります.つまり,iPhone Xの発表(2017年9月12日)よりも前にフレキシブル基板は製造され,筐体の金属パーツも発表から5日で製造されている可能性がある,ということになります.

また,背面カメラは1個であり,もう一つのカメラのように見える穴はプラ部品による装飾がされているだけでした.

基板のチェック:うら面

さて,一通り筐体部分の分解を終えたので基板のチェックに移ります.左端に見える黒いプラ部品は筐体下部に入るスピーカーです.中央部に見えるのがSIMカードスロット,左側に見える板金でできた2分割されたパーツはmicroSDスロット(ただし外部には露出しません)です.また,基板には"A8098P_MB_V2.0 2017/08/05"という表記がありました.

うら面に関しては小物部品が多く,素性がわからないものも多くありました.ともかく,左側から順に説明していきます.

まず,一番左の筐体下部用スピーカーのそばにあるICはShanghai Awinic TechnologyAW8736というオーディオアンプICです.前回のスマホにもこのメーカーのAW8733Aが搭載されていました.AW8736もGSM等の電波によるノイズの混入を防ぐ機能が備わっており,スマートフォン等に使用することを意図したICのようです.

次にその右下,"B9HB7K"という刻印のICは詳しいことは分かりませんでしたが,広東省FOSTER科技集団という企業の広告らしき掲示板への書き込みを見つけることができました.その書き込みによればLED駆動用ICとなっていました.ICの左側にコイルがあり電源関係ICに見えること,右側すぐそばにはディスプレイへ伸びるフレキシブル基板のコネクタがあることから,おそらくバックライトのLEDを駆動するためのICだと考えられます.

次にその上の"944E40"というICは残念ながら素性が分かりませんでした.似たようなICが前回のスマホにも搭載されていましたが,そちらでも素性が分からず,手強い相手といったところです.先頭の9が大きいこと,刻印のフォントが大きいことなどから,前回のスマホと同一メーカーのICであることは間違いなさそうです.

その上にある"27J"という刻印のあるICも,詳しいことはわからなかったのですが,10ピンのQFN(Quad Flat No-lead)パッケージであり,USBのD+/D-信号線のテストパッドの直後にあることなどからUSB関連のICではないかと疑い,検索したところ,同一のパッケージのUSBの信号線向けアナログスイッチ(電子的なスイッチ)ICが各社から出ていることがわかりました.

さて,なぜUSBの信号線にアナログスイッチを挟まなければいけないのでしょうか.少し考えましたが,答えはイヤフォンにありました.

上の写真は付属品のLightning端子の付いたイヤフォンのコネクタを分解したところです.ご覧の通りコネクタには本体から流れてくるデジタル信号をアナログ音声信号に変換するDACや,マイクの音声をデジタル信号に変換するADCなどは搭載されておらず,裏表どちらの向きに刺してもいいように,裏表で左右対称になる位置のピンを相互に結線する基板が入っているだけでした.

通常のLightning端子を備えたイヤフォンはDACやADCを備えていて,イヤフォン側でデジタル信号とオーディオ信号の変換をしています.しかしながら,付属品のイヤフォンにはその機能がありません.そこで,おそらく本体側のアナログスイッチでLightning端子にUSBの信号を流すかアナログオーディオ信号を流すかを切り替えているのだと思います.誰もやらないとは思いますが,少なくともこのイヤフォンを本物のiPhoneに接続しても音は鳴らない(最悪本体かイヤフォンが壊れる可能性もある)ということになります.

ちなみに"27J"と似た"27V"という刻印のICは前回のスマホにも入っていて,こちらも外部接続端子へ伸びるフレキシブル基板近辺かつオーディオアンプICのそばに取り付けられていたため,同じような目的のICであると考えられます.

さらにその右上にあるICは毎度おなじみ台湾Richtekの1.8V LDOであるRT9030-18GQWです,前回のスマホにもまったく同じICが搭載されており,その際は自信がないと書きましたが,2個分解してどちらも電源回路のようなパターンが見られるので,このICで間違いないかと思います.

次に一気に右へ行って基板の下辺に取り付けられている"a2524F"という刻印のあるICですが,こちらも残念ながら素性が分かりませんでした.しかし,似た形状,刻印を持つICが前回のスマホにも搭載されていることや,今回の偽iPhone Xでも前回のスマホでも同様にメインのSoCの近辺に取り付けられていること,さらに今回の偽iPhone Xは画面が自動回転すること,他にそれらしい部品がないことからこれは加速度センサなのではないかと考えられます.

最後に,基板右端にある"N7"という刻印のある3端子の部品は韓国KECのKRC420という抵抗内蔵NPNトランジスタです.集積度の低い単品のトランジスタではSOT-23という,今回の部品でいうところのB9HB7Kの足を3本(片側に2本,もう一方に1本)に減らしたような形状のものが出てくることが多かったのですが,このトランジスタはそれよりもさらに小さいSOT-323パッケージになっていました.基板サイズを小さくするためのチョイスなのでしょうか.KRC420は2個搭載されており,1つは背面カメラ用LEDの裏に,もう一つは前面カメラおよびLEDへ伸びるフレキシブル基板のコネクタ付近に取り付けられているので,これらのLEDのON/OFFに使われているのではないかと思います.

基板のチェック:おもて面

基板おもて面については,写真の通りシールドがはんだ付けされていたため,こじって取り外しました.

うら面の部品数がかなり少なかったため,おもて面にはそれなりに部品が載っているのだろうという予想を裏切るように,こちらの面も大きい部品は少ないように見えました.こちらも左側から順に説明していきます.

一番左にあるのは台湾MediaTekのMT6350Vという電源ICです.各部に供給する多数の電源やバッテリーの充電管理を担っているようです.刻印を見ると,"1718"とあるので,おそらく2017年第18週(5月7日~13日)に製造されたものです.

次に中央部左下,正方形の大きめのICが北京HunterSun ElectronicsHS8684です.このICは2G規格の信号を増幅するICです.HunterSunのICは前回のスマホでも使用されていました.

HS8684の上にある長方形のICも同じくHunterSunのHS8358で,こちらは3G規格の信号を増幅するためのICです.前回のスマホと違い,偽iPhone Xにはこのように3G規格対応のICが搭載されていることや上海でのスピードテストの結果からやはり3Gには対応しているといえそうです.

HunterSunの2個のICの隣にある"K012"および"K052"という刻印のある部品ですが,こちらは正体がよく分かりませんでした.メインのSoCから伸びている信号線が入っているように見えるので,高周波信号のマッチング(電気的整合性)を取る部品かもしれません.

その右隣の大きいICがメインのSoCであるMediaTekのMT6580です.Cortex-A7,1.3GHzのクアッドコアという点は前回のスマホに搭載されていたMT6582と同様ですが,アスペクト比18:9のディスプレイに対応する他,MT6582では別チップ(MT6166:2G/3G,MT6627:WiFi/Bluetooth/GPS/FM Radio)に分けられていた高周波回路も1チップに集積しているSoCになっています.基板を見たときに部品数が少なく感じたのはこの部分の集積度の向上の影響が大きそうです.こちらのICには"1721"と刻印があるので,2017年第21週(5月21日~27日)の製造品だと思われます.

その隣にあるのはSamsungの1GBのLPDDR2 DRAMと4GBのeMMC Flashを1つのパッケージに格納したMCP(Multi-Chip Package)のKMKJS000VM-B309です.同様のMCPは前回のスマホでも使用されていました.このICがメインのストレージとなるので,箱に書いてある"256GB"の表記は全くの嘘,ということになります.もちろん,256GBのmicroSDを内部のmicroSDスロットに挿せば256GBモデルができ上がる可能性はあります.(ソフトウェアがそれだけの容量のmicroSDに対応しているか不明なのと,なにより2017年末時点で256GBのmicroSDは13000円程度するので,本体価格とほぼ同じになってしまうので,そんなことは誰もしないと思いますが…)

さらに,このICには前回のスマホにあった「Cマーク」にそっくりな,中に書いてある文字が"F"に変わったマークが刻印されていました.今回の偽iPhone Xでこの刻印があったのはこのICだけでした.このマークが何を意味するのかについての考察は前回の記事をご覧ください.

右端にあった"C162"と"9F"という刻印のある部品ですが,どちらも該当する部品を見つけることができませんでした.この部分も小さいシールドで囲われていたことや,すぐ裏側にWiFiのアンテナへのポゴピン(スプリング入りできちんと接点に適切な圧がかかるようになっているピン)があったことから,WiFi関連の信号のノイズ対策やマッチングを取るための部品ではないかと思います.

ディスプレイ関連

次にディスプレイ周辺の部品について書きたいと思います.

まず,前回と同様に定規とLCDパネルを同時に観察する方法でディスプレイの1mmあたりのピクセル数を数えた所,約11pixels/mm(279dpi)であることがわかりました.ディスプレイのエリアが125mm×63mm(5.5インチ)程度(実際には表示されない飾りの切り欠き部を除く)であるので,そのまま計算すると1375x693pixelsということになります.アスペクト比は18:9ののようなので,典型的なピクセル数が分かりませんが,MT6580の上限である1440x720pixelsに近いパネルを使用しているようです.また,いわゆる「Full HDではないHD」のディスプレイということになります.

ディスプレイ背面の刻印等は上の画像のとおりです.一番下(カメラ側なので実際には筐体上部です)のプラ筐体部に"9898"という刻印がありました.筐体内部フレームにも"9898-DK1"という刻印があったので,この偽iPhone X筐体のコードネームなのかもしれません.

また,中央部の刻印に"ST7708"とありますが,これは台湾SitronixのLCD制御ICの型番を指しているのではないかと思います.公式Webサイトにはそのものの型番はありませんが,Sitronixの"ST7xxx"型番のLCD制御ICを搭載したLCDモジュールはよく見かけます.

ディスプレイへのフレキシブル基板には2つのICが搭載されていました.1つは前回のスマホと同じ米国FocalTech SystemsのFT6336が搭載されていました.もう一つは刻印が読み取れませんでしたが,前回のスマホに載っていた,似たようなパッケージのILI4003と同様の電源ICではないかと思います.

カメラ関連

最後にカメラです.左側が前面カメラ(+LED),右側が背面カメラです.前回のスマホと同じく"QHX"から始まる型番がフレキシブル基板に書いてあります.また,型番の途中に"GC85"という,センサの型番らしき文字列が入っている点も同じです."GC"とあることから,前面カメラはGalaxyCoreではないかと思われます.

前面カメラのレンズは切り込みを入れると簡単にはすずことができました.いろいろな方向から光を当てて観察してみましたが,センサー受光面には特にヒントになるような文字列は見つかりませんでした.

ヒートガンで加熱することでセンサーだけを取り外し,裏面を観察しましたが,"YECK"というマーキングがあったものの,型番に関連する情報は得られませんでした.

背面カメラも簡単にレンズモジュールを取り外すことができました.

レンズモジュールを取り外した後によく観察すると,ICが一つ埋まっているのを発見しました."2=7 1IF"とあり,刻印に"="が入っているという特徴からRichtekのICではないかと思います.マーキングリストには該当はありませんでしたが,ノイズにシビアなセンサー部の電源を供給するために電源ICをセンサーの近傍に取り付ける,ということはあり得ると思いますし,CMOSカメラセンサ向けローノイズ電源ICをRichtekは供給している(SJ5000X Eliteの分解記事で出てきています.)ので,Richtekの電源ICであるという推定は妥当だと思います.

さらにこのセンサーモジュールもヒートガンで加熱することで,フレキシブル基板から取り外すことができました.裏面には"S5K3H7-PLCC-A"という文字が印字されていました."S5K3H7"はSamsungの8MP BSI(裏面照射)CMOSセンサーです.このセンサーモジュールのフレキシブル基板には"3H7"という記述があるので,前回のスマホの時点から立てていた「カメラのフレキシブル基板の印字は型番の一部である」という仮説をある程度裏付ける証拠を得ることができました.

しかし,前面カメラで写真を撮影すると3072x1728pixels,背面カメラで写真を撮影すると4608x2592pixelsのファイルが得られます.S5K3H7は3264x2448pixelsのセンサーです.したがって,何らかのアップコンバートが行われているか,S5K3H7と書いてあるものの,実際には異なるモジュールが搭載されているかのいずれかが疑われます.大型のCMOSイメージセンサーを製造しているメーカーは少ないので,それなりにまともなセンサーが搭載されていることだけは間違いないとは思います.

所感

記事中でも言及しましたが,メインのSoCに高周波回路が統合されたため,前回分解したスマホに比べて部品数が少なくなり,スカスカの基板という印象を受けました.これだけの部品数でモダンなOSが動き,通信機能まで備えたシステムが完成するのは驚きです.ただ,本物のiPhone Xに見劣りするどころか同じ価格帯でももう少し良いスペックのスマートフォンが買えると思うので,やはりネタ商品はネタ商品なのだという感想です.

また,メインのSoCこそ異なりますが,正体の分からなかったICを含むSoC周辺のICやカメラモジュールのチョイスが前回のスマホとかなり似ていることや,基板の型番の付け方などの特徴から,おそらくこの偽iPhone Xの設計は前回のスマホと同じ所で行われているのではないかと感じました.最近発売された深センでEMSを経営する藤岡さんの著書『ハードウェアのシリコンバレー深セン」に学ぶ−これからの製造のトレンドとエコシステム 』に詳しく書かれているような「方案公司」の中に,このような偽iPhone Xを中心に手がける企業があるのかもしれません.

本記事は投げ銭記事です

本記事は投げ銭記事となっています.面白いと思った方は投げ銭(記事末尾の「ノートを購入する」から購入 or その下の「サポートをする」から自由な金額を投げ銭)をいただければ嬉しいです!(特に今回は偽iPhone X代が高くついております…)

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