ショートショート「次世代転送装置」

かなーり未来。

「転送装置」が開発されてすでに数十年が経とうとしていた。

開発者の天才博士はすでにこの世に無く、

生まれた時から「転送装置」が存在した世代が

その研究を受け継ぎ、

次世代「転送装置」の開発競争が起きていた。

本来の目的であった「輸送」を超えて

医療方面への利用も発達し、

健康時の身体データを登録しておけば、

なにかの病気、怪我にあった場合も

一瞬で完治するという使い方は

特筆すべき効果だった。

人間を構成する素材は、地球上にあふれていた。

その素材を使っての再構築で

どんな病気も怪我も一瞬で治ってしまう。

人類の夢が実現したのである。

この技術さえあえば、不老不死も実現する。

ただ、まだその技術は開発されたばかりで、

理論的には「不老不死」になれるはずだが、

この技術を利用してのそれまでの最高年齢をうわまわる人が

現れるまでには至っていない。

また、転送装置の数にも限りがあり、

すべての人が使えるわけでもなかった。

ひとにぎりのお金持ちや政府の高官に限って

ゆるされる程度の台数しか存在していなかった。

あと、こういった機器にはありがちのトラブル対策も

問題が残されていた。

エンジニアがいることはいるのだが、

全てを把握できているとはいいがたく、

わからないことがあると本部のスペシャリストに

電話で聞きながらの対応だった。

いずれ、転送装置が安価になり、

テレビのように一人一台、いや数台のものになっていくのだろうが

そこにいきつくためにはまだまだ壁があった。

「博士、転送装置がひとびとに行き渡る時代は

いつくるのでしょうね」

「そうだな、テレビやコンピュータのように

安価になれば一気に行き渡るんだがね、

なんせ高価なものだからね」

「転送装置はいまやいろんな用途で利用されていますが、

安価にすることに特化した研究は行われていないようです。

わたしたちがそれをするわけには?」

「たしかにそうだ。実は安価にする方法は考えているんだよ。

転送装置で転送装置を作ればいいだけさ」

「なるほど、転送装置という名前が邪魔して

そういう発想はありませんでした。

コピー機としての利用もできるわけですね。」

「そうなんだよ。実は転送装置は3Dコピー装置でもある。

しかし、その方向で世間が知ってしまえば、

その影響が怖いともいえる」

「その影響というと。。。そうか!! 人間にも応用されると?」

「当たり。コピー人間が大量生産されてしまう。

開発者の博士はこのことを予想してあえてその方向を

世間に知られないようにしていたんだよ。」

一方博士の自宅ではもう一人の博士が家事をやっているところだった。

「もうすぐ研究係の博士が帰ってくるころだ。

いまは2人だけど、あと2人はほしいなー。

そうすれば研究も家事も楽になる」

博士はすでに自身のコピーを作成していたのだった。

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jabara

ショートショート集「転送装置のめぐみ」

転送装置をテーマに4世代にわたるショートショートSF小説を書きました。
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