見出し画像

頑張っているのに、なぜか売れない④

「コッ、コミュニケーションの促進ですか?」

鶴井君、今までこんな事を考えた事もなかったため、内心どのように切り返そうか頭をフル回転させていた。

今でこそメールはもちろん、Outlook、サイボウズやデスクネッツといったグループウェアが普及していますが、当時はWindows95が販売されたばかりで、電子メールもこれから普及が始まろうとしていた時代。

Windows95の発売以降、各種ITツールの革新が進みつつあり、ちょうど従業員間のコミュニケーションを促進するためのITツールがトレンド成長期の真っただ中にあったのです。

各社とも我負けじと、一刻もはやくコミュニケーションツールを導入して、社内のコミュニケーション強化を進めようとしていました。

田中課長はもちろんターゲット商品はリサーチ済み。ただ社長から「相見積りを取って、より好条件に導入できるものを選定しなさい」という指令が出ていたのです。

はじめて聞いたワードに混乱しつつも、ここは磨いてきたトークスキルを発揮する場面、そう思った鶴井君、開口一番、

「コミュニケーションの促進を進めるためには、まず普段からの挨拶ができることがとても重要なことだと思います」。

「ITツールをいきなり導入するのではなく、本当に皆さんが自然に挨拶ができるようになってからでも、遅くはないと思いますよ」。

「まずは朝と夕方にそれぞれ担当を決めていただいて、会社の出入り口付近に立って、挨拶声がけ運動などをされてみてはいかがでしょうか?」。

「それから…」、

「なるほどね。じゃあ、例えば、営業部と製造部とに部門が分かれるだけでも、見えない壁ができてしまうんです」。

「その見えない壁のせいで、当社では部門間のコミュニケーションがなかなか進まないので大変困っているのです」。

「もし、これが解決できたなら、当社の生産性はさらに上がるはずだと考えているのです」。

「これはどうやって解決したら良いと思いますか?」。

「それはですね、ええっと、ええ~と。ええ~~と」。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?