うたた寝

うたた寝して見た夢は、自分が金縛りに遭っているところから始まった(これは多分本当)。

私は床で寝ていたけれど、向こうのベッドにはあの人が寝ていた。

(なんとかしてあの人のところまで行かなくちゃ)
必死でそう思って、まず声を出すことから始めた。
「あうう、ううう」
声が出た(多分本当に声を出していた)。
私はやっとの思いでベッドに這い上がった。
いつもなら、ここまで身体が動いた頃には金縛りも解けているんだけど、この時だけはあの人の側まで這って行ってもまだ、身体の自由は損なわれたままだった。
動かない身体を、それでもあの人に寄り添わせた。

(今までずいぶん長いこと、私はこの人を優しく抱き止めることをしてこなかった)

私は、贖罪の念を強めながら、まだ半ば麻痺したままの身体をあの人に押し付けた。
あの人の温もりが伝わってくる。

(ごめんね、ごめんね、何十年も…)
と思ううちに、ふと現実に気づいてしまった。
私とあの人は、「何十年も」というその前から、もうそんな関係ではなかったのに。
あの温もりは、もう二度と再び味わうことなどできないのだ、…
そう思ったら、涙が溢れてきてしまった。

同時に、目が覚めた。
私は、そのまま泣き咽んでしまった。

夢は、罪深いことをしてくれる。

私が最後に愛したあの人。
どうやら、他には誰もいないようだ。
これは本当にそうなりそうだ。
…ということは、死ぬまで変わらないのか。
仕方ない。
誰にも伝わらないし理解してもらえないけれど、
それでも私はこの愛を誇りに思う。
あの人をこんなに未練がましく今でも愛していることを、私は一人ひそかに、しかし強く、誇ることにしよう。

自分でも不思議だ。
こんなにいつまでも、思い続けられるなんて。
そのために、決して何かしようとも思わない。
それでも、捨ててしまったり無かったことにしてしまったり、そういう都合の良いことも、決してできない。
ただ、思うだけ。

こんな愛の形も、あるのだな。

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