【レビュー】SAMURAI SESSIONS vol.3- Worlds Collide -


初めてCDレビューを書きます。

多分(Amazonのカスタマーレビューを除けば)いちばん早くレビューしてます。確信はございません。


SAMURAI SESSIONS vol.3- Worlds Collide -とは?


ざっくりいうと、アメリカを中心に活動しているギタリストMIYAVIが、12月5日に出した、コラボアルバム第3弾です。

コラボと言っても、全く違うジャンルの人たちとセッションしています。

その中でも今回はWorlds Collide(世界の衝突)とサブタイがついているだけあって、邦楽洋楽関係なし。ごちゃまぜです。しかもジャンルレス。その中でMIYAVIはギターを弾いているのです。すごい。


で、どんな評価なんですか。


結論から申し上げますと、控えめに言って賛否両論です。

特に今回は洋楽のエッセンスが従来と比べて大きく入っているので、普段邦楽ロックしか聞かない人は拒否反応を示しています。(とはいえ、洋楽のエッセンスそのものは「The Others」あたりからかなり組み込まれています。)


そういう人は、潔くSAMURAI SESSIONS vol.2を聞きましょう。あれはかなり邦楽に寄せています。


また、「以前のスラップ奏法を中心に音楽を組んでほしかった」という声も散見しますが、MIYAVIはスラップはもうそこまで重視していません。あくまで必要ならやろう、程度のものになっていると思います。

結局のところ、メジャーで魅力的というのは「メロディ」なのです。そこに気づいたMIYAVIは、アルバム「Fire Bird」からかなり強烈なギターフレーズを組み込んでいます。ってかFire Birdのソロフレーズは、今でも聞くとしびれます。こんなに鮮やかでかっこいいソロあるんか、と。当時は衝撃を受けました。

この辺については、MIYAVI本人がエッセイで語ってくれてるので、そちらを読めばいいんじゃないかな!



と、いうことで、今作でスラップはほぼほぼ出番がありません。
ただ、個人的にはスラップを諦めているわけではないと思ってて、むしろこれがMIYAVI単体でアルバムを出すなら、結構使ってくると予想してます。

臨機応変、という言葉が一番しっくりくるのではないでしょうか。

それではレビューのほうに移ります。

分かりやすいように、星5つで「おすすめ度」という形で採点も行ってます。採点基準は完全に私の好みです。

また、サミュエル・L・ジャクソンのイントロについては採点、レビューをしてません。いや、確かにすげええってなるけどさ。それしかないんです。


Rain Dance [vs 三浦大知 & KREVA]

おすすめ度:★★★☆☆

聞けば聞くほどおもしろい。



既視感がすごかったんですよ。

SAMURAI SESSIONS vol.3、Yahoo!ニュースで待ちに待ったコラボ相手発表!さぁ、誰が来る!!ああ、はい。といった感じだったんです。

実はこの2人が見えた時点で、なんとなく予想してました。「どんなことがあっても俺たちは前に進まなきゃいけないんだ!」みたいなメッセージを乗せてくるだろうな、と。
だって、vsKREVAの時も、そういう曲だったもの。


予想は当たったと思います。だからかな。初めて聞いたのに既視感があったんですよねえ…


日本人から見れば、本アルバムについて、正直この2人以外のアーティストについては「誰?」といった感じでしょう(僕もAK-69、シシド・カフカ、hide以外はそうでした)。

だからでしょうか、すんなりと違和感なく耳に入ってきてしまうんですよね。今までは「おぉ、すごく新しい音だ!」みたいな感覚があったんですけど、今回はその変化をうまく聞き取れなかった。や、フレーズは好きなんだけどね。ほんと。ほんと。


ちなみに、PVだと曲の一部がカットされています。


U.G.L.Y. [vs DUCKWRTH]

おすすめ度:★★★★☆

In Crowd・Runwayとセットでどうぞ。


ダックワースはラッパーで、本曲はアコギから展開していく、まさしく王道の洋ヒップホップ/ファンクです。

uglyとは「ブス・醜い」などの意味があります。そのへんのコンテキストもザ・洋楽って感じ。後述の「Runway」と比較すると、「ギタートヒップホップ」という大枠の共通点はあるのに、国境1つでここまで曲風が変わるのか、と楽しめると思います。


In Crowd (Remix) [vs Bok Nero]

おすすめ度:★★★☆☆

U.G.L.Y・Runwayとセットでどうぞ。


2018年頭にリリースされた「In Crowd」のリミックスですね。Bok Neroによってヒップホップの要素が足されています。エレキも相まって、こちらはややトラップよりのジャンルになっているでしょうか。

U.G.L.Y.と比較すると「あぁ、ギターの比率を変えるとこんな感じになるのね」となりますね。


Runway [vs AK-69]

おすすめ度:★★★★☆

いい!試みがとても面白いです。


AK-69といえばヒップホップの人ですね。いろんな人とコラボしているので、ヒップホップを聞いてなくてもAK-69を知っている、という人は多いのではないでしょうか。かくいう僕も、UVERworldがコラボしてたな!というところから知りました。

曲調はもちろんというか、ヒップホップ+ロック。ヘビーなAK-69のヴォーカルに、低めのギターが流れてきます。2分10秒くらいまでは。

後半から「Runway」のタイトル通り、ギターが走り始めます。かっこいい。そこまではゆっくりとストロングな感じだったのですが、一転。そこに疾走感が流れて、アメリカをドライブしてるような感じに陥りました。爽快ですね。


I’m So [vs NVDES & Seann Bowe]

おすすめ度:★★★★☆

こういうリズム感は癖になりますよ。ええ。癖になってます。


NVDESはロスで活動している音楽グループですね。扱っている音楽はジャンルレスです。一応ポップとしておきましょうか。

NVDESの作曲ベースで、そこにMIYAVIとSeann Boweを足したような感じです。多分。ジャンルはEDMでしょう。

リズミカルな曲調のまま「I'm so...」と展開していきます。

歌詞のつけ方とか、メロディの展開とか、NVDESだなあ、といった印象です。ものすごく特徴的。


Easy [vs Betty who & RAC]

おすすめ度:???

英語力不足で印象に残ってないです…すみません…分かったら評価したい。


Betty Whoはポップシンガーで、これもまたポップに仕上がっています。

アメリカのホームドラマに出てきそうな音楽してる。

曲はどんなテーマなんでしょう、これは…??「Burning me up like a fire」って詞から、高校生くらいのラブソングのポップスかな、と思ったんですけど、そんな気もしないんですよねえ…僕よりうまい人の和訳を待ちます。



個人的に歌詞が分からないと面白さ1/4みたいなところはあって、個人的に邦楽と洋楽でここまで明確な壁が存在している原因って、やはり言語的な問題だと思うんです。

何言っているかわかんないと共感できない。共感できないということは、インプレッションが生まれないんです。

もちろんそれはある程度フレーズやメロディがジェスチャー代わりになってくれているところはあるけど、最終的にはやはり言語の問題が付きまとうように思えるんですよね。

ゆえに、J-POPは非常に奇特な文化と化していて、お隣のK-POPは世界的にも有名な楽曲を輩出しているように感じます。まぁ、こればっかりはマーケットの問題(どのような音楽がその国の人に響くか?)もあるし、一概に「言語の問題」だけではないですけどね。


Knock Me Out [feat. Mikky Ekko]

おすすめ度:★★★★★

いいですね。とてもいい。


2曲連続でラブソングが続きます。

僕的にはこれがいちばん刺さった。こういうの大好きです。DNCEみたいな感じの。違うけど。

Mikky Ekkoもまたポップを主戦場としていますが、今回のこの曲は、いつものMikkyと毛色が違うように感じます。ドラムとベースがここまでリズミカルに躍動する曲は、Mikkyの引き出しにはなかったように思えます。

「Knock me out」

Knock Outという言葉を聞いたことある人は多いと思います。ボコボコにする、みたいな感じです。そこにmeがつくと「私はボコボコにされる」となります。

なんのこっちゃ分からんと思いますが、歌詞から推察するに「僕は君にメロメロだ(うちのめされている)」みたいな翻訳で多分あっているでしょう。間違ってたらゴメンナサイ。



個人的にギターソロに挟まれる「Knock me out」が大好き。



Gentleman (Remix) [vs gallant]

おすすめ度:★★★★☆

とても、とても新鮮さを感じます。いい意味でMIYAVIっぽさを感じない。


「Knock me out」とは違ったベクトルのラブソングです。

Gallantはものすごく高いファルセットを持つシンガーです。原曲はそれを存分に生かしてエモい雰囲気を出しています。

今回のリミックスでは、MIYAVIが一番得意なパターンであろう「EDM+ギター」というテイストにカスタマイズしてます。これはこれで、うまくGallantと共存している感じ。


Gentlemanは訳すると「紳士」ですね。

原曲はそれこそ紳士のような歌詞です。「紳士のように君を持ち帰りたい」などと言ってます。紳士も女の子が大好きなんです。いわば隠れ肉食男子。


リミックスではその肉食のような、野性的な印象をギターでより引き立たせているように感じます。

ギターソロが非常に高音で繊細な印象を与えてきます。それなのに、メッセージ力があるのです。Gallantの声をギターにしたらこうなりました。みたいな。個人的にこのギターソロ、結構好きです。


あとベース進行がエロい。ぜひヘッドホンで聞いてみてください。


Pink Spider (Remix) [vs.hide]


おすすめ度:★★★★☆

めっちゃ濃いMIYAVI。アイメイクしてるの貴重。



20年越しのリミックスですね。ここぞとばかりにワーミーを使っています。ギターがとても映えるリミックスになっています。

僕、実はhideの音楽を聴くのはこれが初めてなんですよね…hideが急逝した時、僕2歳ですもん。

聞いてみてなるほど。歌詞解説読んでもう一回なるほど。これは確かに普通のV系じゃないな…多くの人が尊敬する理由がなんとなくわかった気がします。メッセージが死んでから強くなるっておかしいですよ普通。まるで神格化されているみたいじゃないですか。

いや、神格化されてたわ。


曲自体の考察は20年かけて多くの方が行われているので省略しますが、今でも確かに褪せないというか、謎のメッセージ力がありますよね。何回も繰り返し再生してますが、その原因はなんでしょう。あまりよくわかっていません。


Get Into My Heart (Radio Edit) [feat. シシド・カフカ]

おすすめ度:★★★☆☆


僕、個人的にシシド・カフカの声好きなんですよ。ものすごく。

シシド・カフカはドラマーと女優とモデルとシンガーを4で割ったような人です。数年前に「ラヴコリーダ」を聞いたときは、こういうタイプ居なかったなあと思いました。



今回は「シンガー」シシド・カフカと、ギターを組み合わせたらどうか、といった感じでした。が、個人的にはドラムとギターだけのインストが聞いてみたかったなあ…


Our Love [feat. 加藤ミリヤ]

おすすめ度:★★★★★


正直に言うと、加藤ミリヤという名前自体、めっちゃ久々に聞きました。清水翔太や若旦那となんかやってたよな―程度です。マジでそれくらいぶりです。ググってみたら8年ぶりでした。

で、曲の内容はJ-POPです。ラブソングです。しかも、歪んだり、心の奥のドロッとした感じじゃなくて、ストレート160km/h。ラブソングの大谷翔平です。と思って聞きこんでましたが、LGBTについてでしたね。テーマのチョイスも、加藤ミリヤっぽい感じ。

聞きながら、あぁ、そういう引き出しあったんだ!みたいな感じです。アコギがさわやか。エレキもさわやか。こういう軽い表現もあるのね!
PV出すとしたら、ピンクと黄色と花がたくさん出てくるような感じです。



Me and the Moonlight [feat. Yuna]

おすすめ度:★★★★☆

個人的には面白い試みだなと思いますが…


僕、Yunaについては全く知らなかったので、これを書くにあたってTwitterで調べたら…フォロワー240万!!?何者…更に気になって深堀りしました。

そしたら、なんと僕、以前に彼女の曲を聴いたことがあったんですよ。



Usherという、それこそクリス・ハートのようなキレイな高音を出す男性シンガーを一時期Martin Garrix経由で聞いていて、Yunaはそれ経由で一回聞いたことがありました。なんか懐かしい。



Yunaはマレーシア出身にして、世界的に活動するシンガーであります。

今回、どんないきさつでMIYAVIとコラボしたのか気になります。


曲のほうは、落ち着いた感じのポップのような立ち位置ですかね。

Me and the Moonrightということで、夜を想起させるような曲調で展開しています。

歌詞がちょっと面白いというか、これオバケについて歌ってるんですよね。

ギター要素が少なく、完全にポップに寄せた曲調なので、明確に好きと言える人は多くなさそうです。僕は好きですけどね、こういうの…


Fragile

おすすめ度:★★★★★

〔2019/01/31更新〕MV公開。超うれしい。

コメントすると、ときどきMIYAVI本人から返事がもらえるみたいです。もらえた人はうらやましい。


これいいです。ほんとにいい。


かなり落ち着かせた曲ですが、いい意味でMIYAVIっぽさがないです。いい。

MIYAVIの曲の特徴に、韻へのこだわりがありました。

前作の「Slap It」はまさしくそんな感じだったんですよね。あぁ、雅-miyavi-だ、みたいな曲だったんですよ。が、Vol.3になってフタを開けたらまさかのバラード調。

いい意味で裏切られました。そういう表現もできるのですか。ほんとすごい。今回のアルバムは前述の通り、ギターで表現できることがかなり広がっています。それもVol2とは比較にならないほど、です。

vs雅-miyavi-とありますが、残り香が少しある程度で、ほぼMIYAVIです。


Fragileとは日本語で「脆い」ですね。

曲の内容は「君がいなくなったら僕の心は崩れてしまう」みたいな感じでしょうか。60%くらい意訳を乗せてます。そういう脆さですよね。

歌詞に出てくる

「Nothing is perfect

Perfect is a lie」

何もないことこそ完璧。完璧は嘘。

とても深いです。人間は自分を許したその時から死が始まる、と聞いたことはありますが、そういうことなのでしょう。


総評


恐ろしく進化しています。

「Fire Bird」のリリースから2年でここまで引き出しは変わるの…!?といった感じです。

前回のSAMURAI SESSIONS vol.2は「セッション相手5:MIYAVIのギター5」の比率で展開されているように感じました。

それが今回はその比が大きく変化させてきています。ギターが主張するときもあれば、ヴォーカルが引っ張っていく時もある。全部ひっくるめてグルーヴ、みたいな。
今までは「ギターが主役で、その次に全体のライン」だったのですが、今作では着実に「ギターだって全体だって全部ほしい」みたいな、貪欲さを感じます。

と、書いている途中に、「昔のMIYAVIのほうが好きだった」と言ってた人の気持ちも分からんでもないような気分になったんですよね。インタビューで何度も言ってたような気がしますが、"日本のクサみ"(J-POP感)があって、かつギターのフレーズもかっこいい。瞬間的にその層にアジャストしてたんでしょうね。多分。僕は今のサウンドのほうが好きですけど…

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