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JAEAの先輩職員をご紹介!(技術職)

廣田 賢司
青森研究開発センター 施設工務課 

H24.4 東海拠点)プルトニウム燃料技術開発センター 品質管理課 入社プルトニウム分析に従事。
H26.7 東海拠点)プルトニウム燃料技術開発センター 核物質管理課にて
プルトニウム/ウランの計量管理を行う。
H29.7 東海拠点)プルトニウム燃料技術開発センター 品質管理課にて
プルトニウム分析、プルトニウム廃棄物処理試験に携わる。
R5.4 青森拠点)青森研究開発センター 施設工務課にて
加速器質量分析運転管理に従事。

入社後の10年間(プルトニウムを含む試料の分析・廃棄物の処理)

自身の生まれ育った青森県では、主要産業には国策として掲げる原子力があり、馴染みのある存在でした。福島原発事故の年に就職活動の時期が重なっており、世論は原子力の撤退・継続で揉めている状況でした。
汚染物・廃棄物は元素・化学形態が多岐に渡り、これらの物質を分離する技術と分析する技術は必要なものです。原子力が撤退するにも継続するにも避けては通れません。
現場の所在地について頓着はなく、原子力産業に有益な仕事をできればとの思いで就職しました。入社からの10年はプルトニウムを含む試料について、茨城県東海村において10種類の化学分析・物性測定を実施する一方、有機物・無機物が混在する汚染廃液の処理法について研究開発を実施しておりました。

加速器質量分析装置の運転管理について

現在は、青森県で加速器質量分析の運転管理に従事しています。装置全体は15m×5mの大きさで、高電圧・大電流・高真空・高圧・高回転・高温・低温と多様な性能の部品で構成され、それらの運転と修理が主な作業です。運転においては化学的な原理を理解できましたが、修理においては機械と電気の技術が求められ、都度勉強を必要とする日々です。
加速器質量分析法とは簡単に言うと、自然界に微量に存在する放射性物質量を分析することにより、試料が経過した時間すなわち古さがわかります。このことから研究用途として、年代測定や地球の物質循環の調査に使用することが出来ます。また産業用途として、放射性物質の拡散状態を評価し、出荷制限等が発生する農林畜水産業に役立てられています。
測定依頼で得られる利用料に対して初期投資・維持費が高いため、民間で大々的に普及させるのは難しい測定装置と言えます。言い換えると原子力機構のような国立研究開発法人ならではの測定装置と言えますので、加速器質量分析を用いた研究・技術に興味を持たれた方は当機構にお気軽にお問い合わせ頂ければと存じます。

青森の業務環境(加速器質量分析装置)

スペシャリストかゼネラリストか。

化学/物理/数学を使う機会に恵まれた環境であり、心理的な抵抗感は少ないものでした。
年々業務効率化が進み、一業務に掛ける時間は短縮される傾向にあり、業務処理可能量が増えて取り扱う業務範囲が多くなることは一概に楽ではありませんでした。今般、一業務のみに専念する言わばスペシャリスト化よりも、得意分野で従事する一方で付帯する業務も並行で実施するゼネラリスト化が進んだ結果と言えます。これを自身の視野を広げて、他者の都合を考慮したり、自身の引き出しを増やせる良い機会と私は考えますが、仕事に関する考え方は個々人の都合がありますから、就職を考えている会社の風潮について良く調べて決められたらよろしいかと存じます。

分離分析化学は様々な学問の土台。

学生時代は分離分析化学を専攻していました。簡単な例で説明しますと、あらゆる元素が混ざった物質を思い浮かべて下さい。このままでは使いようのない言わば廃棄物に過ぎませんが、個別に全てを分離出来たときはどうでしょうか、その全てが純粋な元素資源として得られると言えるのではないでしょうか。これを追求したものを分離化学と言います。また、これらの純粋な元素の種類や量を特定するものを分析化学と言います。分離と分析の仕組みは、化学・物理・電気的な挙動を理解する事になりますので、学習意欲があると有利です。私にとって原子力分野は多くの元素と薬品、複雑な装置を扱うため、相性の良い環境でした。

楽しいと思えることを自分のペースで出来れば恵まれた仕事環境です。

大学生当時、求人を探す上でマイナビ・リクナビが主流で、この中で原子力産業・農林業を主体で就職口を探しておりました。孔子の格言より「物事を上手に運ぶ上で、好きは知るに勝り、楽しいは好きに勝る」とあります。農林業は好きにとどまり、原子力の化学系現場に没頭する方が楽しいと判断しました。民間の事業者は商売ですから、競争をして実績・利益を上げてナンボです。一方で公的機関はそういった競争よりも地道に作業を重ねる業務かと思います。それが私の性格に合うと考え、現在の職に決めました。

左上:本人写真(湖船での様子) 左下:家の現場猫 右:茨城県のヤマトイワナ(渓流)