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JAEAの先輩職員をご紹介!(研究職)

阿部 拓海
原子力基礎工学研究センター 核変換システム開発グループ

2022年4月入社。核燃料サイクルシミュレータの高度化及び、それを用いた原子力利用シナリオの諸量評価を担当。

JAEAに就職した理由

中学生のころに東日本大震災が起き、世間では原子力発電の是非が大きな関心となっていました。それに対して自分なりの回答を持とうと思い、いろいろと原子力について調べているうちに、高いエネルギー密度や持続可能性といった原子力発電固有のメリットに強い興味を持ちました。一方で放射性廃棄物の存在が依然として問題視されていることから、大学では高レベル放射性廃棄物となる元素を燃料にして発電できる加速器駆動核変換システム(ADS)を研究テーマに選び、夏期実習生や特別研究生として、現在私が所属する核変換システム開発グループでお世話になりました。このときに、JAEAの雰囲気や職員の皆さんの人柄の良さに惹かれ、JAEAに就職したいと思うようになりました。

業務内容:核燃料サイクルを包括的に評価するためのシミュレータを作る

今、私は核燃料サイクルシミュレータの機能拡張・高度化、およびそれを用いた原子力利用シナリオの研究業務に携わっています。核燃料サイクルとは、原子炉の使用済み燃料から再利用できる元素を取り出し、それらを燃料に加工して原子炉で用いる仕組みのことです。核燃料サイクルが実現すると、ウラン鉱石の可採年数を70年程度から1000年以上にまで延ばすことができるといわれています。これはカーボンニュートラルや持続可能な社会の形成のためには必要不可欠な技術です。しかし、核燃料サイクルは非常に多くの工学技術が必要な複雑な概念です。その実現には多くの専門家が分野横断的な議論をしなくてはなりません。その議論の基盤となるデータを提供するため、当グループと東工大の共同研究でNMB4.0という核燃料サイクルシミュレータが開発されました。NMB4.0では核燃料サイクルにおける物流を包括的に計算し、原子力利用シナリオにおけるウラン必要量、廃棄物発生量、処分場面積などを見積もることができます。これにより、当グループで開発されているADSのほか、様々な原子力技術の有用性を評価することができます。昨年度はNMB4.0の機能拡張の一環として、プルサーマル使用済み燃料の直接処分に関するデータベースの拡張を行いました。プルサーマル使用済み燃料は、長期にわたって発熱する元素が多いことから、既存の処分場設計では熱的な制限を満たしません。そこで、私は熱伝導解析に基づいて、熱的制限を満たす処分場の設計を行いました。この検討結果は論文として出版したほか、OECD/NEAで開催される情報交換会議で発表しました。また、検討結果をNMB4.0内データベースに組み込み、プルサーマル燃料の直接処分シナリオにおける処分場面積の定量化をできるようしました。このほかにもウラン濃縮モデルの改良や使用済み燃料の中間貯蔵量解析機能の拡張などを担当しています。

パリで行われた情報交換会議で表彰されました。

就職して感じたJAEAの特徴

私はJAEAで働いて、「ここは強い責任感ややりがいを得られる職場だ」と感じました。JAEAは国立の研究機関です。我が国の原子力技術の基礎基盤を提供し、日本を含めた人類社会の福祉と繁栄に貢献することがミッションです。私たちが研究開発した技術が日本の未来を直接左右し、自分の成果が日本社会を豊かにする基盤となります。現在私が改良を行っているNMB4.0に関しても複数の大学や企業で使用されているほか、学会でもNMB4.0も含めた国産核燃料サイクルシミュレータ信頼性向上のための委員会が立ち上がりました。自分の仕事がどんどん大きいものになり、責任の重さを実感しています。一方で、大きなミッションを追いながらも堅苦しくない職場であることも特徴です。様々な世代・キャリアの方がいらっしゃいますが、みなさん頼りがいのある優しい方ばかりで、何でも相談できる風通しの良い環境で働けていると思います。私もグループリーダーの西原さんと積極的に相談し、研究開発の方向性に関してアドバイスをもらっています。 

西原グループリーダーとの相談。和気あいあいとしています。

学生時代に学んだことと業務のつながり

前述のように、学生時代には当グループで開発しているADSの炉心設計を研究対象としていました。現在は核燃料サイクルシミュレータの開発なので少し離れた部分はありますが、学生時代に学んだ原子炉物理や炉心設計の知識は現在も活かしています。核燃料サイクルシミュレータを用いた研究の肝は、高レベル放射性廃棄物の発生量および地層処分場面積を決定づける、核分裂生成物およびアクチノイド核種の量を的確に分析することです。これらの核種は核燃料の燃焼に伴って発生し、その量は原子炉内の中性子線の強度やエネルギーに依存します。原子炉の設計によってこれらの値は大きく変わるため、解析結果の分析には学生時代に学んだ知識が大いに役立っています。また、ADS炉心設計に関する議論へ参加したり、計算コードで炉心設計を行ったりすることもあり、学生時代に学んだことは今もフル活用しています。

JAEAに興味があるなら夏期実習に参加! 就活はロジカルに考える!

先に述べたように、現在、私がJAEAの研究職として働けているのは、学生時代にJAEAの夏期実習に参加したことが最も大きな要因です。夏期実習とはJAEAが開催しているインターンシップのことで、およそ2週間の間、用意されたテーマについて職員の指導の下で研究に取り組みます。研究活動のノウハウや専門知識が得られるのはもちろん、JAEAの職場としての雰囲気を間近に感じられ、多くの職員から現場の声を聴くことのできる良い機会でもあります。JAEAに興味があったら是非参加してみてください。夏期実習を通して、受け入れた研究グループの研究活動の面白さに気づき、JAEAに就職してみたくなった場合、指導担当の職員に相談してみましょう。JAEAは慢性的に人材不足なので、目をかけてくれる...かも...?

また、就活中における面接の受け答えやESの執筆では、研究活動のようにロジカルに考えることを大事にしていました。面接官は就活生の直接的な実績よりも、サークルやアルバイト、または研究活動中にどういう学びを得て、その経験や学びを今後の業務にどう活かして自分は何をしたいのか、といったことを知りたいのだと思います。これはまさしく、研究活動での「結果のまとめ」・「結果の考察」・「今後の展望の検討」と全く同じ考え方です。研究職に限らず、社会人は伝えたいことを論理的にまとめる力が求められます。まるで論文を執筆するかの如くまとめ上げて、ガクチカという自分の「成果」を伝えましょう!

実習生としてお世話になったときのグループ内バドミントン交流会の一幕