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ご新規さま、最大50%OFFキャンペーン開催にあたって

皆さま、ご機嫌いかがお過ごしでしょうか?

さて、3~4月の繁忙期も落ち着き始め、客席に余裕の出てくる5~6月に向けて、このたびジャグブランキンでは【初遭遇-The First Encounter-】キャンペーンを発動いたしました。

完全予約制サロンとして、19年前に南越谷に誕生して以来、ジャグブランキンでは長いあいだ一部の美容室検索サイトを窓口にされる場合を除き、ご紹介のあるご新規さましか予約を受け付けておりませんでしたが、20周年を迎える今年、もう少し本来の業務に軸足を向けなくては!と突然に思い立った次第です。

ではなぜ、そう思うに至ったのか、、、。
文字数制限のあるSNSではなかなかお伝えできないところでしたので、思いの丈を吐露させていただきたく思います。

まず僕の簡単な経歴からお話しさせてください。

17歳もそろそろ終わりに近づいていた当時の僕は、埼玉の高校を中退し美容師になるため地元である群馬から上京いたしました。
最初に就職した美容室では、求められている技術のクエストをクリアすれば次の段階に進めることができたので、何かと勘のいい僕は同僚を置き去りしながら、およそ一年程度でハサミを持たせていただくことができました。それでもスタイリストとしてデビューして数か月は、なるべく難度の低いカットしかさせてもらえず、何よりも退屈を嫌う僕は、さっさとその店を辞め新天地を求めました。

次の就職先では「もうバリバリにカットやってますよ」って顔をしながら就職し、多くのお客さまを担当させていただきました。でもそうして経験を積んで数か月が経つと、「結局この技術はオーナーのおさがりに過ぎない」と気付くわけです。先輩方も皆、オーナーに教えられたカットラインを忠実に再現するだけ。オーナーを「先生」と呼んでいたような時代ですから、その村社会のような排他的で閉鎖的な感じは今よりもずっと濃かった気がします。さらに時代はボディコン、ワンレンの全盛期。毛髪をデザインするという感覚は、大した自由度もない施術の中で、すくすくと育つこともなく、やはり僕の退屈は大きくなるばかりでした。

ところで。僕は今でも自己の美容感覚が大きく変容した瞬間を覚えています。

それが僕の中に訪れたのは、そんな退屈な日々の中、休日を利用して参加したヘアーショー&カットティーチイン(カットの講習みたいなもの)で目撃し、全く新しいヘアカットの概念に触れた、まさにその時でした。
講師はロンドンに拠点を持つTONI&GUYのスタイリストたち。
大げさに言えば、フォークギターしか知らなかった少年が、初めてエレキギターに触れたような衝撃。ドキドキしながら大きなアンプにシールドを差して適当なコードでダウンストロークをしたあの一発目の爆音と快感。

ロンドンから来た少数精鋭の彼らは、ハサミではなく見たこともない小型のレザーを使い、10万本の毛髪を完全に支配しておりました。
僕の知り得ないスライスの取り方と角度の付け方でバッサバッサと切っていく様相は、ヘアカットというよりもまるで彫刻。柔らかくカーブする毛先のラインはもちろん、毛と毛の間に生まれた空気感すら理路整然とされたデザインの一部になっていて、レイヤーもグラデーションも僕が覚えてきたそれとは比較できないほどナチュラルでした。

のちに知ることになる、ディスコネクションという新しい概念。
従来のカット理論は、シンプルな展開図に沿って、ある程度の能力を身に付けたら誰でも同じように再現できる概念でしたが、骨格や髪質によってそのポイントからポイントで完全に切り分けるという発想は皆無でした。
襟足、耳の裏、ハチの下、頭頂部、、、頭の丸みが複雑になればなるほど微妙に角度を変えながらまさにディスコネクション(つながらない)にカットされていくデザイン。
追求すればするほど、レザーはハサミの代わりになるけど、ハサミはレザーの代わりにならないと痛感しました。

それはつまり、デザインするために必要なのは「どれだけ髪を切るのか」ではなく「どこにどれだけ髪を残すのか」という哲学。

丁寧にブローしなくても簡単に再現でき、しばらく放っておいても崩れていかない持続性。その人のためだけに考え抜かれたオートクチュールのようなカットライン。
ただでさえ骨格に難があるうえ、多毛で太毛で硬毛の多い日本人の髪質を高精度なデザインに落とし込むには、これから先の美容界において絶対に不可欠な技術になると、当時の僕は直感的に確信しました。

そんなスイッチがONになった時の僕は、ほぼ狂人です。
朝も夜も食事も睡眠も関係なく、サロンワークの傍らに隙間ができればウィッグを切りまくり、休日には最新のカット講習をいくつも受講し、常に道具を持ち歩きながら、渋谷~原宿あたりを徘徊し手あたり次第に声をかけ、駐車場だろうが公園だろうが駅前だろうが場所も構わず、見知らぬ人々にカットモデルを依頼する日々を重ねてまいりました。ライブハウスから出てきたバンドマンの髪を路上で切っている最中に通報され、途中で連行されたこともありました。めっちゃ途中だったのに。あのバンドマンにはとても悪いことをしたなぁと今でも思い出します。

やがて少しずつ、エアリーで軽やかなスタイルが流行の兆しを見せるようになると、面でつくるデザインから線でつくるデザインに大きく変わり始め、複雑な工程で完成するスタイルが次々に生まれるようになりました。

話は変わりますが、美容室はその業歴が長くなればなるほど、支持を受ければ受けるほど、客層とその嗜好性の中央値が巨大化し安定していきます。

やがて、独自のカットスタイルを自分で納得できるレベルまで身につけた僕は、あえて偏りやこだわりの強い「~系」と呼ばれる雑誌の中に登場するそんな美容室をいくつも転々とするようになりました。JJやcancam系にはコンサバな雰囲気を好むお客さんが多いため、3か月もすれば同じような好みの範囲で相当数のカットラインを会得できる。
そんなふうにEgg系、QUTiE系、ブラックカルチャー系、アフリカンスタイル系、モード系、あるいは当時日本に上陸したばかりのエクステ専門店など、自分のやりたいスタイルは徹底的に無視し、だいたい1~3か月ごとに客層の偏った店を渡り歩きながら、気づけば原宿~青山界隈で20店舗、新宿や池袋でも数店舗を渡り歩き、TV局やクラブイベントやショーパブやキャバクラでのヘアメイクも経験し、顧客に執着せずに自分の技術力向上だけを最優先しながら独自のキャリアを積み重ねてまいりました。

同じ美容室で何年も勤続し顧客を増やしていっても「結局この技術はオーナーのおさがりに過ぎない」という、やがて僕自身が僕を俯瞰で感じることになるであろうコンプレックスを、本能的に排除したかったのだと思います。

さて、そうして20代半ばを過ごした僕でしたが、「そろそろ自分の好きなスタイルで自由に仕事を続けていくために店を構えよう」と思い立ち、それまでの考え方を大幅にリフレクトするに至りました。

それは「超完全顧客主義」

不特定多数よりも特定少数のお客さまとずっと長く付き合えるプライベートスタイルなサロン。今まで技術力の向上ばかりを優先し、担当したお客さまを顧客化していくモチベーションを完全に放棄してきた僕でしたが、だからこそ最も大切にしたいコンセプトとして店舗運営の背骨に据え、そんなふうにして南越谷にジャグブランキンが誕生いたしました。

それから19年。
おかげさまで、美容薬剤の研究開発や商品開発にも時間と労力をかけながら、行きたいLIVEには店を閉めてでも行くし、イベント開催のために臨時休業もするし、そうやってずっと好きなように営業を続けさせていただきましたが、いよいよ20周年を迎える今年になって、(周年記念のライブイベントとかではなく、とても個人的なひとりの美容師として)何かできないことはないだろうかとぼんやり考えておりましたところ、何度か来店してくれていた若いお客さまが、クーポンサイトを使って大幅に値引きされた美容室を次々と渡り歩き、どこかで失敗されるとまたジャグブランキンに戻ってくる、といったことが立て続けにありました。まぁ、美容業界からするとめっちゃ「あるある」なんですけど。

そんな背景に加え、求められるデザインやそれに伴う技術が複雑化していく一方で、ブリーチや特殊なパーマや縮毛矯正や酸熱トリートメントなど、本来なら難度の高い施術がとても安易に施されている懸念が、ここ数年でさらに色濃くなってきたと感じておりました。

あきらかな知識不足によるケミカルダメージや、乏しい技術によるカット不良。商材メーカーも、勉強不足の美容師が失敗しないよう「ブリーチなしでも高発色!」みたいなカラー剤ばかりをリリースする有り様。本来なら担当する美容師がアンダートーンを必要なだけ削り、ダメージリスクをコントロールしながら、必要なだけ人工染料を入れるべきでなのですが、簡単な技術力で完結する施術の代償が、お客さまの毛髪の中で決定的なダメージとなって蓄積されていく現状、、、。

まぁ、そんなふうに毒づいておりますが、じつのところ僕はそれほど憤ってるわけではありません。本題に入るまであまりにも長くなってしまいましたが、僕は別にそんな美容業界の現状を嘆いているわけでもないんです。
所詮、ウチはウチだし、ヨソはヨソ。

ただそんなふうに失敗されて戻ってくる毛髪と対峙する瞬間、語弊があるかも知れませんが、僕は美容師としてとてもワクワクするし、超テンションがあがります。(もちろん表情には出しませんが)
そのダメージが深刻であればあるほど、これまでに培ってきた知識と技術でどこまで修復できるかを自問しながら、そのダメージの正体を見極め、必要なことを的確に施す、それはもうまるで難解な謎解きのようなミッション。ジャグブランキンに通い続けてくれているお客さまの毛髪では、絶対に遭遇できないような想定を超えるダメージと施術ミス。そしてそこに横たわる息苦しいほどヒリついた緊張感。あぁ、たまらない。

僕は絶対に失敗しないからー!なんて事が言いたいわけではありませんが、(そのデザインにお客さまが満足するかしないかは別の次元で)取り返しのつかない施術ミスによるダメージなんて絶対にあってはいけないんです。


だから、僕は遭遇したい。


どこの美容室に行っても満足できないあなたに。
すぐにパーマが取れてしまうあなたに。
美容室から帰った翌日以降、求めていたスタイルに二度とならないあなたに。
頼んでもいないのに左右がアシンメトリーなあなたに。
毛先がチリチリのあなたに。
朝になると癖で頭が2倍増しになってしまうあなたに。
夕方になると癖で頭が3倍増しになってしまうあなたに。
根元だけ謎に金髪になってしまったあなたに。
地層みたいなムラのカラーをされてしまったあなたに。
グラデーションカラーを要求したつもりが完全に2トーンカラーになってしまった懐かしいデザインのあなたに。

そんな、未知なるあなたとの遭遇を楽しみにしております。


JAGG BRAANQUIN 代表 USU

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