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『シークレット・サンシャイン4Kレストア』先行上映舞台挨拶レポート📝

8/9にヒューマントラストシネマ渋谷にてイ・チャンドン監督の舞台挨拶付上映会を行いました!
この日は、Twitterアンケートで「1番観たい作品」として票が多かった、『シークレット・サンシャイン 4Kレストア』を上映。特別ゲストに仲野太賀さんをお招きしてイ・チャンドン監督作品の魅力をたっぷりとトーク頂きました。

イ・チャンドンの作品の大ファンという仲野さんと監督は初対面でしたが、
映画談義で盛り上がりました。

満席の場内で大きな拍手で迎えられたイ・チャンドン監督は「映画館で観客の皆さんにお会いするのがとても久しぶりなので胸がいっぱいでうれしく思っています。皆さんにとってよい時間になってくれたら」と挨拶。続いて、仲野さんが登壇し、「初めて(イ・チャンドン)監督の作品に触れたのは『オアシス』でした。本当に素晴らしく美しいラブストーリーです。そこから監督の作品の虜です」と熱い思いを伝えていました。

仲野さんが1番好きなイ・チャンドン監督作品『オアシス』(02)

仲野さんのコメントに対し、イ・チャンドン監督は「わたしの映画は、観客の皆さんにとって少し居心地の悪さを感じる作品かもしれません。それでも観客の皆さんが(居心地の悪さに)打ち勝って登場する二人の愛を受け入れてくれたらうれしい、そんな気持ちで作りました。仲野さんはわたしの願う通りに、“美しいもの”として受け入れてくださった。俳優でもある仲野さんがそれを感じてくれたことが尚更うれしく、わたしにとっても意味のある事だと思います」と応えていました。

『バーニング 劇場版』以来5年ぶりの来日となったイ・チャンドン監督

上映される『シークレット・サンシャイン4Kレストア』について、イ・チャンドン監督は、タイトルは劇中の舞台でもある「密陽(ミリャン)」という韓国の地方都市からとっており、“謎めいた日差し”という詩的な意味も込められているこの地名に子供の頃から惹かれ、一見平凡な人生のように見えても秘密の意味が隠されている――「一体それは何なのかを探し続けるような、わたしたちにとっての人生を象徴しているように感じていた」と明かしてくれました。

『シークレット・サンシャイン』(07)
主演のチョン・ドヨンが第60回カンヌ国際映画祭で女優賞に輝いた

仲野さんは同作を"究極の人間ドラマ"だと述べ、「人間のあらゆる側面をまざまざと見せつけられる。主人公が絶望の淵に追いやられる姿、藁をもつかむ気持ちで神様を受け入れる姿、その先にある究極の決断だったり……人間って、聖なるものと俗的なものを行ったり来たりするなと思って。信じたり疑ったり、人間の複雑さに心を揺さぶられて……しゃべりすぎですか?!(笑)と、作品への思いが話し出したら止まらない様子でした。

それを受けてイ・チャンドン監督からは、「“聖”と“俗”、この2つは、まさに映画のスタート地点で、ノートにメモをした言葉でした。言い当ててくれたのでとても驚きながらも、感謝しています。でも、これから初めて観る方のためにそれ以上は言わないでください」とにこやかに微笑みながら静止していました。

作品への熱い思いからトークが止まらなかった仲野さん

徐々にヒートアップする仲野は、「ネタバレになるか‥‥いや、絶対越えていくから、大丈夫だから!」と観客へことわりを入れつつ、この作品でいちばん好きなシーンを挙げると、そこに込められているであろう、自分なりの思いの丈をぶちまけ「こちらからは以上です!」とファン全開のトークがさく裂!会場を沸かせていました。

特集上映で観られる新作ドキュメンタリー『イ・チャンドン アイロニーの芸術』(22)

そして話題は、レトロスペクティヴで初上映となる監督を追ったドキュメンタリー『イ・チャンドン アイロニーの芸術』へ。意外にもイ・チャンドン監督は「じつは最後までちゃんと見れていないんです。(自身が出ていることが)あまりにぎこちなく、恥ずかしくてバツが悪い」と告白。今までのフィルモグラフィをなぞりながら、ロケ地を訪れ、あまり語られることのなかった映画監督になる前の小説家として、幼少期のエピソードが織り込まれたドキュメンタリーに「ファンならこんな言葉を聞けるのかと、うれしい事ばかり」と仲野さんは必見作として観客へアピールしていました。

『イ・チャンドン アイロニーの芸術』では、ソル・ギョングを始め、
これまで作品に出演してきたソン・ガンホ、チョン・ドヨン、ムン・ソリ、ユ・アインといった
名優たちもインタビュー出演しています

最後に仲野さんにイ・チャンドン監督へ1つだけ聞きたい事を伺うと、「映画を撮る上で、脚本を書く上で、人間を描く上で大切にしていることは何ですか?」と熟考した質問が。「あえていうならば、本物の人生を描きたい。作られたものではなく、ありのままの人間の姿を見せることだと思っています。観客がそれを本当のように感じられたら、自分の人生と重ねて結びつけてくれると思う。そういう映画を作って、わたしは皆さんとコミュニケーションを取りたいです」とゆっくりと真摯に応えるイ・チャンドン監督の言葉に仲野さんは「本当にすてきな言葉をいただけて。大事にしたいと思います」と感無量。その姿にMCから監督の作品に「出たいですか?」と聞かれると「そりゃそうです!(笑)日本の映画もイ・チャンドン監督に多大な影響を受けています。ぜひ多くの皆さんに見ていただきたいです」と伝え舞台挨拶は和やかに終了した。

二度とない貴重なトーク内容でした!全国公開は8/25から、皆さまどうぞお楽しみに!