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【海街diary】素敵な映画は素敵な余白からできている

 海街diaryの冒頭シーンは、とんでもないエロスなシーンから始まる。貢いでいる年下と思われる彼氏のベッドの上で寝ている次女の佳乃(長澤まさみ)を、脚先からふくらはぎ、ふともも、と舐めるようにカメラは追って行く。佳乃の携帯電話にメッセージが入り、その音で佳乃が朝目を覚ますのだ。もともと一緒にこの彼氏と朝を過ごす予定だったらしい佳乃だが、このメッセージを見て、急いで着替え出す。

 さて、この次女の佳乃にメッセージを入れたのは誰なのだろうか。そして内容は?

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 着替えて出て行こうとする佳乃に、彼氏は「朝から呼び出し?」と尋ねている。佳乃が彼氏との朝のひと時をやめて慌てて帰っていることから、メッセージの発信者か内容はそれなりの強制力がありそうだということになる。メッセージの発信者は、妹たちに厳しい長女の幸(綾瀬はるか)なのだろうか?


 佳乃は、鎌倉の海岸沿いの彼氏の家を出て、緑溢れる鎌倉の坂を登って自宅に戻る。玄関で靴を脱いでいると、三女の千佳(夏帆)が部屋から顔を出す。
この千佳が顔を出すところから、メッセージを送ったのは千佳なのかな、と妄想するに至った。「そろそろヤバイって。幸が怒ってるよ。」とか千佳が佳乃にLINEしたのだろうか。
 このメッセージの送信者と内容を少し考えるだけで、幸田家の三女の関係が分かるようになっている。佳乃は自由奔放にやっているので長女の幸の言葉は時折煩く感じるし、年も近いから直接LINEするようには思えない。むしろメッセージをやり取りするのは、共に長女の幸の厳しさを知っている三女の千佳なのではないかと思ってしまうのだ。


 映画には直接描かれていないものが、宝石のようにたくさん埋め込まれている。映画のこうした余白を観客は自由に空想できるのだ。それがとてつもなく面白い。
 素敵な映画は素敵な余白を持っているのだ。

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