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ポルトガルよ、ロナウドと共にどこまでもゆけ

栄光のEURO優勝から2年、彼らは完成度を落とす事なくW杯の舞台へ上がってきた。31歳のロナウドも33歳になり、サッカー選手のピークは過ぎている。衰えがあっても何らおかしくない、むしろそれが普通だ。しかし怪物クリスティアーノ・ロナウドは普通ではない。33歳になっても彼の動きに衰えは見えない。何という底力、彼には限界がないのだろうか。ロナウドがいるのといないのでは、ポルトガルは大きく違ってくる。ロナウドがまだ動けるというのは朗報に他ならないだろう。今回はそのポルトガルについて解説します。


奇跡のEuro優勝

FIFAランク4位、2年前のEuro優勝を経験したポルトガルは決してタレント揃いという訳ではない。同じヨーロッパでも、ドイツやスペイン、フランスには劣ってしまう。 ヨーロッパの主要リーグで活躍する選手は両手で数えられるほど、決してヨーロッパで代表するような国ではなかった。

クリスティアーノ・ロナウドという世界最強のストライカーがいたとして、ロナウドを徹底的にマークされてしまっては、その実力が出せない。一人、別格が選手がいるポルトガルのようなチームは、その選手が抑えられてしまって、終わるケースが少なくない。

しかし、2年前のEuroでポルトガルはヨーロッパを制覇した。ヨーロッパ最強の名を手に入れたのだ。しかも、決勝で主催国のフランスを破っての優勝だった。

誰もがフランスの優勝を疑わなかった。決勝の相手がポルトガルとわかった瞬間、皆がフランス優勝を謳ったほどだ。フランス国民はおろか、フランス代表選手も優勝だと浮かれていたほどだ。ましてや、試合開始10分ほどで、ロナウドが怪我してしまった。絶対的エースすらもいないポルトガルに勝機などもはや無いと思われていた。

しかし、なぜタレントだらけのフランス代表を、ポルトガルが打ち破る事ができたのだろうか。


堅守速攻でヨーロッパを生き残ったポルトガル

ポルトガルはサッカーのスタイルといえば堅守速攻。自陣に引いて、堅い守りを展開し、ロナウドを中心とした攻撃陣が少ないチャンスを決め切る。

これは、望んで作ったスタイルというより、ヨーロッパで戦う上で必然的に生まれたスタイルである。ドイツやスペインなど、タレントに多く恵まれ個々の能力がとても高いチームを相手する場合、ポルトガルのようにこの力で劣るチームは正面から勝負を仕掛けても負けてしまう。だからこそチームで守り、チームで攻めるしかない。まるで、スズメバチと戦うために集団行動するミツバチのよう。

かつこの戦術は前線に強力なストライカーがいるポルトガルのようなチームにはぴったりである。チームで組織的に守備をする場合、相手のDFがせめてこない分、数的有利を取れるが、攻める場合は良くて数的同数、悪くて数的不利のケースがほとんどだ。そうなると最終的に個の力が必要になる。ポルトガルの場合はロナウドという絶対的ストライカーがいるし、ロナウドと相性が良いFWゴンザロ・ゲテスやベルナウド・シウバなど、他国と比べても見劣りしないFW陣がいるから得点の面では心配いらない。その良い例がW杯グループ予選のスペイン戦だ。

優勝候補スペインに圧倒的にボールを保持されながらも、鋭いカウンターを何発も食らわせ、3-3の壮絶な打ち合いになっている。この試合ハットトリック(1試合3得点)のロナウドは本当にすごかった。まるでロナウド劇場、彼一人で全てを変えてしまった。しかしそれも、確立した堅守速攻のスタイルがあってこそだ。

スペイン戦のスタッツ(プレーなどの統計値)ポルトガルの堅守速攻がスペイン相手に生きているのがわかる

同じ地域に明らかに強いチームがいる場合、どうにか上位に食い込もうと堅守速攻のスタイルになる事が多々ある。南米でいうとウルグアイがまさにそうだ。

ブラジル、アルゼンチンといったW杯優勝経験がなんどもある相手に同じような戦い方をしても敵わない。ウルグアイは堅守速攻のスタイルを選んだ。ウルグアイにも前線に、ルイス・スアレスやエデンソン・カバーニといったワールドクラスのストライカーがいる。彼らもポルトガルと同じ選択をし、W杯に勝ち上がってきた。

しかし、いくらチームが組織的なスタイルを敷いていても、ロナウドに依存する局面が大きかった。W杯グループステージでも、ロナウドは3試合4得点と圧倒的な存在感を放っている。ロナウドは徹底的にマークされてもなお、点を決める化け物ではあるが、それでも得点チャンスが少なくなることに変わりはない。他国もそこを当然理解し、ロナウドに激しく当たってくる。しかし、なぜポルトガルは依然として勝ち、ロナウドは点を決め続けているのか。Euro決勝で、ロナウドが退場したにも関わらず、1-0で勝利したのか。

メッシ依存が深刻だったポルトガル

ポルトガルと同じようなチームとして、アルゼンチンが挙がる。世界最高の選手メッシを擁し、かつ他のFWも超がつくタレント揃い。攻撃力は抜群中の抜群。W杯でも最強の攻撃陣と称されるほどだった。しかし、そのアルゼンチンがW杯グループリーグであわや敗退の危機に陥っていた。1敗1分という非常に苦しい状況から、最終戦でメッシがアルゼンチンを救うウルトラゴール。土壇場でチームを決勝トーナメント進出に導いたメッシがいかに素晴らしい選手かを認識させられたが、なぜ前回大会準優勝のアルゼンチンがここまで苦戦したのだろうか。

アルゼンチンのストロングポイントはメッシの存在だ。世界最高の選手のパス、ドリブル、シュートは全てが超一級品。彼がいるだけで、何もかもが違うのだ。しかし逆にそこが弱点にもなりうる。アルゼンチンはメッシにかなり依存するチームになっている。アルゼンチンの攻撃は全てと言っていいほどメッシを経由しており、そういうチーム作りがなされている。「背番号10番でキャプテンでエース」これほどまでに重い称号があるだろうか。とてつもないプレッシャーと相手からのマークでメッシが潰れ、攻撃が滞ってしまう。ワールドクラスのタレントを複数ようしながらも最悪の状況にアルゼンチンは陥ってしまった。

ポルトガルだって他人事ではなかった。絶対的エースのロナウドが潰れてしまえば点は入らないのではないか。

ロナウド依存しないチーム作り

ポルトガルは、一人に依存することの危険性をわかっていた。ロナウド依存するチームではなく、攻撃時もチームによるプレーを重要視したのだ。

攻撃は全てロナウドに頼るのではなく、全員で組織的に崩すプレーを目指している。そのラストのゴール前でのプレーにロナウドがいれば良い。ゲームメイク、チャンスメイク、シュートなど、メッシのように全てロナウドに放り投げず、チームでやることを大事にしているからこそ、ロナウドは生きチームも良いプレーをする。

ロナウドの頼もしいリーダーシップ

ポルトガルの上位進出の要因として、ロナウドがチームで発揮しているリーダーシップの影響は非常に大きい。基本、ドイツやスペインなどの強豪国相手に若手プレイヤーや実力が劣ると思っているプレイヤーは、自身喪失し易い。自信を失い、本来のプレーができない、そんなことはザラにある。しかしロナウドはチーム内で若手にも積極的に話しかけ、緊張をほぐし、試合中にチームメイトがミスしても、大丈夫だと言わんばかりの拍手。エゴをさらけ出すレアルマドリーと違い、チームに気を配り、チームを良くしようとするその姿はまさにキャプテン。とても頼もしい男である。

その良い例がEuroでブレイクした当時19歳のレナトサンチェス、今大会で初出場ながらスタメンを張っている21歳ゴンサロ・ゲテスである。ロナウドのサポートがなかったら彼らはいまほど活躍はしなかっただろう。事実ロナウドのサポートがないクラブチームでレナト・サンチェスは活躍できていない。

上がレナトサンチェス、下がゴンサロ・ゲテス ロナウドのサポートによって活躍した若手たちだ


ポルトガルとロナウドはどこまで行けるのか

ポルトガルはチームとしてベストな形でW杯に望んでいる。組織的な堅守速攻は誰が相手でも通用するし、勝機も十分ある。ロナウドはポルトガルをどこまで押し上げてくれるのだろうか。どちらにせよ、ポルトガルの上位進出にロナウドの活躍が必須だ。今年で33歳、いくら怪物とはいえ4年後のW杯に出場できる希望は薄いだろう。今年で最後になりうるW杯、ロナウドはどこまで行けるだろうか。


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