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エースの資格とは

2018/19シーズン プレミアリーグ第1節 マンチェスター・ユナイテッド対レスターシティの一戦 開催場所はマンUの本拠地オールド・トラッフォード

今シーズンを占う注目すべき初戦。プレミアリーグ ビッグ6の一角マンチェスターユナイテッドにとっては是が非でも勝ちたい試合だ。対して、2015/16シーズンに奇跡の優勝を成し遂げながらも、昨シーズンは9位で終わった岡崎慎司率いるレスターも上位進出を狙うために強豪マンUには引き分けでもいいから勝ち点はもぎ取りたい所である。


マンUの堅実な試合運び

試合開始直後、ひょんな事からスコアが動く。
前半3分、ペナルティエリア手前からアレクシス・サンチェスがミドルシュートを放つ。シュートはDFに弾かれたが、その流れ弾がペナルティエリア内のレスター選手の手に当たってしまいハンドの判定。
PKをポール・ポグバを決め、早くもユナイテッドが先制した。
その後、試合は硬直した展開を迎え、お互い無得点のまま、後半の終盤を迎える。

すると後半83分、決定機を作ったのはまたもユナイテッド。
相手陣地中央付近でボールを持ったファン・マタが駆け上がってきた左サイドバックのルーク・ショーへ浮き玉のパス。ペナルティエリア左側ギリギリにいたショーはトラップミスで前方上方に浮き玉であげてしまうが、それがうまい事飛び込んできたDFの意表を突き、対処できなかった。ラッキーな形でショーがフリーでボールを持つことができ、そのまま2タッチ目で左足ボレー。勢いはゆるいが、鋭い角度のシュートにGKは触れられず、そのままゴール。終盤にきて2-0とレスターを突き放した。

しかし、それでもレスターは諦めなかった。90分+2分(ロスタイム4分)にレスターが反撃する。
敵陣右サイド中央付近でボールを持ったレスターのリカルドペレイラが左足で、中央へクロス。ファーにいるヴァーディが合わせようと足を出したがギリギリ届かず。しかしその後ポストに当たったボールがヴァーディの目の前に跳ね返り、ヘディングで押し込んでゴール。試合終了間際に窮鼠猫を嚙む一撃。ロスタイム残り2分に一点差に詰め寄る。
その後レスターがチャンスを作り出すも、硬い守備陣に阻まれ試合終了。2-1でプレミアリーグの初戦はマンUに軍配があがった。


試合を動かせない両FW

この試合で特徴的だったのがFWの働きだ。

マンUのFWスタメンは20歳のイングランド代表ラッシュフォード、レスターは22歳のナイジェリア代表イヘアナチョだ。お互い若く、既にプレミアに数シーズン在籍している選手。プレミアリーグに慣れており活躍を期待される一方、大きな伸びしろ持った選手だ。

しかしこの試合、両選手に大きな活躍はなかった。

マンUのラッシュフォードの武器である抜群のスピードは低く設定されたレスターのDFラインに殺された。自慢のスピードで走り込むスペースを与えず、弱いフィジカルと乏しいテクニックでマグワイヤとモーガンの強靭なDFに太刀打ちできなかった。得点に絡むことなく、67分にルカクと交代。前線からの果敢なボールチェイスもなく、いい所なしといった所だった。

イヘアナチョも目立った活躍はなかった。ゴール前での決定力に優れたナイジェリア代表FWはチャンスも少なく、強力なDF陣を擁するマンU相手に完封させられていた印象だ。前後半1回ずつあったチャンスもマンUのCBコンビ、エリック・バイリーとビクター・リンデロフに潰されていた。

両FWが沈黙し、前半のラッキーゴールで点を取った守りに入り、それを追いかけるレスターが追いかけるがチャンスが作れない状況が続いた。


両エース投入

しかしその流れが変わったのが後半のエースの投下だ

マンUは67分、ラッシュフォードに変わり、ベルギー代表FWロメロ・ルカクが投入された。対してレスターの63分に中盤のアマーティーに変わり、イングランド代表ジェイミー・ヴァーディー(なんと僕と名前が同じ!)が投入された。

本来ラッシュフォードとイヘアナチョは両チームのレギュラーFWという訳ではない。
レギュラーFWにはエースのロメロ・ルカクが存在し、ラッシュフォードはそのスピードを生かしサイドで抜擢されることも多いく中央ポジションに慣れていない上、他にも優秀なアタッカーがマンUには揃っている。
レスターも昨季20得点の大台に乗せたエースのジェイミー・ヴァーディーがファーストチョイス、イヘアナチョはその控えだ。2トップ時でもヴァーディーの相方として、当落線上だ。

両チームのエースがなぜスタメンではなかったのか。それはW杯の影響だ。
ご存知ベルギー代表とイングランド代表は3位決定戦で戦ったチーム。つまり一番最後までW杯で戦ったのがこの2チームだ。
そしてその2チームでプレーしていたルカクとヴァーディー。厳しい日程で戦い疲労たっぷりのW杯終了からプレミアリーグ開幕は約2.3週間しかない。疲れ切った心と体を癒し、かつ新シーズンに向けコンディションを合わせるには時間がなさすぎる。よって両監督はコンディションの整っていないエースをスタメンで使わず、控え選手を使い、勝負所での投入という選択肢を選んだ。
そして両エースは60分代にどちらも投入され、ゲームの命運を任された。


エースの資格

エースが投入され両チームの雰囲気がガラリと変わった。

強靭なフィジカルを持つルカクは、簡単にボールを失いがちだった前線でボールをキープし、攻撃の起点になり死んでいたチームの攻撃力が生き始めた。抜群のプレーセンスを誇る中盤のポグバ、マタはボールを持つ機会が増えチャンスも増えていった。

その結果が83分のダメ押しゴールだ。ラッシュフォードがいた時は、中盤でマタがボールを悠々と操る姿は見受けられなかった。これも、抜群のキープ力で強靭なレスターDF陣と渡り合ったルカクの働きなしでは成し遂げれなかった。


対するヴァーディーも負けていない。最前線から相手のボールを全力で追いかけ回し、ミスとスティールを連発し、途中出場ながらもビッグ6のマンU相手に一点もぎ取って見せた。この一点以外にも、相手敵陣でも強烈なタックルからゴールを奪取し、決定的なチャンスを創り出した。惜しくもこれはマンU守護神デ・ヘアに阻まれてしまったが。

エースの影響は結果に現れる数字以上の効果を持っている。
チームを鼓舞し、盛り上げ、チームの勝敗にも関わる決定的な仕事もしてみせる。お互いの得点で勝敗が決まり、多種目と違い得点するのが難しいサッカーにおいて、エースという存在はチームで一番重要といっても過言ではない。
賞などにおいても、メッシやクリスティアーノ・ロナウドいったスーパーエースが受賞するケースがほとんどだ。

逆にいうと上記したような活躍ができない場合、エースとは呼べない。どんな苦しい状況でも、自然とボールが集まり、そして仕事を成し遂げるのがエースの仕事だ。エースが活躍するか否かでチームが勝てるかどうかも変わってくるほどだ。
ラッシュフォードとイヘアナチョにはまだエースの資格はなかったという事だ。
1プレミアファンとして、二人の今後の成長を期待したい。

最初から両エース、またはどちらかが出ていたら結果は大きく違っていたかもしれない。

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