戦国Web小説『コミュニオン』第20話「大斬刀」

第20話 「大斬刀」

 

 一撃のもとに数人の敵を真っ二つにしてしまった隼介。手には、あの巨大刀。

 何が起こっているのか理解できない敵兵たち。彼らが状況を理解する前に、隼介はその怪力でふたたび巨大刀を振り回す。またしても吹っ飛ばされ両断される、数人の弩兵たち。突如目前に現れた大男が敵兵だと認識するも、反射的に放った矢は味方に当たる。

 隼介は三撃目、四撃目と巨大刀での強烈な攻撃をくり出していく。敵陣に侵入した怪物は、次々に敵兵を血祭りにあげていく。密集した状態の弩兵は対処のしようもなく、ただただ巨大な刃の的となっていく。そして混乱が広がった機を見て、醒陵軍の盾隊は自軍の盾を手放し、自ら倒す。

 

 その後ろに隠れていたのは、弓兵ではなく普通の歩兵であった。そして皆抜刀する。大刀ではない。脇差である。この密集した状態では短い間合いの方が有利なのである。そして いっせいに襲いかかる。

 混乱していたこともあり、敵の盾はいとも簡単に倒された。そして、飛び道具を手にした敵を脇差で突き刺していく。先ほど敵にやられた戦法が、今度は醒陵軍によって行われていく。

 

 その間も隼介は、敵を薙ぎ払い続けていた。その圧倒的な筋力にものを言わせて、力いっぱいぶん回す。そのたびに数人の敵が吹っ飛び、時には宙を舞った。そうこうしているうちに、敵の歩兵隊は瓦解。敗走を始める。追い打ちをかける醒陵兵。次々に逃げる敵を討ちとっていく。

 が、騎馬隊が猛反撃。これにより、ふたたび戦局は変わる。とても脇差では馬上の敵兵には届かない。慌てて大刀を抜いて応戦するも、それでも間合いの足りない武器では勝負にならない。加えて、馬自体の大きさやその上から見下ろしてくる敵兵の姿は、それだけで大きな圧力を感じてしまう。物理的にも心理的にも追い込まれていく。

 

 後退命令が出た頃には、すでに多くの者が敗走していた。もはや、敵も味方も半数以上が陣形を保てていない。その中にあって、敵の騎馬隊だけが整然と動き、統制のとれた攻撃を見せていた。

 敗走兵をけちらしたあと、全騎馬隊が集結していく。すべて合わせると、1000騎を越えているかも知れない。そして、一気に勝敗を決しようと真っ直ぐ楠将軍のいる本陣めがけて突っ込んできた。砂埃が舞い上がる戦場。

 地響きをたてながら迫りくる敵騎馬隊。弓矢で迎え撃つも、その勢いは止まらない。

 「肉を切らせて骨を断つ」

 そんな言葉が相応しい。敵騎馬隊のその雄姿から、その戦い様、生き様が伝わってくる。矢を浴び落馬していく仲間たちをしり目に、怒涛の勢いで迫りくる。そして、ついにその騎兵の波が激突・・・する間際、

 

 

 いっせいに長槍を構える前列の兵士たち。突如として姿を現した槍衾の壁。敵騎兵は、次々に無数の槍の壁に激突していく。槍の柄の先端である石突は地面に突き立ててあるため、無残にもぶつかったその勢いは、そのまま自分へと返ってくる。

 前列の兵たちは、十列にわたり槍を構えていたため、つくり出された槍衾は、横に長いだけでなく奥行きもあった。馬の重さと勢いに負け、倒れてしまう部分もあったが、この陣を突破できた騎兵は皆無であった。

 

 勢いの削がれた騎馬隊に、弓矢による波状攻撃が繰り返される。砂埃がたちこめ、その中でのたうち回る敵兵の悲鳴が聞こえてくる。やがて瓦解、そして敗走する敵騎馬隊。

 

 

 勝ったか? と思った者もいたが、砂埃が消えつつある中、その向こうに何かが見える。  

 逃げ去った騎馬隊の次に姿を見せたのは、ほぼ無傷の歩兵隊の陣であった。剣と円形の盾を装備した無数の兵士たち。その数、3000は超えているであろうか。それに比べて、こちらは疲労困憊・満身創痍。数も2000に満たないであろう。手持ちの矢もほとんど尽きてしまった。

 もはや万策尽きた。陣形を維持したまま、じょじょに迫ってくる敵部隊。

 

 ここまで司令官の楠は、戦術眼に長けた和馬の進言により臨機応変な戦いを展開できた。が、ここにきてその和馬も口をつぐんでしまった。

 ・・・ここで撤退を始めれば、追撃を受け一気に壊滅してしまう。かといって、このままではまずい。どうすれば・・・

 

 なす術なく、ただ迫りくる敵を見ていた兵士たちの前に一人の大男が現れる。手にはあの巨大刀。隼介である。隼介はただ一人、ゆっくりと敵へ向かって歩いていく。

 

 皆、思う。・・・あいつなら。あいつがいるなら勝ち目はある・・・

 ゆっくりと歩いていた隼介、やがて足早になり、そして走り出す。疲労困憊の兵士たちも、それに続いて走り出す。そして、隼介のすぐ斜め後ろには・・・彼らがいた。涼平・皇・剛田・大山ら強豪者たち。

 意図せずして隼介はつくり出してしまうようだ。敵陣に打ち込まれるクサビ、錘行(すいこう)の陣を。敵陣に突っ込んだ隼介、思いっきり薙ぎ払う。数人の敵兵が吹っ飛び、宙を舞う。薙ぎ払った勢いで一回転、そのまま頭上でもう一回転させ、その勢いでまた薙ぎ払う。盾で防ごうが、剣で受け止めようが、ものともしない。

 

 

 巨大刀のその重さと硬さが、隼介の人間離れした怪力によって本来の力を引き出されていた。隼介もまた、自分のその剛力に耐えられる武器を手にしたことにより、本来の力を引き出されていた。

 隼介が生み出した錘行の陣は、敵陣を貫通した。完全に敵を分断したのだ。先頭の隼介は分断された左側の敵に向かい、攻撃を続ける。後ろに続いていた兵士らも、同じく左側の敵を攻撃。それを見た楠将軍は全軍に命令。左側に残った敵を囲み、逃げ場を失くしたところを一気呵成に攻め立てる。

 右側にいた敵兵との戦闘も発生したが、醒陵軍の士気の高さに圧倒されたのか敵の攻めに力が入ってはいなかった。そうこうしているうちに左側の敵は殲滅。今度は右側の敵に攻めかかる。しばらく一進一退の攻防が続いたが、やがて敵は敗走を始める。

 が、こちらも追撃する余力はない。敗残兵の逃走をただただ眺めている。皆死力を尽くし、なんとか立っている状態であった。まさに辛勝といったところである。

 

 

 

 これで戦いも終わりかと思ったが、敵の一部に逃げようとしない一団があった。数にしてわずか30ほど。そこに逃走したと思われた騎兵も数騎戻ってきて合流した様子。とはいえ、それでも歩兵騎兵あわせて40ほど。こんな数でこれ以上攻めては来るまい。

 彼らは夕日を浴びながら、こちらをにらみ続けている。よく見ると、歩兵の中の一人はマントをつけている。甲冑も豪華な金色である。夕日に照らされて輝いていただけかと思っていたが、この者の甲冑は元々豪華なようである。

 おそらくは指揮官、もしかしたらこの部隊の総司令なのかも知れない。騎兵の一人にも、豪華な甲冑を着ている者がいるではないか。この騎馬隊の隊長なのかも知れない。なぜ彼らは逃げない? ここにいても危険なだけなのに・・・

 

 彼らを眺めていた醒陵軍兵士たちはこんなふうに見ていた。が、中には彼らの心境・立場を察した者たちもいた。おそらく彼らはここで逃げることをよしと思えないのだろう。二度も攻めて、ことごとく負けてしまったばかりか、兵の多くを死なせてしまったのだから。

 責任ある立場の者であったとしたら、これは大失態である。武人としての誇りが、負けたままで逃げるのを許さないのかもしれない。

       

 が、いずれにせよ勝敗は決したのだ。今さら攻めても意味はない。じき去っていくだろう。と、たかをくくったのは油断だったのかも知れない・・・

 歩兵隊長(?)らしき者が何かを叫ぶ。何かを大声で言っているが、聞き取れない。続いて騎兵隊長(?)らしき者も何かを叫ぶ。

 「我こそは~~~~!~~~~~」

 どうやら名乗っているようだ。その後に続く言葉はよく分からなかった。どうせ負け惜しみでも言っているのだろう、と思った。が、騎兵たちが走り出す。続いて歩兵たちも。こちらに向かって突撃してきた。

    玉砕攻撃だ!!!

 そう気づいたが遅かった。もう戦いは終わったものだと思った兵士たちは、すぐに迎撃体勢がとれない。もう間近に迫った騎兵たち。最後の最後に痛手を負うはめになってしまった・・・と思った矢先、騎兵の前に飛び出した大柄の男。隼介である。

 隼介は巨大刀を思い切り騎兵隊長(?)にぶち当てる。即死であった。馬も兵士もである。続く騎兵たちは驚いて止まってしまう。そして隼介と目が合い、動けなくなってしまう。人だけ狙う・・・そんなことは出来なかった。馬ごと騎兵たちを斬り倒していく。

 

 その後に襲いかかってきた歩兵たちは覚悟が決まっていた。もはや生きのびるつもりなど毛頭ない。この規格外の化け物に一矢報いようと攻めかかる。が、隼介の体に触れる前に、彼らの体は宙を舞い、両断されていった。

 最後に一人、生き残っていた。豪華な鎧を着たあの兵士(?)だ。よく見ると、彼はかなりの高齢である。老人と言ってもいい。それでもその眼光は鋭く、まさに軍人といった雰囲気を醸し出していた。

 歩兵隊長か、もしかしたらこの軍の司令官か、いずれにせよ位の高い軍人であろう。個人的武勇も一般兵よりかは高いようだ。が、隼介の前では同じようなもの。

       

 歩兵隊長(?)は、息を整えながら隼介をにらみつけている。そして盾を捨てる。すべての力を攻撃に集中するためであろうか。そして突進! が、リーチで勝る隼介の薙ぎ払いの方が先に届く。

 敵はそれをガード・・・しきれずに剣が弾かれる。が、その弾かれた勢いで一回転しつつ懐に飛び込んだ! うまい! そしてそのまま一撃を放つ。これが隼介に直撃・・・しなかった。

 かわしたのだ。振った巨大刀を引いて、逆に体の方を巨大刀の方へ引っ張らせる。わずかだが体を瞬時に移動させた。

 当たると思った一撃がかわされたことに、一瞬だが動揺した。だがその一瞬が命取りとなった。隼介はすでに巨大刀を振り上げていた。すぐに打ち下ろされる超重量の刃。慌てて上段ガードの構えをとるが、その剣は叩き折られ、脳天に直撃! 兜を割りながら、その刃は地面に叩きつけられた。もちろん・・・即死であった。

 

 

 戦闘はようやく終了した。これでこの地域の敵軍を撃滅することに成功した北部攻略部隊(楠部隊)は、短い休息ののち進軍を再開することとなる。次なる進軍場所は山岳地帯とのこと。川や谷も渡るのだそうだ。

 そして、幾度も自軍の危機を救い勝利に貢献した隼介。彼の圧倒的な強さと存在感は、醒陵軍のみならず敵である淘來軍にまで知れ渡ることとなる。

 

 

 

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戦国Web小説『コミュニオン』16~30話

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