戦国Web小説『コミュニオン』第36話「力になりたい」

第36話 「力になりたい」

 ロズガード軍の先鋒が第一の門へと殺到する。城壁から一斉に放たれる弓矢の嵐。敵も弓矢で激しく応戦。敵の前衛をじょじょに薙ぎ倒しつつも、矢のほとんどは大きな盾で防がれてしまっている。

 まず先に押し寄せてきたのは、以前隼介も見たあの歩兵隊だった。優れた盾・スクトゥムは、しゃがめば全身を隠せるほど大きい。隙間をあまり狙えないなら貫通させる他ない。だが例え矢が刺さったとしても、所持者の体まではなかなか届かない。

 そして同時に何か、長く大きなものが迫ってくる。先端を尖らせた大木が吊るされ、タイヤのようなものが付いている。衝車(しょうしゃ)だ。門などを破壊する攻城兵器である。

 こちらの弓兵隊の攻撃は激しく続いているが、それをものともせず迫りくる敵歩兵隊と衝車。もしこちらに和馬ほどの弓の使い手がいれば、それなりのダメージを与えられるであろうが、残念ながらいないようである。

 一方、第一の門の内側。隼介は一人立っていた。幅30メートル長さ50メートルほどの空間のかなり後ろの方、第二の門の手前あたりにて待機している。

 城壁の向こうからは、激しい雄叫びや戦闘音が聞こえてくる。その声や足音を聞くだけで、城壁の向こうにどれほど多くの敵がひしめいているかが伝わってくる。そして突然、ひときわ大きな衝撃音がとどろいた。

 第一の門、外側。なんと、早くも衝車が城門にたどり着き最初の一撃を門にぶち当てていた。先ほどの衝撃音はそれであった。あまりにも早い。

 防衛側の力量不足もあるだろうが、攻城側の強さによるところも大きい。いずれにしても、早く敵を引き離さねば瞬く間に第一の門は突破されてしまう。

 門だけではなかった。敵兵たちは長いはしごを城壁へとたてかける。そして、軽装の兵士が登ってくる。最初に突撃してきた歩兵隊とは別の、城壁突破用の部隊のようである。

 ただ、こちらはあまり脅威ではない。北門前の道は幅が広いとは言え、せいぜい20メートル。中央は衝車が攻めており、その両サイドに一つづつしかはしごをかけてこない。敵兵が登り切る前に、容易に狙い撃ちができた。

 そして、敵が城壁に張り付いたため、弓矢だけでなく落石による攻撃も始まる。盾をかざし防御もできるが、こうなると他のことはなかなか出来ない。

 となると、やはり衝車である。とにかくこれを破壊しなければならない。しかし、こちらは矢で射ても岩を落としてもビクともしない。その強大な破壊力を持った攻撃が、二発三発と門へとぶつけられていく。

 しかし、三回目の衝撃音の後は音が途絶える。どうやら衝車を扱っていた者が負傷・もしくは討たれたようである。衝車自体が頑丈でも、扱う方はそうはいかない。だが、これは替えが効く。別の敵兵が衝車による攻撃を続けんとする。

 弓兵たちはそこへ集中攻撃を浴びせていく。敵が近づいたぶん、命中率も上がったのかも知れない。衝車による攻撃はなかなか再開されない。

 しかし、敵からの弓矢攻撃も命中率が上がっている。城壁の弓兵たちもまた射貫かれ、一人また一人と倒れていく。それでも討たれた仲間の場所へ、待機していた弓兵が入り激しい攻撃を繰り返す。

 弓矢による激しい攻防は続く。そんな中、四発目の衝撃音がとどろく。衝車による攻撃が再開されたのだ。敵味方とも弓矢による被害が続いていたが、城壁の弓兵の密度が下がっていた。最初はびっしりとひしめいていた弓兵だが、今は兵と兵の間隔が空いている。それに比べ敵軍は、いささかも数が減っているようには見えない。そもそも総数が違うのだ。遅かれ早かれこうなることは分かっていた。

 幸いにも敵はしご部隊の攻撃はなくなっていた。攻防の最中にいくつか壊れてしまったが、こちらはもう残ってないのかも知れない。もしくは衝車による攻撃のみに集中しだしたのかも知れない。防衛側も衝車への攻撃に集中できる。

 とはいえ、やはり総数の差がものを言い出した。五発六発と攻撃を加えていく衝車。門へのダメージがどんどんと蓄積されていく。さらに数発の攻撃が加えられていく。そして・・・

 激しい音をたてて開く第一の門。ついに突破された。その先へとどっと流れこむ敵歩兵隊。その先にいるのは、巨大な刀を構えた鎧武者。隼介である。

 「死神降ろしの間」へと突入した十数人の敵兵は隼介の巨体を見て、思わず足を止める。まだ40メートルは離れているであろうが、それでも彼が常人ならぬ体格をしているのは分かった。

 次の瞬間、彼らの首や顔面へと無数の矢が放たれる。瞬く間に射抜かれ、倒れる。壁には矢狭間が無数にある。それに気づいた敵兵たちは、慌てることなく大盾に身を隠す。

 構わず弓矢の雨が彼らに放たれ続ける。近距離のためか矢の多くは弾かれることもなく刺さっていくが、ダメージは与えられない。じょじょにじょじょに進んでいく。

 しかし彼らが進めば進むほど、前からだけでなく横や後方への防御もしなければならなくなってくる。死角をかばいきれずに無防備な部分へと矢が刺さっていく。それでも圧倒的な物量でもって討たれても討たれても新たな歩兵が姿を現す。

 が、入口の狭さが災いしてその物量が活かしきれない。この通路の真ん中にようやく先頭の兵が来た時には、すでに多くの者が倒れていた。後ろからゾロゾロと現れる歩兵たちは仲間の死体を踏みつけ越えていく。

 

 隼介はじわじわと迫りくる敵歩兵部隊を静かに見つめていた。もうそろそろ間合いに入る。ギリギリまで引き寄せる。ギリギリまで。隼介の目には大きな盾・スクトゥムが映っていた。

 ・・・果たして、この盾に大斬刀は通じるのであろうか・・・

 そして、敵兵が間合いへとその一歩を踏み入れる。隼介、大斬刀を頭上で一回転、その遠心力でもって渾身の一撃を放つ!その硬く重い刃が敵の盾へと向かう。

・・・どうだ?

 敵はその盾を真っ二つに割られ、三人が即死した。そしてドミノ倒しのように、後ろの歩兵たちがバタバタと倒れていく。

 効いた!

 倒れたことにより防御体勢が崩れる。弓矢の雨が降り注ぎ、瞬く間に数名の敵が葬られた。後ろにいた敵兵は前で何が起きているのかが見えない。何も知らずに接近してくる。

 そこへ目がけ隼介が薙ぎ払う!またも盾をかち割り吹っ飛ばすように斬り倒す。そしてまたドミノ倒しと弓矢の嵐。敵兵は後ろから前へ前へと押し出されるので、退くに退けない。死体の山がじょじょに足場に積み重なっていく。

 

 まさに「死神降ろしの間」となった。死神が降臨したこの空間に足を踏み入れたが最期、生きては帰れない。仲間の死を助長させているとも知らず、外にいる歩兵たちは門へと、狭い入口へと殺到し続ける。いずれその災いが自分の身にも降りかかるとも知らずに・・・

 

 

 

 一方、ロズガード急襲の報せは戦線へも伝えられた。数日かかるであろうと思われたが、ことは一大事。早馬はたったの二日でその距離を駆け抜いた。

 北部のみならず、中央・南部攻略部隊も急いで醒陵へ向けて動き出した。もちろん国境防衛には間に合わない。間に合うはずもないが、国境を突破する(した?)であろう敵軍を叩く必要がある。

 おそらくは自分たちが到着した頃には、本拠地が戦場となっているであろう。まさに最後の砦。もしかしたら、その戦いにすら間に合わないかも知れない。

 焦る気持ちを抑え一路、本国・醒陵へ・・・

 

 ロズガード急襲の報せは、醒陵の民へも伝えられた。混乱することが予想されたが、さすがにこれは隠すに隠せなかった。国家存亡の危機である。民には安全な場所へと非難してもらわなければならない。もちろん、安全と言える場所があるのかどうかは分からないが・・・

 

 

 

 そして舞台は再び北門での攻防戦。「死神降ろしの間」に積み重なった死体は、歩行を困難にさせるほどの数となっていた。そのため足場が悪く、歩く者の体勢を崩させた。そこをまた弓矢が狙う。といった形で、予想以上の戦果を上げていた。が、流れは突然変わった。

 新たな敵歩兵の出現が途絶えたかと思うと、いきなり敵弓兵たちが突入してきた。彼らは矢狭間を目がけて攻撃を始める。気づかれてしまったようだ。

 敵の反撃が始まったことにより、こちらは今までのようには矢が放てなくなる。その隙を突いて、さらに多くの弓兵たちが突入してくる。そして隼介へも容赦なく矢が放たれる。とっさに半身になり大斬刀にて防ぐが、身動きがとれなくなる。

 

 今まではほぼ一方的な、有利な展開だったのが一変。危機に立たされる。冷静に攻撃を続けていた隼介であったが、焦りと苛立ちが生じる。敵の攻撃が激しくなるにつれ、隼介の精神も乱れてくる。敵とは距離が離れている。

 このままガードの体勢で突っこんでやろうか、といった考えが浮かんでくる。もちろんそれは捨て身の戦法だ。接近したら横からも後ろからも狙われる。

 とにかく暴れまわることになるだろう。反撃も受けるだろう。精神的にも追いつめられていくに違いない。が、このままではいずれやられる。

 やるしかない・・・

 隼介、大斬刀でガードしたまま突進!敵から放たれる矢を弾きながら接近。そして弓兵に激突。ぶつかった敵兵は倒れる。すぐに側面をガード。そこに矢が当たり弾かれる。が、反対側から放たれた矢が背中に撃ち込まれる。激痛。

 しかし、それは無視して一番近い弓兵に接近し攻撃。斬り倒す。さらに一歩踏み込んで、もう一人を斬り飛ば・・・せない。倒れていた死体に体勢を崩され、うまく攻撃が放てない。再び焦りと苛立ち。背中に痛みがはしる。二本目の矢が刺さった。

 矢を放った敵をにらみつける。そして走り出すも、またも倒れている死体が体勢を崩させる。構わず走る。そしてその弓兵めがけて薙ぎ払うも、かわされてしまう。足場が悪すぎてうまく攻撃できない。焦りと苛立ちは募るばかり。

 隼介、大斬刀を手放し素手で弓兵に跳びかかる。後ろからは矢が幾本も飛んでくるが構わない。そして弓兵を捕え、すぐに反転。動きを止めた的に飛来する矢が次々と刺さる。が、それは捕えた弓兵にであった。隼介、敵を盾に使ったのだ。

 今度はその敵を盾にしたまま走り出す。盾(?)には矢はどんどん刺さっていくが、まだ息があった。そしてそれを投げつける。そして跳びかかり暴れる。

 敵弓兵たちは、隼介の予測できない動きについていけず翻弄される。首を掴んではへし折る。落ちているグラディウス(剣)を拾っては刺す。投げる。

 隼介、止まることができない。動きを止めてしまえば、またたく間に狙い撃ちされてしまうであろう。逃げ場はない。襲い来る敵を殺すしか、彼が生き残る術はない。とにかく動き続けた。矢が刺さったままの背中が痛む。

 それでも止まることは許されない。肉体的な苦痛・疲労とともに、精神的にもどんどん追い込まれていく。考える余裕すらないなか、本能が言葉にならないメッセージを送りつけてくる。

 「主導権をよこせ」と。

 理性はそれを拒む。

 「それはできない」と。

 それでも本能はしきりにメッセージを送り続ける。何かをおし通そうとしている。しかし理性は認めない。なぜなら、本能がおし通そうとしているのは、あの忌まわしいルールだからだ。

 

 「見たなら殺せ」というルールである。

 そんなことをしてしまえば、敵と味方の区別がつかなくなってしまうのは明らか。戦いに勝てたとしても、戦いが終わったことすら気づくことができなくなっているだろう。

 その時にはもう、この体は殺戮をやめることはできなくなっているに違いない。あの時と同じだ。錯乱して仲間を殺してしまったあの時と。

 

 と、その時、敵歩兵が隼介ののどへ向け突きを放った。切っ先は高速でまっすぐに隼介に向かってくる。高速のはずの動きが、やけにゆっくりに見えてくる。

 ・・・このままだと、0.2秒後に死ぬ・・・

 と思った次の瞬間、その刃は素手で弾かれていた。刃自体にはふれず、面の部分だったので切れはしなかった。次の瞬間にはその敵兵の顔面は隼介の拳により潰されていた。

 

 隼介は・・・キレていた・・・

 もはや猛獣と化した隼介は、ただただ殺すことしか考えられない。いや、考えてすらいない。もはや理性は残っていなかった。

 

 

 圧倒的な殺戮を繰り広げる隼介だったが、それでも多勢に無勢。数の違いがものを言いだす。弓兵たちが遠隔攻撃しながら、新たに現れた歩兵たちが迫る。

 隼介は本能的に状況の不利を察し、落ちていた盾で防御しながら後退を始める。敵はその数を増やしながら迫ってくる。盾には無数の矢が刺さり、その数は増える一方。後退を続ける隼介はついに第二の門の手前まで押し返されてしまった。

 

 その様子は、矢狭間から覗いていた醒陵軍兵士から仲間の兵士たちへと伝えられた。その中には静流もいた。逃げもせず、第二の門の外側で、隼介に追い返された場所にまだ留まっていた。

 「相葉殿、苦戦中!」「このままでは敗北は必至!」

 隼介が絶体絶命の危機に立たされている。しかし誰も、何もすることはできない。例え門を開け加勢に入ったとしても、瞬く間に返り討ちに遭うだけだろう。

 それ以前に、門を開ける勇気すらない。彼らはまだこれが初陣なのだ。静流はもう気が気ではない。何か、何かできることはないか?

 何でもいい。少しでも力になりたい。

静流 「おいコラ隼介~~~!!何下がってんだ~~!!本気出せコラ~~~!!」

 気づけば静流は叫んでいた。

静流 「手加減してんじゃね~ぞコラ~!!」

 激怒にも似た叱咤激励。

隼介 「・・・・・。」

 その声は隼介に届いた。いつかどこかで聞いた声。聞き覚えはあるが思い出せない。・・・誰だっけ?思い出せないが、暖かいものが心を包んだ。

 すると内側から湧いてくる活力。その力に突き動かされ、隼介は再び突進する。盾を持ったまま歩兵の一団に激突!真ん中の一人を倒す。

 隼介は盾を手放し、脇差を抜く。接近戦にて歩兵たちを次々に斬り倒していく。敵の盾を強引に蹴倒し押し倒し引き倒す。そして無防備な部分を攻撃していく。

 しかし相手もまた接近戦に優れた短剣を持っている。隼介の体にも次々と傷が刻まれていく。

 それでも鎧を着ていたのが幸いし、致命傷は避けられた。しかし弓矢はそうはいかない。俊敏に動く的に狙いが定められないが、三本目四本目の矢が鎧を貫き隼介の背中に突き刺さる。

 そして、ついに隼介の額に直撃!角度が斜めだったのか、額当てに当たった矢は刺さらずに弾かれた。角度が悪ければ死んでいた一発。だがその衝撃で軽い脳震盪を起こす。意識がやや薄らいだ隙を突き、歩兵たちの攻撃が激しくなる。

 再び追い込まれていく隼介。もうろうとしながらも、それでも動きを止めずに反撃を続ける。狭い入口からは今なお歩兵と弓兵が姿を現し、数を増やしていく。そして二重三重に層を増した死体の山を踏み越え、迫りくる・・・

 

 

 第二の門の外側では、絶望と恐怖におののく歩兵たちが槍を構えていた。どうすることもできず、ただただ震え立ち尽くす。そこへある人物が姿を現す。

 守備隊長である。彼の後ろからはゾロゾロと人が続く。その中の一人が叫ぶ。

 

 「素人は下がってろ!」

 

 ・・・誰だ?と思いきや、それは驚きに変わる。彼らの表情は戦士のそれであった。屈強な眼光に鍛えられた肉体。そして何より驚いたのはその甲冑。淘來の甲冑ではないか!?もしや・・・淘來兵!??

 捕虜を解放してしまったのか!??

 醒陵兵の一人が、おそるおそる口を開く。

兵士 「守備隊長殿・・これは?」

 淘來兵たちの手には、おなじみの剣と盾が握られていた。それほど大きくない円形の盾には、いくつもの傷が刻まれておりくぐり抜けた戦いの数を物語る。

 そしてやや短めの剣の切っ先から、その鋭さが伝わってくる。これでどれほどの人間を殺傷してきたことだろう。突然姿を現した淘來兵たちに恐怖を抱く。

 しかし・・・

隊長 「援軍だ。」

兵士 「援軍?」

淘來兵「俺らはあの人に救われた。」

兵士 「・・・え。」

淘來兵「戦わせてくれ。」

兵士 「・・・・・。」

淘來兵「頼む。戦わせてくれ。」

兵士 「・・・・・。」

淘來兵「恩を・・・恩を返させてくれ。」

隊長 「・・・そうゆうことだ。」

 醒陵兵たち、彼らの思いを理解する。たちまち涙があふれてくる。自分たちは何もできずただうろたえてばかりだと言うのに、敵であるはずの彼らは命を懸けて隼介を守りたいと言っている。

兵士 「・・・お願い・・いたします・・・。」

 情けない。なんて情けない。自分たちはなんて情けないんだ。

 そして、心強い・・・

 

 

 隼介はもはや限界であった。足場の悪いなか必死の反撃を続けていたが、動きにもはやキレがなくなっていた。スタミナ切れと頭部への衝撃により、意識も失いかけていた。そこに追い打ちをかけるように、敵の剣が額に直撃する。

 またも額当てのおかげで刃による切り傷は深くはならなかったが、衝撃が隼介の意識を飛ばす。フラフラと後ろへよろめく。そこへ一斉に攻めかかる敵兵たち。もはや万事休すであった。

 

 

 突如として開く第二の門。そこから一気に流れ込んでくる淘來兵たち。意識を失いかけた隼介を通り越し、敵兵へと攻めかかる。瞬く間に乱戦へと突入。

 敵弓兵はただちに標的を淘來兵へと向ける。が、そこに隙が生じた。矢狭間への警戒が解かれたのだ。弓兵たちは矢を放つ前に、自らが射貫かれていく。

 弓矢の援護を失った敵歩兵はじょじょに圧されていく。足場の悪さが盾の大きさを不利にしていた。もはや死体は障害物と化していた。大きな盾は障害物に引っかかり、動きを著しく制約した。そのロズガード歩兵の盾に比べ、淘來兵の持つ盾は有利に働きうまく機能している。

 

 そうこうしている内に敵弓兵は全滅。そして敵歩兵も全滅。矢狭間からの弓矢の的が、一斉に狭い入口へと集中する。入口にも障害物が積み重なっており、矢による攻撃と相乗効果で侵入を困難にしていた。淘來兵たちは今が好機とばかりに、死体を次々に破壊された第一の門へと投げ込む。そして入り口を完全に塞ぐ。

 

 

 そしてついに、ついに救援部隊が到着した。挨拶もそこそこに、彼らは急いで城壁へと駆け上がる。そこでは必死の抵抗を続ける醒陵の弓兵隊がいた。

 無数にいた弓兵たちはその数を大きく減らしていた。倒れ苦痛に悶える者、すでに息絶えた者たちが散乱する中で、それでも矢を放ち続けていた。門内での戦いも凄まじかったが、彼らの援護があったからこそ成し得たのである。彼らが敵の勢いを軽減させてくれていたのだ。

 救援部隊の弓兵たちは城壁上に押し寄せ、一斉に矢を放つ。それは雨となり嵐となり敵軍へと降り注いだ。そして落石攻撃に加え、投石攻撃も始まる。

 防衛側の攻撃力が増したことで、敵の士気は一気に低下した。しばらくの攻防の後、ついに敵は撤退していった。

 

 

 防衛は成功したのだ。

 

 

 

 歓喜に沸く醒陵軍。しかし、そこに隼介の姿はなかった。

 理性をなくし、記憶すら失ってしまった隼介。

 

 「見たなら殺せ」

 そのルールに従ったまま、猛獣は姿を消してしまった・・・

 

 

 

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