UGodz-Illa Presents: The Hillside Scramblers / Hillside Scramblers

今回紹介するのは、U-God率いるHillside Scramblersから2004年のアルバム、『UGodz-Illa Presents: The Hillside Scramblers』。

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U-Godは、1999年の1作目『Golden Arms Redemption』以降アルバムを出していないので、これが2作目になる。
ちょうど本作発売の同年に、Ghostface KillahをリーダーとしたTheodore Unitがアルバムをリリースしていたり、以前にRaekwon繋がりのプロジェクト(American Cream Team)なんてものもあったので、U-Godも軍団を率いたくなったのかな〜。

しかしこの頃のU-Godといったら、RZAとギャラの少なさや自分の扱いに対する不満から、かなりバチバチな関係だった。
今回は名義をちゃっかりUGodz-Illaに変更していることから、Wu-Tang Clanから距離を置き、新しい自分の一歩としてグループを結成した、ということなのだろうか。
彼の1stのレーベルにはWu-Tang Recordsの名前があったけど、本作はそれもナシだし。まあそんなことで、このアルバムに関しては今までのようなウーサウンドを期待するのはちょっと違うのかも知れない。

気になるメンバーだが、U-Godを筆頭に、King JustLeatha FaceKawzInf-BlackDesert EagleBlack IceJa-MalFrank BangerらMC、そしてシンガーのAutumn RaeにプロデューサーのHomicideの総勢11人。

U-Godにしてはかなりの大群だけれど...、正直、知らないメンバー多すぎじゃん!
よく名前を見かけるのはKing JustとLeatha Face、Homicideくらいかなあ。
King Justはどうやら、RZAの師匠、RNS(プロデューサー)と繋がりが強いみたいで、1995年の1stアルバム『Mystics Of The God』では、RNSやEasy Mo Beeなんかもプロデュースに参加しているんだよね〜。
Leatha Faceは、U-Godの1stに数曲客演で参加しており、本作ではいくつかプロデュースも担当。U-Godを除いて、Wu-Tang Clanのメンバーの作品に参加したりとかは、この時点では多分なかったと思う。
そして、HomicideもU-Godの1stにプロデューサーとして参加していた。

やっぱりウータンファミリーの中でも、ちょっと離れている辺りをチョイスしたって感じか〜。
このアルバムは客演が一切ないし、本隊のメンバーの力を借りないってとこが当時のピリピリさを物語っているようにも感じられる。

Intro』からの2曲目、Six Mill(誰?)プロデュースの『Pain Inside』は、U-God、Black Ice、Leatha Faceによる3人のマイクリレー。
サウンドにウータン感はまったくなく、どちらかというと西っぽい感じ。ウーファミリーでいうならBlack Knightsあたりがやりそうかな。
シンセをメインに、怪しげに鳴る上音がグッと曲の世界観を作り上げててなかなかカッコいいし、初っ端、ビートに合わせて投げやりに歌うU-Godも掴みとしてはバッチリ。
ラップとしては、U-GodとBlack Iceはダラっとした感じだけど、Leatha Faceがメリハリの効いたラップを聴かせてくれるので、バランスもとれてる気がする〜。
このアルバム、U-Godのチームだけに地味〜な感じが続くのかなあ、と心配ではあったけど、ひとまずホッとした。

3曲目『Lean Like Me』はU-Godのソロ。
これも悪くはないけれど、ちょっと物足りないなって気がしてしまう。
彼のラップで4分持たせるにはビートがカッチリすぎて、U-Godのソロというよりはマイクリレー向きじゃないかな。『Black Shampoo』(『Wu-Tang Forever』に収録)のU-Godが恋しくなってくる。でも打ち込みのクラップが混じったビートとU-Godのラップの相性はイイ感じ。

4曲目の『Destiny』は紅一点、Autumn Rueが登場。フックでRoy Ayers Ubiquity『Everybody Loves the Sunshine』の「My life, my life, my life, my life〜」をフックとして歌うので気分が上がる。まあこの曲、『Everybody Loves the Sunshine』のような爽やかさはなく、かなりムワ〜っとした感じなんですけど。
男臭い連中ばかりなので、Autumn Rueが華を添える感じかと思えば、かえって男臭さを引き立てているという...。

5曲目『Stick Up』。
Inf-Blackのソロで、スリリングなビートに乗せてビシバシラップしていく感じがいいね。これは普通に聴けるな〜。
ビートに対するラップのリズム感がしっかりしているので、思わず首を振りたくなる。
次の『Tell Me』のDesert Eagle、Leatha Face、Inf-Blackの緊迫感のあるマイクリレーもなかなかカッコいいのでは。

7曲目の『Chippin' & Chop It』、わりと良さげな曲が続いてただけにちょっと安っぽい感じが目立ってしまう。
あまりこういう曲調にU-Godのラップは合わないような...。

気を取り直しての8曲目『Booty Drop』はLeatha Faceのソロ。
Homicideによるシンセベースが鳴り響くギュインギュインなサウンドに乗せて、的確に韻を踏んでいくLeatha Faceにひたすら痺れるナンバー。やっぱりいい声してるわ〜。

10曲目のU-Godのソロ曲、『Ghetto Gutter』はなんだか全体的にモタモタしていてあまりパッとせず...。
でも続いての『Drama』はイイ感じで、シンセと西っぽい跳ねるピアノを組み合わせたビートに乗せる、Leatha Face、Kawz、Inf-Black、U-Godらのポッセカット。
このビートとU-Godの組み合わせは相性バッチリ。やはりビートに左右されるんだろうな〜。

そういえばKing Justがなかなか出てこないな〜、と思っていたら、12曲目『Take It To The Top』で出てきた。そしてそのまま13曲目『KJ Rhyme』でKing Justのソロに突入。
彼の1stアルバムで聴かせてくれた、あの熱気あふれるラップはもちろん健在だし、それが力強いビートに相まってムンムンのサウナ状態。

あとまだ出ていないのはJa-MalとFrank Bangerだが、この2名は14曲目『Gang of Gangstas』でようやく登場。どんだけ待たせるねん。
この曲はすごいよ〜。Black Ice、Desert Eagle、Inf-Black、Frank Banger、U-God、Leatha Face、Ja-Malの計7人によるマイクリレー!Hillside Scramblers版『Protect Ya Neck』といったところか。Leatha Faceによる、金物っぽいスネアのチョイスは面白い。
ラストのJa-Malは声からして最年少だと思われるが、他のメンバーと肩を並べるほどの腕前を披露している。彼のヴァースまで近いようなトーンのラップが続くので、ここで声の変化がつくのはアリ。

15曲目の『Put It On Me』はアラビアンチックなナンバー。
U-Godの男臭いのラップとAutumn Rueのエキゾチックな歌声で、中東かどっかの暑い夜に放り込まれた気分になってくる。

U-God、Inf-Black、Letha Faceの3人による、17曲目『Here We Come』。
考えてみたら本作、この3人の出番が多めだな〜。
Inf-BlackとLetha Faceの組み合わせも、Leatha FaceとU-Godの組み合わせも散々聴いたような気がしたので、欲を言えばJa-Malとか違うタイプの組み合わせで聴きたかった。
Leatha Faceのビートも単曲としては全然良いのだが、アルバムを通して聴くと似たような曲調が多いので、少し変化が欲しかったな〜。

ラストの『Prayer』は、単調なビートとU-Godのダラっとしたラップの相性がイマイチ。
出だしのドラムに「おっ」となっただけにもったいない。BPMを少し上げてアッパーな感じにすれば合いそうなんだけど。
あとAutumn Rueの永遠とループしそうなフックは、熱があるときに聴いたら確実にうなされる。

ということで以上、18曲(というか18曲もあったんだ)。
Wu-Tang Clanの中でもなにかと薄い印象をもたれがちなU-God。
まあ本作も、同じような曲調が多いのとMC陣も系統が似通っているため、アルバム全体として正直、地味な印象は拭えないかもしれない。
しかし、ウータン内でのゴタゴタから、メンバーを集めて自分のグループを結成し、このアルバムを心機一転の第一歩として作るという、彼の努力や行動力を考えるとどうも嫌いにもなれないんだよな〜。まあ結局、Hillside Scramblersのアルバムはこれだけで、U-Godもすぐ名義を戻すんだけど。
サウンドに関しても、今までのウーサウンドとは違う、電子楽器がメインとなった曲調は、Ghostface Killahがソウルフルな方向性に進んでいったように、U-Godも自身の方向性として持っていくのには全然面白いと思う。

さて、問題のRZAとの確執だけれど、後に訴訟にまで発展してるし、またU-Godが「俺のアルバムがちゃんとリリースされていない」とRZAのレーベルを批判したり、RZAとの問題を書いた本を出版するなど、とにかく未だにズルズルと引きずっているみたいなので、ファンとしては早く修復することを願いたい。


Wu-Tang Forever!



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