Enter the Wu-Tang (36 Chambers) / Wu-Tang Clan

今回紹介するのは、Wu-Tang Clanの1st『Enter the Wu-Tang (36 Chambers) 』。

言わずと知れた名盤中の名盤なので今更紹介もクソもないだろって感じだけど、とりあえず記念すべき1回目の記事なのでこれ。

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怪しい雰囲気満載のジャケ。


ズラズラ並ぶ覆面の集団に、背後は巨大なウーのロゴ。なんかボケボケでよくわかんないし。でもアルバムの内容を象徴するにはこれで充分〜。
写真はDaniel Hastingsで、Jeru the DamajaGang Starrなんかの写真も撮っているっぽい。

本作は『Shaolin Sword』と『Wu-Tang Sword』に分かれていて、レコードならSide Aが『Shaolin Sword』、ひっくり返してSide Bが『Wu-Tang Sword』になる。

『Shaolin Sword』は1曲目『Bring Da Ruckus』で幕を開けるが、カンフー映画『少林寺武者房』の台詞に続き、汚いスネアの音からのRZAの「Bring da motherfuckin' ruckus! 」。なんか、もうこの時点でバッチリ、カッコいい。
RZAのコーラスを間に挟みながら、Ghostface KillahRaekwonInspectah DeckGZAの順でラップだが、全員抜群のスキルを発揮しまくっている。トップのGhostface Killahなんか、とにかくキレッキレで輝いてるな〜。

2曲目は雰囲気が変わり、Syl Johnson 『Different Strokes』をサンプリングしたややアッパーなイントロに、Ol' Dirty BastardODB)がすかさず切り込む。
本曲と、6曲目『Da Mystery of Chessboxin』の、もう酔ってるんだかハイなんだかようわからんラップを聴いていると、「このアルバムでODBがとにかく異彩を放ちまくっている」って意見が多いことにも頷ける。

今更だが、アルバムのプロデュースはすべてRZAが担当。
この曲の途中で、Thelonious Monkのピアノフレーズを持ってくるあたりがニクい。

4曲目『Wu-Tang: 7th Chamber』。
アルバムのタイトルにも入ってる「Chamber」ってなんぞやって話だけど、これはカンフー映画『少林寺三十六房The 36th Chamber of Shaolin)』からきていて、「房(Chamber)」は言わば「カンフーの修行部屋」のこと。
どうでもいいけど、ウータンでは『◯◯Chamber』みたいな曲名が度々ある。

6曲目(ここから『Wu-Tang Sword』)は『Da Mystery of Chessboxin』。
これは是非ともMVをみてもらいたい。巨大なチェスボードの上でメンバーが次々にラップをしていく姿が最高。
やはりこの曲はODBが半端ない、と思いきやGhostface Killaも負けじと熱を帯びたラップをかましてくるので気が抜けない。さらには本曲が唯一の出番、Masta Killaが最後のトドメを刺してくる。
Masta Killaのヴァースは、そもそもKillah Priestが担当するはずだったけど、彼がレコーディング中に居眠りをしていたため代わりにラップをすることになった、とのこと。
Killah Priestは残念だろうけど、Masta Killaがいい仕事をしている〜。

その後の『Wu-Tang Clan Ain't Nuthing ta F' Wit』と『C.R.E.A.M.』は、ウータンの中でも特に有名な2曲。
『C.R.E.A.M.』の哀愁あるピアノのメロディの上で、自分の育ちというか、生き様をラップしていく感じは、経験せずともすっごい心にくる。

10曲目の『Protect Ya Neck』は、Masta Killaを除く全員が登場し、類をみない怪しげなビートの上で次々にラップをしていく。
8人のマイクリレーってすごいな。こんなに大人数でもそれぞれの個性が引き立ちまくっている(U-Godの出番が少ないのは可哀想)。
聴き始めのころは、この曲で名前と声を照らし合わせていた。

次の『Tearz』は、個人的にかなりトラウマ。
Wendy Reneの『After Laughter(Comes Tears)』をサンプリングした、サーカスチックなメロディの上で、銃声と泣き叫ぶ声が聴こえてくるものだからたまらない。
ラップの内容も「トラブルに巻き込まれ撃ち殺された弟」と「エイズに感染して余命わずかの友人」の2本だてという、楽しげなビートとのギャップが非常に怖すぎるよ〜。

最後は『Method Man (Skunk Mix)』。
Method Manによるバリバリの俺様讃歌。
「M・E・T・H・O・D・メ〜ン」って、自分の名前をフックにしてしまうのはヤバい。聴いた人は、1度は真似したはず。

というわけでウータンの1stは以上。
アルバムを通してお世辞にも「良い音」とは言えないが、かえってそれがウータンの世界観を作り上げることに貢献している。
特に、ソウルミュージックをサンプリングしつつも、不穏さを醸し出すRZAによる独特のビートは、後に次第に広がっていくウーファミリーのグループや、そのプロデューサーの「ウーサウンド」とされる一種の基準点となった。
当時としては珍しい大人数のMC、という点でもかなりのインパクトを与えたに違いない。

文句なしの名盤にして、ウータンによる侵略の第一歩である。


Wu-Tang Forever!



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