Wu-Tang Forever / Wu-Tang Clan

今回紹介するのは、Wu-Tang Clanの2ndアルバムとなる『Wu-Tang Forever』。

1stの『Enter the Wu-Tang (36 Chambers)』発売後、94年にMethod Manの『Tical』が、95年にOl' Dirty BastardODB)『Return to the 36 Chambers: The Dirty Version』、RaekwonOnly Built 4 Cuban Linx...』、GZALiquid Swords』の3作、さらに96年にはGhostface Killahの『Ironman』と、ウータンメンバーのソロによる快進撃が続いていた。

そして翌年の97年、ファンの期待が高まる中、Wu-Tang Clanの2作目としてついに放たれたのがこのアルバムとなる。

画像1

ウーのマークとアルバムタイトルは銀刷り仕様


冊子のノンブル部分も銀刷りされたウーのマークになっていたりと、なかなか凝っている。また、今回は冊子内でメンバーがきちんと写真で紹介されているため、顔と名前を覚えるにはもってこいだろう。

そして肝心の中身だが、このアルバムなんと2枚組。
DISC 1の11曲とDISC 2の17曲(ボーナス含む)の

計28曲という大ボリュームである。

ウータンのファンですら確実に胃もたれを引き起こすレベルだが、
それにしても、あのソロの快進撃の中でよくこんなボリュームのあるアルバムを作れたな...。

ひとまず1曲目、『Wu-Revolution』。
客演にはPoppa Wu and Uncle Peteと、早々に見かけない名前がでてきました。
Poppa Wuに関しては、Raekwonの『Only Built 4 Cuban Linx...』やGhostface Killahの『Ironman』にちょい役で登場していた。
このお二方、どうやらメインはMCではなく、「メンター」という立ち位置みたいだ(メンター...?)。しかしながら情報があまりも少ないので、よくわからない。

ということで、ちゃんとした曲は次の『Reunited』から。
ビートは前作の籠りまくった音からだ〜いぶ変わり、クリアですっきりされた印象。ながらも哀愁のあるヴァイオリンの音色と、不穏なベースのリズムがウーらしさをしっかり感じさせてくれる。
本作と前作の大きな違いは、打ち込みや生演奏を取り入れているところだろうか。特に本曲ラストのヴァイオリンの展開なんかはかなり壮大だぞ...。

Roxanneの「ウー、マザファッカ〜〜〜ズ」の歌声に続き、GZAが先陣を切る。
GZAはこういうビートとの相性がすごいいいよね。
ODBの吠えるようなラップも健在。これだけでバッチリ元はとれます。

2曲目は『For Heavens Sake』。
King Floydの『Don't leave me lonely』の早回しに、歪んだベースと「ウー!タン!」の掛け声。実にワクワクする出だしだ。これだよ、これこれこれ!
GZAの『Shadowboxin'』(『Liquid Swords』に収録)とかもそうだけど、早回しでのネタの使い方は流石RZAって感じだな〜。

Inspectah DeckMasta Killaと続き、ここでCappachinoことCappadonnaの登場。
Raekwonの『Only Built 4 Cuban Linx...』などでちょくちょく参加していたけれど、Wu-Tang Clanのアルバムではこれが初。
Cappadonnaの吐き捨てるようにラップと、良く言えば予測不能、悪く言えば不安定なライミングが個人的に好きだったりする。

4曲目の『Cash Still Rules/Scary Hours』は4th Discipleがプロデュース。
GZAの『B.I.B.L.E.』(『Only Built 4 Cuban Linx...』に収録)をプロデュースしていたので、そのあたりから名前を見かけ始めたか...。
彼も安定したウーサウンドを聴かせてくれる。この声ネタのループはなかなかいい。

Inspectah Deckプロデュースの5曲目、『Visionz』は逆再生を混ぜ合わせたような不思議なビートにMethod Manらがラップしていく。
正直これ、本曲までの流れからしてパッとしない感じも否めないが、28曲もあるのでバランス的には良いのか...。

かなり上機嫌なODBのナンバー『As High As Wu-Tang Get』を経て、
7曲目『Severe Punishment』へ。
前作ではあまり出番がなかったU-God(Masta Killaほどではないか)が先頭。このビートと彼のラップの組み合わせ、かなりカッコいい。

8曲目『Older Gods』と10曲目の『A Better Tomorrow』はまたもや4th Discipleプロデュース。両方ともなかなか良いビートだ。
彼はRZAの作り上げた世界観をしっかり理解したうえで、自分なりのサウンドに置き換え、うまくアウトプットしている感じがする。

Disc 1のラストは『It's Yourz』。
Gaz『Sing Sing』のドラムをサンプリングしている本曲、ディスコチックな元ネタの雰囲気をガラリと変えてしまうRZAの手腕に脱帽。

Disc 2に移り『Triumph』へ。これ、9人によるポッセカットですよ。
スリリングなビートに乗って、トップバッターはInspectah Deck。かなり順調な滑り出しであります。
ライブだとMethod Manのヴァースの盛り上がりがすごいことになっている。声も、ラップのグルーヴ感もいい。なによりも、やっぱりそれほどのカリスマ性があるってことだね〜。
Cappadonna、U-Godの流れでややダレる感じがしなくもないが、ビートの「ウウウ〜」って歌声がうまい具合にカバーしてくれてるし、その後のRZAがバッチリ立て直してくれているからOK。
Masta Killaのヴァースでもやや危うくなるが...、 Ghostface KillahとRaekwonがすかさずフォローする。この2人の並びは間違いない。
あとこのMVは要チェックということで。

3曲目『Impossible』はウータンの歌姫、Tekithaが登場。
以前はBlue Raspberryとして、Method Manの『Release Yo' Delf』(『Tical』に収録)で参加していた。
彼女の歌声はもちろん素晴らしいけど、実はラップもなかなかカッコいい(本作では残念ながら披露しないが)。

6曲目『The City』は「Just enough〜」ってフックとビートが相まって、かなりどんよりした曲調だな。気分が落ち込んでる時はできれば聴きたくない...。

9曲目の『The M.G.M.』はTrue Masterがプロデュース。
True MasterはODBの『Brooklyn Zoo』(『Return to the 36 Chambers: The Dirty Version』に収録)、Ghostface Killah『Fish』(『Ironman』に収録)などを手がけてきた。また、ウータンの他にはGuruのプロデュースもしてたりする。
ゆらゆら揺れるようなビートは彼の十八番っぽい。
4th Disciple同様にウーサウンドを自分なりの音で表現しているが、特にTrue Masterのリズム感とビートの質感はかなり独特だ。

お次の『Dog Shit』は、ODBの独擅場。
彼のヤバさはソロの1stアルバムでも存分に見せつけてくれたが、こちらも冒頭からODB節全開でかましてくれる。
「ホ〜〜〜〜デ、ヘイ〜〜〜〜!」って。

12曲目の『Hellz Wind Staff』は、Method Manの1stでも参加していたStreet Lifeが先頭に立ち、リードしていく。
Street Lifeはビートで大きく左右される印象があるが、この曲では頗る調子が良い。本曲のリズムの乗りこなし方では彼が一番じゃないかな〜。

14曲目『Black Shampoo』はU-Godのソロだが、この曲は彼の渋さが最高に際立っていて好き。所々に鳴るドラムマシンのパーカッション的な音が効果的で面白い。
U-God、今回は出番が多めで良かったね!

ボーナストラックの『Sunshower』は、RZAのソロ。
RZAのラップと太めの渇いたドラム、そして哀しく怪しげなメロディの組み合わせ。これがまたカッコいい。しかも5分間ずっとラップしてるよ。それでも全然聴いてられるしすごいな〜。

ということで『Wu-Tang Forever』の感想は以上!
1作目の空気感からガラリと変わりつつも、ウータンらしさはしっかりと健在。
正直、今回は曲数が多いこともあって間延びしている感じも否めないが、RZA以外のプロデューサの参加もあり、「ウーサウンド」が進化しつつある感じが伝わってくる。
また、前作はメインメンバーのみの参加に対し、本作では CappadonnaやStreet Lifeなど多数のゲストを迎えるアルバムとなった。
彼らは本作以降もウータン作品には頻繁に参加しているため、言わば『ウータンファミリー』の一員であり、そういった面でもウータンの勢力を見せつける1枚になったに違いない。
今後はメインメンバー以外も、ファミリーの作品を紹介していきたいが、
それにしてもこのファミリー、「実は100人も200人もいる」なんて噂もあるのだが、その真相やいかに...。


Wu-Tang Forever!



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