鉄火場日記~ver1.0~

  これは自分が東京にいたときの話を元に書いた「鉄火場日記」という作品です。

 こちらは自分の戦術本「フリー麻雀で食う超実践打法」という本に収録されています。

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https://www.amazon.co.jp/純黒ピン東メンバーが教える-フリー麻雀で食う超実践打法-雀ゴロK/dp/4801300847/ref=sr_1_2?qid=1568530005&s=books&sr=1-2

 今回はこちらの鉄火場日記の第1話をnoteにて公開する許可を編集社からいただいたので、無料にて公開したいと思います。

 ちなみにフィクションだと思ってください。何かと厳しい世の中だからね(笑)僕の存在がフィクションみたいなもんだと。

 それでは本編スタートです!

鉄火場日記①

 それは2013年冬のある日の出来事。同僚のMから次のような誘いがあった。


「今夜、オレが前に働いていた店で、うちの店の4倍くらいのレートの場が立つんだけど、よかったら行かない?」


 これを聞いとき、チャンスだと思った。今より高いレートの場で打てるようになれば、今より収入を増やすことが出来る。金を得ることが麻雀の目的である自分にとっては願ってもない。二つ返事でOKした。


 仕事が終わり、愛用の自転車でその場へ向かう。職場から20分ほどで約束の時間通り到着。店に入ると、既にメンツは集まっていた。自己紹介をし、席に着く。
 レートはトップから3万・1万・マイナス1万・マイナス3万の完全順位戦。一晩で20万くらいなら軽く吹っ飛ぶ。こういったレートで打つのは久しぶりでやや緊張していたが、やることは麻雀、変わりは無い。


開始早々の東1局西家で、左のような手が来た。

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東1局西家、8巡目、ドラ北

 高いレートの場で打つときでも普段と打ち筋を変えてはいけない。いつもと同じように打つと決めて、この場に来た。
 テンパイと同時に、逡巡無くリーチを打つ。アガリにこそ結びつかなかったが、1人テンパイで流局。


 これでいい。普段と同じ打牌を心がければ、きっと勝ちに繋がる。


 1回戦目は結局、大きなアガリも無く、微差の3着で終了した。それからは2着、3着、2着と一進一退の展開が続く。なかなか大きな浮きに回ることが出来ない。打っていてわかるが、やはりフリーの生易しいメンツとはレベルが明らかに違っていた。 
 店に来てから2時間ほどが経過し、5回戦目のオーラスを迎えた。

 そして、この局が自分にとって今でも忘れられない局になる。

 自分は現状2着目、3着目とは微差の局面で次のような手牌。

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オーラス西家、5巡目、ドラ6索 

 これをアガってもトップにはなれないが、2着をキープすることはできる。このレートでの2着は非常に大きい。


 しかし、この手が進まぬまま、場に変化が起きた。トップ目の親が副露してドラの6索を切ったのだ。そのドラに対し、3着目がポンをかける。


 (まずいな、3着目が満貫をアガれば、自分は2着から転落してしまう)

 
 この手はなんとしてもアガッて2着を維持しなければ。そのときはそのことしか頭に無かった。


 そして、8巡目、自分のツモは不要牌の五萬。2着を維持するためには行かなければ。


(通せ!)


 やや力を込めて場に放つ。しかしこの牌に副露した親から、ロンの声がかかった。親の手はタンヤオ赤赤の5800。この放銃で、ラスに転落。

 打った瞬間、血の気が引くのが分かった。


 6索はポンが入り、自分のアガリ目は薄い。さらにトップ目の親は副露してドラまで切っている。ここは親に任せてベタオリの局面じゃないか。


何をやっているんだ自分は……。


 トップ目の仕掛けは早いのでケアする、着順の変わらない手牌では無理をしない、そういった技術を自分は今までの麻雀で培ってきたはずだった。それなのにこんな放銃をするなんて。


 自分は知らず知らずのうちにレートの重圧に押しつぶされていたのか。


 それからは3回連続でラスを引き、そのあともボロボロだった。切る牌は刺さり続け、3面張のリーチはアンコ持ちのカンチャンに引き負けた。最初に取り決めた24回が終わった時点で、ラスを9回引いていた。


 その日は自分の14万負けで勝負は決した。


 金額よりも、この日の麻雀の内容の方が辛かった。普段通り打つ、それを心に決めて来たはずなのに、それが全くできなかった。

 その日打ったメンツに、無理に絞り出した笑顔で挨拶し別れ、店を出る。


 (まだまだ未熟だな……自分も……)


 と心中でつぶやき、帰途につく。外の寒さがいつもより厳しく感じた。

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